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2016年3月2日

GPIFの2015年10~12月の運用成績は4.7兆円のプラスに―日本の年金運用とは何なのか


(出所:GPIFのホームページ)

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2015年10~12月の運用成績を公表しました。結果は4.3兆円のプラスとなり、期間収益率は3.56%でした。

平成27年度第3四半期運用状況(GPIF)

7~9月は7.8兆円の損失だったことでいろいろと言われたわけですが、年末に株価が回復したことが大きかった。このため市場運用を開始した2001年度来の累積収益額は再び50兆円を超えました。ただ、2016年に入ってからは株式相場が大きく下落していますから1~3月は厳しい結果が予想されます。15年度通期でも収益率はマイナスとなる可能性が高い。そうなると、またもや世間の風当たりが強まることが予想されます。しかし、年金積立金など超長期の運用は、わずか3カ月の運用成績で是非を判断するものではありません。あいかわらず年金運用とは何なのかが分かっていない人が多いので、蟷螂が斧を振るようですが、ブログで発表毎にフォローしていきたいと思います。

年金積立金を株式などで運用することには、あいかわらず否定的な声が多い。たしかに現在の資産配分が受益者たる国民のリスク許容度に合っているのかは私も確信が持てません。また、そもそも資産配分の前提となる目標利回りの決め方が不透明だという指摘もあります。しかし、少なくとも年金積立金を運用すること自体を否定する考え方には賛成できません。現在の日本のように賦課方式の公的年金制度を採用している限り、積立金を運用して増やしていかないと、少子高齢化による年金収支の悪化が保険料や支給額にダイレクトに反映されてしまうからです。
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実際の年金収支は年金特別会計で構成されています。そこでは年金保険料として現役世代から集めたお金に国が国庫負担(税金)を加えて、そのほとんどを現在の年金受給者への支払いに充てています。これが賦課方式です。ただ、少子高齢化で保険料の歳入よりも年金給付による歳出の方が多いので、不足分を年金積立金を取り崩しながらバランスをとっている。つまり、年金積立金というのは、あくまで年金特別会計の一部を構成する調整基金なのです。もし年金積立金がなくなれば、年金特別会計の収支を一致させるために保険料を上げるか、税金を増やすか、給付額を減らすかしかない。そして、積立金の運用を止めてしまうと、確実に積立金は枯渇します。だから運用で時間を稼ぎながら、国は徐々に保険料、税金、支給額をバランスさせようとしているのです。なぜ時間を稼ぐ必要があるのか。それは、実際問題として急激な負担増には国民生活が耐えられないからです。

また、そもそも国民の多くにおそらく公的年金制度に対する誤解があるのだとも思います。積立金という名前から、つい個人の貯金のようなものだと勘違いしている。つまり、個人財産の集合体が年金積立金だと思っているのでしょう。しかし、相互扶助たる保険制度の大前提として、公的年金の積立金には個人の持分はありえません。年金積立金は国民全体の財産であるけれども、個人の財産ではないということです。これについても以前にブログで書きました。
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そして、公的年金制度とは個人の持分をいっさい認めないからこそ、超長期の運用が可能なのです。個人には寿命がありますから、長期運用といってもいずれ終わりがくる。しかし、個人の持分を認めないならば、日本人が存在し、制度が存在し続ける限り運用を続けることができる。ここに年金運用の存在意義もあるのだと感じます。

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