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2016年2月21日

『29歳で2000万円貯めた独身女子がお金について語ってみた』―若い女性の等身大の自問自答に共感



女性インデックス投資ブロガーの中でも独特の感性と鋭い認識力の文章をいつも発表しているITTINさんが、このほど著書、29歳で2000万円貯めた独身女子がお金について語ってみたを出されました。さっそく読んでみたのですが、非常に味わい深い1冊でした。家計管理や貯蓄、資産運用についてこれから資産形成を始めようと考えている若い人に参考になる内容が紹介されているのですが、それよりも1人の若い女性が自分の現在と将来について自問自答する等身大の姿が描かれていて、非常に共感した次第です。お金を使う、貯める、殖やすということは、結局は自分がどうありたいのか、どんな自分になりたいのかということを自問自答することです。そういう本質的な問題意識に支えられた試行錯誤の記録は、読んでいて非常に好もしいものでした。

「29歳で2000万円貯めた・・・」というタイトルから、つい実践的な節約・貯蓄・運用のノウハウ本だと思われがちなのですが、本書の本当の面白さは別のところにあります。第1章「20代から考える将来への備え」では、若い世代の多くが抱いている将来不安について、それこそ手触りのある実感と結論に至る経路が描かれています。第2章「20代から、しっかり家計管理してみた」も同様です。悋気にならず、「人生を豊かにする(やりたいこと・やるべきことをする)ための機会に使う」という視点を強調していることが素晴らしい。お金は、節約することや貯めることよりも「いかに使うか」を自問自答することが大事だからです。第3章「20代で資産運用を考えてみた」も同世代の参考になります。とにかく自分で調べて考えるという姿勢が徹底されています。投資手法は様々存在しますから、絶対に正しい方法などありません。それよりも自分が本当に理解し、納得も得心もしたうえで少額からスタートするのが最適解であり、やはりそこに至る道筋で、ITTINさんは自分の頭で考え、自問自答を繰り返しています。その自問自答する姿は、大いに参考になるでしょう。

ようするに、本書の最大の魅力は、地に足をつけた考え方の記録だということ。ITTINさんのブログでもたびたび感心させられる点です。彼女がどういった仕事をしている人なのか私は知りませんが、やりたかった仕事に頑張って就いていることはブログでも紹介されていました。つまり彼女は、自分がどうありたいのか、どうなりたいのかをいつも冷静に考え、それを実現するために努力してきた人だということはわかります。そういった地味だけれども浮ついていない自問自答を繰り返してきた姿勢が、家計管理や投資実践にも現われているのです。

そういった姿勢は、最近流行りの“キラキラ系”や“意識高い系”とは対極にあります。でも、ITTINさんのように地に足をつけた姿勢で「自分はどうありたいのか、どうなりたいのか」を自問自答し、できることからコツコツと実践していくことの方が、地味だけれどもよほど共感できます。「なりたい“自分”を“自分”にしちゃえ」などと言いながら、「なりたい“自分”」なるものが所詮は「他人からどう見られるか、どう思われるか」といった気の毒な自意識過剰の表れに過ぎず、知らず知らずのうちに資本主義に消費されて「まだ消耗してるの?」と思われてしまう生き方と比べれば、ITTINさんの地に足をつけた生活意識とつねに自分の頭で考え、自問自答する姿勢を学ぶ方が、どれほど有益なことか。

そんなわけで、とても清々しい読後感のある本でした。社会人になったばかりで、将来のことやお金のことについて真面目に考えてみようと思っている若い人は、ぜひ一読をお薦めします。地に足をつけた考え方というものがどういったものなのかがよくわかるでしょう。そして、私のようなちょっと年上の世代が読んでも、もういちど「自分はどうありたいのか、どうなりたいのか」ということを改めて自問自答するきっかけを与えてくれるのではないでしょうか。

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