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2020年5月19日
米経済は価値ある何かを失い、われわれは傷つき、回復は遅いだろう
タイトルで紹介したのは、ノーベル経済学賞受賞者であるジョゼフ・スティグリッツ博士の言葉です。
新型コロナ後の米経済のニューノーマル、悲惨で危険に満ちたものに(ブルームバーグ)
新型コロナウイルスによって世界経済は大きな打撃を受けました。にもかかわらず株価は奇妙な上昇を続けています。こうなるとどうしても楽観論が強くなるのが投資家の性ですが、やはりスティグリッツ博士の指摘は重いものがあります。はたして博士が指摘する“価値ある何か”とは何なのでしょうか。
“ウィズ・コロナ”あるいは“アフター・コロナ”の社会経済は、従来とは異なる“ニューノーマル”となると言われだしました。そこでは「消費者や企業が恐る恐る危機を脱し、次なる危機への蓄えを用意することで、需要が減り生産性の低い「万が一に備えた」経済となりそうだ」というのがスティグリッツ博士の指摘です。
それによって、これまで米国経済を支えていた「価値ある何か」が失われる。それは、投資や消費への前向きな姿勢、いわば社会のダイナミズムということでしょう。「健康や家計に不安を抱く世帯は貯蓄を増やして支出を減らすだろう。企業はコスト削減よりも回復力の向上を優先して供給網を再編したり生産を米国に戻したりし、効率性は低下してグローバル化は後退する」というわけです。
さらに格差問題も一段と深刻になると指摘するのはヤルデニ・リサーチのエド・ヤルデニ社長兼投資戦略責任者や民主党のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員。中央銀行が積極的な流動性供給を続けることで株価は下支えされることになり、投資家が恩恵を受ける一方で大量の失業者が生まれる状態が続く可能性があります。こうした格差問題の深刻化も、やはり中長期的に経済の足を引っ張るはずです。
こうした状況下、私たちはどう振る舞うべきでしょうか。一市民としては、ほとんど答えが見つかりません。ただ、個人投資家の立場からすれば「米国にさえ投資していれば大丈夫」という気にはとてもなれないのです。新型コロナ後の“ニューノーマル”は、もっとも複雑なものになるような気がしてなりません。
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