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2016年11月23日

『211年の歴史が生んだピクテ式投資セオリー』―プライベートバンクの資産運用とは何か



プライベートバンクでの資産運用といえば、何か富裕層だけに提供されるものすごい投資が行われているように誤解されがちです。そういった幻想が、ある意味で投資詐欺などの温床にもなているわけです。しかし、実際のプライベートバンクでの運用とは、恐ろしく地味なものだということを教えていくれる1冊が、このほど刊行された萩野琢英さんの著書『211年の歴史が生んだ ピクテ式投資セオリー』。プライベートバンクに対し幻想を持っている人が読めば、ある意味で目からウロコでしょう。なぜなら、プライベートバンクの資産運用とは、そもそも“儲ける”ことが目的ではないということが分かるからです。
2016年10月9日

『一番やさしい! 一番くわしい! 個人型確定拠出年金iDeCo活用入門』―給付時の注意点まで解説している点が素晴らしい



2017年1月から改正確定拠出年金法が施行され、個人型確定拠出年金(個人型DC、愛称:iDeCo)の加入対象者が大幅に拡大されます。このためiDeCoに対する関心も高まっており、法改正に対応した解説書も相次いで登場しました。そんな中、iDeCoの有効性について早くから指摘していた竹川美奈子さんによる解説書、『一番やさしい! 一番くわしい! 個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門』がこのほど刊行されました。個人型DCに特化した解説書としては、非常に丁寧な本に仕上がっています。とくに類書では簡単な記述に終始することの多い給付時の詳細や注意点について詳しく解説している点は特筆すべきポイントです。iDeCoの利点とされる“節税効果”について、あくまで給付時に退職所得控除や公的年金等控除が適用される範囲内のことであって、正確には「課税繰り延べ」効果であるとしっかり指摘していることは、やたらとiDeCoによる節税効果ばかりを強調する百凡の解説書とは一線を画しています。そもそもiDeCoは、退職金が無いもしくは少なく、公的年金も少額になるケースが多い自営業者・フリーランス、そして中小零細企業のサラリーマンのために用意された老後格差是正のための制度です。そういう制度の根本理念を踏まえた上で、本当にiDeCoが必要な人に向けて書かれているという意味で、極めて誠実な入門書なのです。
2016年8月13日

『ジム・クレイマーの株式投資大作戦』―手堅く、そして楽しい株式投資の指南書



私は昔に刊行された投資ノウハウ本を読み直すのがけっこう好きです。投資ノウハウ本というのは、常に発行時の市場環境を前提に過去・現在を分析し、未来の見通しを語るのですが、実際に時間が経過した後に読み直すと、妥当だった点と的外れだった点が明らかになり、かえってその本の本質的価値が分かるからです。つまり、刊行から時を経ても、やっぱり納得できる内容の多い本というのは、良い本なのです。その意味で、個別株投資に関する本格的な指南書として現在でも楽しく読める1冊が『全米No.1投資指南役ジム・クレイマーの株式投資大作戦』です。ふざけたタイトルですが、これはじつに真面目な投資指南書であり、書かれている内容は手堅く、そして楽しい。
2016年7月20日

『週刊エコノミスト』2016年7月26日号は“買い”だ―森信親金融庁長官のインタビューは必読



今週発売の『週刊エコノミスト』2016年07月26日号が非常に面白いです。特集「ヤバイ投信 保険 外債」は定期的に取り上げられるテーマですが、注目は森信親金融庁長官のインタビューが3ページにわたって掲載されていることです。実力派の金融庁長官として知る人ぞ知る存在ですが、一般メディアに登場して日本の投資・運用業界に対する遠慮会釈のない批判を展開しています。これを読んで、あらためて金融庁が日本の投資・運用業界に対していかに厳しい見方をしているかがわかりますし、是正に向けた取り組みの本気度も理解できました。森金融庁長官のインタビューを読むだけでも、今週号は“買い”だとも思います。
2016年7月16日

『低迷相場でも負けない資産運用の新セオリー』―いまも色あせない“投信業界徹底批判”



先日、ツイッター上でインデックス投資や国際分散投資を始めたのは、誰の本や記事がきっかけだったかという話題がありました。カン・チュンドさんや竹川美奈子さん、山崎元さんなどの名前が挙がったのですが、私の場合はモーニングスター社長である朝倉智也さんでした(かなり少数派のようです)。とくに大きな影響を受けたのが、今回紹介する『低迷相場でも負けない資産運用の新セオリー』です。2012年の発行なので古い本に思えるかもしれませんが、これは凄い本です。とくに第1章で展開される日本の投信業界に対する徹底批判は、発刊から3年以上を経た現在でも、いまだに色あせません(それは日本の投信業界にとって寂しいことですが)。また、私にとっては新興国投資への基本スタンツを決定付けた本でもあります。単純に新興国株式インデックスに投資するのではなく、インデックスの構成内容を念頭に入れた高度な分散投資という考え方を教えてくれた1冊でした。
2016年7月4日

『確定拠出年金の教科書』―ホンネで書かれたスタンダードな教科書



改正確定拠出年金法が成立し、2017年1月からほとんどの現役世代が確定拠出年金に加入できるようになったことで、すでのいくつかの解説書が出ています。より踏み込んだ内容の参考書を求める人にお薦めなのが、山崎元さんの『確定拠出年金の教科書』です。文字通りスタンダードな教科書ともいうべき仕上がりの1冊ですが、そこはいつもの“山崎節”が炸裂していて、まさにホンネで書かれた教科書になっていました。
2016年6月27日

『はじめての確定拠出年金投資』―文字通り“はじめて”の人に最適な入門書



改正確定拠出年金法が成立したことで、2017年1月からほぼすべての現役世代が確定拠出年金(DC)に加入できるようになります。とくに個人型DCは税制優遇措置があることから老後に向けた資産形成のツールとして極めて重要です。ただ、制度がやや複雑なため、利用するためには少しばかり勉強が必要。そこで最新の内容を踏まえた解説書がこれから多く出てくることでしょう。今回紹介する大江英樹さんの『はじめての確定拠出年金投資』もそんな1冊。良心的な著書で知られる大江さんらしく、今回も非常に分かりやすく、それでいて極めて大切な原理原則について書かれているのが素晴らしい。文字通り「確定拠出年金ってなに?」と思っているような”はじめて”の人に最適な入門書になっていました。
2016年6月26日

Brexit後の世界―大英帝国と神聖ローマ帝国



英国がEUからの離脱を国民投票で決めたことで、世界的に株価は大暴落となりました。ただ、短期的には大きな心配はないと指摘しているのが、ポール・クルーグマン教授です。ニューヨーク・タイムスに、なかなか核心を突いた論考が載っていました。

Brexit: The Morning After(The New York Times)

しかし、短期的には影響は少なくとも、BrexitによってEUやユーロ・システムにとっては本質的な危機が表面化したわけで、世界の政治経済への長期的な影響は避けられそうもありません。そしてもう一人、早くから英国のEU離脱を“予言”していたのがエマニュエル・トッドでした。トッドのインタビュー集、「ドイツ帝国」が世界を破滅させるを読み返すと、EU離脱派の心性というものがよく分かります。



現在のEUとユーロ・システムが事実上、ドイツの“カール大帝路線”の表れになっていると解釈されているわけです。そうなると、今回のBrexitという出来事は、現代の神聖ローマ帝国(実際に正式名称は「ドイツ国民の神聖ローマ帝国」だった)たるEUに、再び大英帝国(英国は現在でも英連邦〈The Commonwealth〉を維持している)として相対しようとしているとも理解できるのです。
2016年5月22日

『長期投資のワナ』ー長期投資やインデックス投資に夢中な人の毒気を抜いてくれる1冊



セゾン投信の中野晴啓社長の新著、『長期投資のワナ ~ほったらかし投資では儲かりっこない』は、なかなか衝撃的なタイトルです。しかし、本書には投資について極めて重要な真理、すなわち「長期投資とは何か」あるいは「インデックス投資とは何か」ということに対する中野社長の真摯な思いが綴られていました。おそらく長期投資やインデックス投資を始めたばかりの人は、いろいろな本やブログを読んだりして「長期投資は素晴らしい」「インデックス投資は最高!」と思っている人も少なくないでしょう。それは誰もが通る道です。しかし、長期投資やインデックス投資を勧める入門書やブログには、まさに入門ゆえの「方便」が含まれています。方便は真理に至るために不可欠な手段ですが、拘泥すれば道を誤る。本書は、長期投資やインデックス投資を推奨する「方便」から一歩道を進め、より本質的な投資の考え方への道筋を示してくれています。長期投資やインデックス投資に夢中になった人から毒気を抜いてくれる1冊だといえるでしょう。
2016年5月13日

『米国会社四季報2016年春夏号』―米国株投資の必携書



米国の個別株に投資する場合、必携書といえるのが「週刊東洋経済」の臨時増刊として出ている米国会社四季報です。私も今年から米国株投資に挑戦しているので、もちろん最新の米国会社四季報2016年春夏号を買いました。これ1冊を手元に置いておけば、米国の主要個別銘柄の基礎的なデータを一覧できるので非常に便利。実際に株を買うかどうかは別にして、つらつらと眺めているだけで日本ではなじみのない米国企業の存在を知ることもでき、米国株式市場の奥行を知ることもできます。役に立つ上に楽しい1冊でもあるのです。
2016年4月26日

自分の才能に目覚めました―ストレングス・ファインダーをやってみた



オフ会などでお世話になっているピヨママさんが「ストレングス・ファインダー」という面白いテストを紹介してくれました。

才能に目覚めよう(1) 書籍紹介(ピヨママの投資と家計と子育てと)
才能に目覚めよう(2) ピヨママの場合(同)
才能に目覚めよう(3) 続々と才能に目覚めてる(同)

ピヨママさんの記事にある通り、ブログやtwitterを通じて交流している多くの人が次々と才能に目覚めています。これは「乗るしかない、このビックウェーブに」ということで、遅ればせながら、さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かすを購入して、チャレンジしてみました。はたして私はどんな才能に目覚めるのでしょうか。
2016年4月4日

新社会人は投資を始めるべきか否か



4月に入って、いよいよ新年度です。この時期になるとビジネス街にはリクルートスーツ姿の新社会人を多く見かけ、その初々しさはなかなか好もしいものです。ところで投資クラスター的なネタとして、新社会人は投資を始めるべきか否かという議論がよくあります。日経新聞電子版にも次のような記事が出ていました。

初任給で投資デビュー 時間が味方、資産を育てる(「日本経済新聞」電子版)

いろいろと網羅的に紹介されていて参考になります(ただし、野村證券など大手証券会社の「るいとう」はやめたほうがいいです。手数料がバカ高いから)。では実際に新社会人は投資を始めるべきか否か。あるいは投資するとした、どんな優先順位となるのでしょうか。
2016年3月18日

『ウォール街のランダム・ウォーカー(原著第11版)』を買いました



このほどバートン・マルキール博士の『ウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第11版〉―株式投資の不滅の真理』の翻訳が刊行されたので、早速購入しました。本書は1973年に初版が刊行されて以降、インデックス投資に関する基本文献中の基本文献とされてきました。私は原著第10版を読んでいるのですが、今回の改版でも新たに増補改訂された部分もあり、やはりこれは読んでおかなければと思ったわけです。まだ、軽く中身を眺めた程度なのでレビューはできませんが、やはり非常に読み応えがありそう。しばらく、じっくりと読んでいきたいと思います。
2016年3月4日

『臆病な人でもうまくいく投資法』-投資するということは、自立するということ



竹川美奈子さんの新著、臆病な人でもうまくいく投資法 お金の悩みから解放された11人の投信投資家の話が刊行されました。すでに何人もの投資ブロガーさんが紹介しているのですが、非常に興味深い1冊だったので、私も少し感想を記しておきたいと思います。タイトルが示すように、本書には11人の個人投資家が登場し、現在の投資スタイルについて紹介しています。基本的に投資信託を使った“コツコツ投資”なのですが、詳細に見てみると、まさに11人11色といった感じ。しかし、全員に共通しているのが自分の頭で考えて、納得も得心もしたうえで投資しているということでしょう。つまるところ投資するということは、自立するということなのだということを教えてくれます。
2016年2月21日

『29歳で2000万円貯めた独身女子がお金について語ってみた』―若い女性の等身大の自問自答に共感



女性インデックス投資ブロガーの中でも独特の感性と鋭い認識力の文章をいつも発表しているITTINさんが、このほど著書、29歳で2000万円貯めた独身女子がお金について語ってみたを出されました。さっそく読んでみたのですが、非常に味わい深い1冊でした。家計管理や貯蓄、資産運用についてこれから資産形成を始めようと考えている若い人に参考になる内容が紹介されているのですが、それよりも1人の若い女性が自分の現在と将来について自問自答する等身大の姿が描かれていて、非常に共感した次第です。お金を使う、貯める、殖やすということは、結局は自分がどうありたいのか、どんな自分になりたいのかということを自問自答することです。そういう本質的な問題意識に支えられた試行錯誤の記録は、読んでいて非常に好もしいものでした。
2016年2月13日

『働く君に伝えたい「お金」の教養』―達人が語る「お金」と「生き方」に関する不変の原理原則



マネーリテラシー系の良書はたくさんありますが、最近出たものの中で圧倒的にお薦めなのが出口治明さんの『働く君に伝えたい「お金」の教養: 人生を変える5つの特別講義』だと断言します。軽い気持ちで読み始めたのですが、読了して三嘆。まさにお金だけでなく人生に関する達人の講話を拝聴している気分になりました。帯には「20代の新しいお金づきあい入門!」と書かれていますが、20代だけでなく30代、40代が読んでも貴重な学びがあります。些末な技法ではなく、「お金」そして「生き方」に関する不変の「原理原則」を平易に語る姿は、数々の修羅場を生き延びてきた老剣豪が語る洒脱さと禅味を帯びた芸論にも似ています。本書を読めば、初心者ば安心を、中級者は疑問を、そして上級者は深い得心とおのれの未熟さを感じることになるでしょう。
2016年1月18日

『ケンブリッジ式経済学ユーザーズガイド』-投資家としての洗練度を高めるために便利な1冊



以前、広瀬隆雄さんが「マクロ経済が分かれば、投資家としての洗練度が格段に上がる」と書いていたのを読んで非常に納得しました。投資は勉強したからといってリターンが上がるわけではないのですが、やはり最低限の経済学的知識を持っていれば、投資家としての“洗練度”が高まるという考え方に賛同します。とくに私のように専門的に経済学の訓練を受けていない人は、下手をするとマスメディアに氾濫する俗流経済評論に毒されやすいので注意が必要です。そんなわけで啓蒙的な経済学の本を継続的に読んでいるのですが、最近読んだケンブリッジ式 経済学ユーザーズガイド: 経済学の95%はただの常識にすぎないは、なかなか面白かった。こういった啓蒙的なパンフレットこそ経済学者が書くべきものですし、個人投資家レベル、そして一市民としても読んでおいて損はないでしょう。

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