2016年2月20日

銀行は勘違いした年寄りにホイホイ投信を売るな!



日銀当座預金の一部にマイナス金利が導入されてからというもの、銀行の預金金利が軒並み低下しました。マイナス金利だけでなく国債の利回り低下で銀行の収益力が低下していることはわかるのですが、自行の収益力低下に対して自助努力もせずに、すぐさま預金者にコスト転嫁するという日本の銀行の志の低さに呆れる今日この頃です。そんなことを考えていたら、いつも楽しく読んでいる夢見る父さんのブログでちょっと無視できない内容が紹介されていました。

マイナス金利対策はこれだ(夢見る父さんのコツコツ投資日記)

毎日新聞の記事が引用されていますが、なんでも預金を全額解約し、国内株で運用する投資信託を買おうとする高齢者が出てきたそうです。夢見る父さんが指摘するように、いくらなんでもこれは無茶な話です。この高齢者は、完全に勘違いしているわけで、やはり夢見る父さんが言うようにマネーリテラシーのない高齢者に問題があります。ただ、それ以上に怒りを覚えたのは、そんな高齢者に投資信託を簡単に売ってしまう銀行の姿勢に対してです。銀行には「勘違いした年寄りにホイホイ投信を売るな!」と言いたい。

このブログでも何度も書いてきましたが、マイナス金利が導入されたからといって「預金は危ない」といった間違った思い込みで、株式や投資信託などリスク商品に過剰に資金を移動させるのは絶対にしてはいけないことです。それは「リスク資産」と「無リスク資産」の意味や位置付けを完全に勘違いした行動だからです。
【関連記事】
マイナス金利時代の無リスク資産とは―“リスク”の厳密な意味を理解しよう

とくに高齢者は、収入フローが少なく、投資に費やせる時間が若者よりも少ないですから、絶対に過剰なリスクを負ってはいけないはず。預金を全額解約して投資信託を買うなどは論外です。しかも、記事に登場する女性は「資産運用なんてしたくない」というのがホンネなのですから、なおさらです。完全に勘違いしている。

ただ、それ以上に問題だと思ったのは、こうした勘違いした高齢者に対して銀行がどのような対応をしているかということ。ほんとうにこの女性が投資信託を買ったのかは分かりませんが、もし実際に購入していたとしたら、それは銀行の対応が非常にケシカランと思います。

この女性は、基本的にマイナス金利について勘違いしている可能性が高いし、リスク資産と無リスク資産についての理解も浅いと思われるわけで、しかも「資産運用なんかしたくない」と思っている。だったら、そんな人に投資信託なんか売ってはいけない。

ここで銀行がするべきことは、まずはマイナス金利について正しく説明することやリスク資産と無リスク資産の意味についてきちんと教えてあげることです。その上で預金に代わる具体的な商品として例えば個人向け国債変動10年あたりを薦めるべきなのです。

もちろん投資は自己責任ですから、求められればどんな商品でも購入意思を確認したうえで売るというのが銀行の言い分でしょう。でも、それが志が低いというのです。法律さえ守っていれば、何でも許されると思ったら大間違いだ。なぜなら、金融機関にはコンプライアンスに加えて、受益者に対するフィデューシャリーデューティー(受託者責任)があるはずだからです。

現在、金融庁は金融行政方針の中で金融機関に対してフィデューシャリーデューティーを果たすことを求めていますが、それは「真に顧客のために行動すること」と規定されています。マイナス金利を勘違いして預金を解約した高齢者に対して銀行が投資信託をホイホイ売ることが「真に顧客のために行動すること」になりますか。そんなはずありません。

マイナス金利をきっかけにして銀行にお金を預けている庶民は、非常に困惑しているし、不安も感じているのは事実です。そんな預金者に対して銀行がどういった態度をとるのか。ここで銀行の根本的な姿勢が問われているのですよ。それは預金金利の高低や手数料の多寡以上に重要な問題です。そのあたりを、日本の銀行にはよくよく考えて欲しいと思います。

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