昨年から勤務先の労働組合で委員長を務めています(その経緯は以前にブログで書きました:「只今、賃上げ闘争中」)。ようやく春闘も終わり、なんとか今年も賃上げを勝ち取ることができました。ただ、現実は厳しく、内容は全く不十分な結果となりました。
多くのマスコミが報じているように世間では大幅な賃上げが相次いでいるのですが、やはりあれは大企業の話です。私の勤務先のような中小零細企業では、賃上げするための原資が圧倒的に不足しており、いかんともしがたい現実があります。
今年の春闘では、最低でも2023年の消費者物価指数の上昇率を超える賃上げを目指したのですが、結局わずかに足りませんでした。私の勤務先企業はオーナーもおらず、社長も昔は労働組合の委員長をやっていたような人なので、交渉の際には会社側の財務内容が完全に公開されます。それを見ると、組合が要求する金額をまかなえる原資がまったくありません(そして取締役3人はもう何年も大幅な報酬カットが続いています)。
こうなると、これ以上は強く要求しても勝算が見込めず、妥結せざるを得ないとなるわけです。最終的に、絶対額で見れば2年連続で過去最高水準の賃上げとなるのですが、物価上昇率を考慮すると実質賃金は低下することに。ふがいない闘争結果に、労働組合のトップとしては忸怩たる思いです。
今回の春闘を通じて改めて感じたのは、インフレ経済の下においては「中小零細企業のサラリーマンは、賃金上昇を待ってはいられない」ということです。たしかにインフレになれば、サラリーマンの給与も徐々に上昇していきます。しかし、中小零細企業に波及するのは最も遅い。逆に不況になれば給与も減るのですが、これは中小零細企業に波及するのが最も早い。このタイムラグが問題なのです。
そうなると、このタイムラグを補う何かが必要になる。結局、それが株式投資ということになるのでしょう。実際、私はインフレによって実質賃金が減少しているのですが、株式投資によって金融資産・収入は大幅に増えています。このためインフレによる購買力の低下をある程度抑えることができています。厳しい話ですが、これが現実です。
だから現在において株式投資による資産形成・運用というのは、もはや“金持ちの道楽”ではなく、“貧乏人の生活防衛手段”なのです。もちろん労働運動によって収入を増やす努力をすることは大前提。しかし、それだけではインフレに追いつかない場合、やはり投資が不可欠になる。これはこのブログでも何度も書いてきたことですが、現代の労働者にとって必要なのは、投資と労働運動の二正面作戦を戦うことなのです。
【関連記事】