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2024年1月7日

追悼 山崎元さんと大江英樹さん―個人投資家に寄り添った言説に勇気づけられた

 

経済評論家の山崎元さんと大江英樹さんが、奇しくも同じ1月1日に逝去された。御二人とも闘病中だということは知っていましたが、それでも突然の悲報に言葉もありません。個人投資家に寄り添った言説に勇気づけられたのは私だけではないでしょう。

いまでこそインデックス投資の認知度はかなり高まっているのですが、かつてはまったくマイナーな存在でした。そんな中で、インデックス投資の合理性を指摘し続けていた数少ない専門家の1人が山崎さんでした。私がインデックス投資の存在を知ったのは2010年頃ですが、やはり山崎さんの著書や論考を読んで、非常に納得させられたものです。

山崎さんの功績のひとつは、やはりインデックス投資の合理性をつねに“理論的”に論じ続けたことでしょう。インデックス投資を実践する個人投資家ですら、えてして「素人である個人投資家は相場のことはよく分からないのでインデックスに投資するのがいちばん合理的だ」程度の安直な、悪く言えば思考停止した説明しかできない中で、山崎さんはあくまで理論的にインデックス投資の合理性を説明しようとしていました(山崎さんは、それを「平均投資有利の原則」と呼んでいます)。こうした姿勢は、現在でも貴重なものだと思う。

一方、大江さんは長年大手証券会社で年金関連の業務に携わってきた経験を活かし、リタイア後の経済問題への処し方や確定拠出年金の運用などで独自の境地を拓いていました。やはり私が大江さんの本を読むようになったのは、まずは確定拠出年金関連だったと記憶しています。

大江さんは、つねに穏健で中庸なことしか書かなかった。でも、ポジショントークが横行し、過激な発言ばかりが注目されがちな投資や資産運用の世界で、穏健・中庸というのはとても価値あることです。それは一見凡手に見えるけれども、じつは鍛えの入った一手であり、最善手だったのです。

そして近年は“お金の使い方”という、いわば資産形成の最後の問題に対して積極的に発言していました。そこに大江さんの並々ならぬ慧眼を感じました。なぜなら、日本人のマネーリテラシーにおいて、もっとも啓発が遅れているのが、この“お金の使い方”という問題だからです。

こうして書いていると、いろいろと個人的な思い出が浮かんできました。山崎さんとは何年か前のインデックス投資ナイトの懇親会の後、3次会か4次会までご一緒したことがあります。最後はカラオケボックスになだれ込んだのですが、往年のアニメソングやアイドルソングを絶唱する山崎さんの姿を思い出します。

大江さんとはイベントやセミナーでお会いすることが多かったのですが、いつも奥様である大江加代さんと一緒に楽しそうに過ごしていました。スタイルもダンディで、それでいて大人の風もあり、「私もあんなオジサンになりたい」と思ったものです。

御二人に共通して感じたのは、「自由」ということでした。二人とも大手金融機関の出身ながら、業界や組織、そして過去のしがらみに縛られることもなく、最後まで精神の自由を保ち続けていたように思います。投資はそのための手段の一つに過ぎなかった。しかし、「精神の自由」こそ、多くの個人投資家が求めるものでもありました。だからこそ、二人は個人投資家に寄り添うことができたし、多くの個人投資家も二人の言説を信頼したのだと思う。そんな御二人の言葉を聞くことはもうできなくなりました。ただただ寂しさを感じています。

大江さんは昨年3月に『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』を刊行しています。図らずも大江さんの遺著となりました。そして山崎さんは文字通り遺著として『経済評論家の父から息子への手紙: お金と人生と幸せについて』が今年2月の刊行されます。改めて御二人の著書を読み直し、その声を追慕しようと思います。

山崎さん、大江さん、いままでありがとうございました。安らかにお眠りください。

合掌

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