2016年3月4日

『臆病な人でもうまくいく投資法』-投資するということは、自立するということ



竹川美奈子さんの新著、臆病な人でもうまくいく投資法 お金の悩みから解放された11人の投信投資家の話が刊行されました。すでに何人もの投資ブロガーさんが紹介しているのですが、非常に興味深い1冊だったので、私も少し感想を記しておきたいと思います。タイトルが示すように、本書には11人の個人投資家が登場し、現在の投資スタイルについて紹介しています。基本的に投資信託を使った“コツコツ投資”なのですが、詳細に見てみると、まさに11人11色といった感じ。しかし、全員に共通しているのが自分の頭で考えて、納得も得心もしたうえで投資しているということでしょう。つまるところ投資するということは、自立するということなのだということを教えてくれます。

本書は、竹川さんがコツコツ投資で資産形成を実践している11人の個人投資家に聞き取り調査し、現在の投資スタイルに行き着くまでの経緯を紹介することで投資信託を使ったコツコツ投資の基本的な考え方や実践方法、確定拠出年金などの活用方法などについて学べるという非常にユニークな構成となっています。登場する11人のコツコツ投資家の中には、相互リンクやTwitterで交流させていただいているブロガーの名前もあり、その点でも興味津々でした。

いずれの個人投資家も、現在の投資スタイルに行きつくまでの紆余曲折を赤裸々に語っており、なかには失敗談もあって、誰もが最初から最適な投資スタイルを実行できるわけではないということが分かります。なぜなら、それぞれの対場がまったく異なるから。性別や世代の違いもあれば家族構成や職業などもバラバラです。だから、最適な投資スタイルというのは、教科書通りにはいかないものです。それでも本書に登場する11人は、試行錯誤を続けることで、それぞれが最適だと納得できる投資スタイルに落ち着いている。これは、非常に大切なことだと思いました。

投資というのは懐が深いものですから、最適な投資方法としてひとつの解があるわけではありません。個人投資家の場合、リスク許容度の把握や分散など基本的な原則さえ押さえておけば、あとはひとそれぞれの好みや考え方、立場によって最適な投資スタイルが無数にあります。ここでいちばん大事なのは、その投資スタイルに至るまでに、つねに自分の頭で考えて、自分の責任で実行するということです。それは、自立するということです。正しい投資とは、じつは自立するということなのです。

よく「投資は怖い」と言われます。なぜ怖いのでしょうか。投資は不確実なものだからです。でも、その不確実性を自分の頭で理解し、自分の責任で投資を実行できれば、少しも怖くありません。いちばん怖いのは、自分の頭で考えずに、人の意見を鵜呑みにして投資すること。それは自立できていないということです。だから損をすると、すぐに「騙された」などと言って、人のせいにするようになる。それは恥ずかしいことです。

そういう意味で、本書に登場する11人の個人投資家は、全員が見事に自立している。自立しているからこそ、大らかな気持ちで投資を続けることができています。だから本書の正しい読み方は、ごく普通の生活者が自立するにいたるプロセスを理解することでしょう。その道筋はひとそれぞれですが、つねに自分の頭で考え、自分の責任で行動することが大切なのです。それさえできていれば、投資なんか怖くないし、難しくもない。そして、生活者として自立することは、べつに投資だけに求められるものではありません。ひとりの市民として、やはり必要なありようだからです。

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