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2019年11月16日

ヤングへの金融教育は大切だけれども、おっさんへの金融教育はもっと重要



最近、日本でも若者への金融教育の重要性が徐々に認識されてきました。それはそれで非常に大切なことなのですが、それに加えて重要なのは50代など中高年への金融教育ではないでしょうか。そこには日本のサラリーマンが抱える歴史的経緯と特殊事情があります。

50代への金融教育の重要性という問題に関して、フィデリティ退職・投資教育研究所が興味深いコラムを掲載しています。

50代の金融教育(フィデリティ退職・投資教育研究所)

50代での金融教育の必要性と有効性を指摘しているわけですが、もうひとつ付け加えたい要素に「退職金」の存在があります。日本の場合、企業年金など私的年金給付よりも退職金という形で退職一時給付が先行して整備・普及してきた歴史的経緯があります。このためサラリーマンの多くが定年退職時に退職金という形で老後資金の一部を一括給付されることになり、そこで否応なくまとまった資金の「運用」、そして「老後資金の引き出し方」や「退職後のお金との向き合い方」という問題に向き合わざるを得ないのです。

ところが、これまでまともな金融教育を受けていない人にとって、こうした状況は非常に厳しい環境だと言えるでしょう。実際に私の周辺の同世代を見渡しても、それなりの金融リテラシーを持っている人は少数派。やはり「投資=ギャンブル」といった考え方の人も少なくありません。そういった人が退職時にいきなり大金を渡されて「これを老後資金の一部としてマネージメントしなさい」と言われても、どだい無理な話なのです。

そこで慎重派なら退職金をすべて預貯金などで運用することになります。これはこれで賢明な方法であり、ひとつの解なのですが、最悪なのが焦って突然に投資を始めてしまうこと。しかもやり方が分からないので銀行や証券に相談してしまうと、金融機関にとっては絶好のカモなので様々なぼったくり商品が提案されるという悲しい現実があります。

こうしたことを考えると、ヤングへの金融教育は大切だけれども、おっさんへの金融教育はもっと重要では。とくに退職金の給付が迫る50代後半への教育の重要性が大きいでしょう。その点、やはり海外の事例は参考になります。フィデリティ退職・投資教育研究所のコラムでは英国での取り組みが次のように紹介されています。
英国では確定拠出年金の引き出しの際に、政府が無償で投資ガイダンスをする「ペンション・ワイズ」という制度があります。2015年にスタートしたのですが、電話やチャットで相談でき、面談によるガイダンスも可能です。まだまだ利用者が少ないといわれていますが、このサービスを担当するMoney & Pension Servicesでは、今年は年間で20万人以上の利用者を想定しています。
こうした取り組みを日本でも実施するべきでしょう。日本の場合、ガイダンスの対象を確定拠出年金の引き出しだけでなく退職金の使い方や運用にまで広げることも必要です。確定拠出年金と退職金は「年金給付」なのか「退職一時給付」なのかという受け取り方法が違うだけで、本質的には同じものだからです。現在、金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループで「高齢社会における金融サービス」が議論されていますが、ぜひこういったことも具体的施策についても政府内で検討されることを期待したいと思います。

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