SBI証券で運用している個人型確定拠出年金(iDeCo)の11月の買付(10月拠出分)が約定しました。株価堅調に加えて円安で海外資産に投資するファンドが大きく上昇しており、またもや累積収益率は過去最高を更新しました。iDeCoでの積立を始めて今年で9年目なのですが、ついに含み益が3ケタ万円台に突入です。少なくとも現段階では「iDeCoに加入して良かった」というのが正直な感想。最近、iDeCoなど税制優遇のある積立投資制度を「一生バカを見る」といって批判する向きもありますが、一生バカを見ることよりも「絶望的な格差」に甘んじることの方が恐ろしいことなのではないでしょうか。
SBI証券のiDeCoオリジナルプランで買付けたファンド・商品は以下の通りです(カッコ内は信託報酬)。いつも通りのポートフォリオとなっています。
【個人型確定拠出年金(SBI証券iDeCoオリジナルプラン)】
「三井住友・DCつみたてNISA・日本株式インデックスファンド」(0.16%)
「DCニッセイ外国株式インデックス」(0.189%)
「EXE-i新興国株式ファンド」(0.23%+投資対象ETF信託報酬0.1095%程度)
「EXE-iグローバル中小型株式ファンド」(0.23%+投資対象ETF信託報酬0.075%程度)
「野村外国債券インデックスファンド(確定拠出年金向け)」(0.14%)
「三菱UFJ DC新興国債券インデックスファンド」(0.34%)
「三井住友・DC外国リートインデックスファンド」(0.27%以内)
「あおぞらDC定期」
累積損益率は11月17日段階で+44.8%となり、またもや過去最高を更新しました。ポートフォリオを見ても分かるように海外資産のウエートが高いため、最近の円安による為替要因の恩恵を大きく受けています。このため定期預金や債券ファンドを組み入れたおとなしい資産配分にもかかわらず、拠出開始から9年目で含み益はついに100万円を超えました。着実に老後資金が貯まっています。
さて、そのiDeCoですが、これを「一生バカを見る金融商品」だとして批判しているのが経済ジャーナリストの荻原博子さん。iDeCoどころか「つみたてNISA」も含めて、それこそ「投資なんかおやめなさい」といういつもの荻原節です。
荻原博子「iDeCoやNISAは買ったら一生バカを見る金融商品である」(プレジデントオンライン)
社会保障制度についてちょっとでも知っている人なら、いろいろと突っ込みを入れたくなる雑な論理構成もいつもの荻原節ですね。例えば公務員の「年金払い退職給付」を批判してしていますが、これはもともとあった「職域加算」が共済年金と厚生年金の一元化によって廃止された代替措置として作られたものです。つまり、公務員の年金は当初から3階建てだったわけで、だからこそiDeCoの拠出限度額も同じく3階建てである企業年金のあるサラリーマンと同じように低く設定されている(つまり課税繰り延べ額も小さい)わけです。公務員の年金が3階建てであることの是非は議論のテーマになり得るでしょうが(ただし職域加算の廃止で3階部分は減額されている)、少なくともiDeCoの制度としての建付けは中立であり、それをもってiDeCoを批判するというのは、ちょっと陰謀論みたいでよろしくない。
また、60歳まで換金できないという流動性の低さを大きなデメリットとして指摘していますが、これなどはiDeCoが「年金制度」であるということを理解していない。年金というのは収入が途絶える老後の購買力を補完するため制度ですから、それこそ公的年金から私的年金まですべて流動性が低いのが当たり前。ある意味、流動性を低くすることで年金は制度としての強度が増すのです。その上で、足元の経済状況が悪化して拠出が苦しくなれば、iDeCoは拠出を減額したり一時的に中止することもできます。そういった制度の細かな規定を無視して、60歳まで換金できないことを「大きなデメリット」と言い立てるのは、やはり為にする議論でしょう。
もちろんiDeCoに限らず、あらゆる制度にはメリットとデメリットがあります。しかし、過剰にデメリットを強調することで、もっと恐ろしいデメリットに対する備えがおろそかになる危険性を無視してはいけません。iDeCoだけでなく企業型も含めた確定拠出年金(DC)制度は今年で20周年を迎えたのですが、この20年でいったい何が起こったのか。恐るべき事態が起こっています。
DCで外国株式インデックスファンドに投資していた場合、元本に対して4.3倍の成績になったそうです。つまり、同じ企業で働き、同じ金額をDCに拠出していても、リスクを取って株式ファンドに投資していた人と、元本保証商品で運用していた人の間には、老後資金に絶望的な格差が生じているわけです。記事にもあるように実際に20年前から外国株式インデックスファンドの全額拠出しているような人は極めてまれでしょうから、実際の格差はもっと小さいでしょう。でも、収入が無くなる老後の経済格差というのは挽回できないだけに極めて深刻です。若い時の貧乏は将来の糧になるかもしれないけれども、年老いてから貧乏するは絶望しかありません。
もちろん、将来のことは予想できませんから、iDeCoや「つみたてNISA」が今後も利益が出るとは限りません。しかし、少なくとも過去20年において、リスクを取って投資した人と、そうでなかった人の間に圧倒的な格差が生まれたということは現実です。この現実を前にして、はたして「iDeCoやNISAは買ったら一生バカを見る金融商品である」と言えるのか。「一生バカを見る」ことを恐れて、「絶望的な格差」に甘んじるのか。これこそiDeCoなどのデメリットを過剰に言い立てながら、もっと恐ろしい「老後の経済格差」という問題を無視するのかということです。そして、いま私たちが考えなければならないのは、そういう厳しい現実に対する身の処し方なのです。
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iDeCoに加入する場合、金融機関によって手数料や商品ラインアップが異なることに注意が必要です。現在、iDeCoプランの選択肢としてお薦めなのは運営管理手数料が無条件無料で低コストインデックスファンドをそろえるSBI証券セレクトプラン、楽天証券、マネックス証券、松井証券、イオン銀行です。iDeCoへの加入を検討している人は、これら金融機関のプランを研究することをお勧めします。いずれもネットから無料で資料請求できます。⇒SBI証券確定拠出年金プラン、楽天証券確定拠出年金プラン 、マネックス証券確定拠出年金プラン 、松井証券確定拠出年金プラン 、イオン銀行確定拠出年金プラン
iDeCoは公的年金を補完する制度ですから、これを活用する前提として日本の公的年金制度について勉強することを強くお勧めします。この点に関しては、権丈善一先生の『ちょっと気になる社会保障』が最良にして必読の入門書です。このほど、三訂版『ちょっと気になる社会保障 V3』が刊行されました。また、iDeCoも含めて現在の公的年金制度を徹底的に利用するための戦略書として田村正之さんの『人生100年時代の年金戦略』が非常に網羅的にまとめられていてお勧めです。家計管理から貯蓄・投資、公的年金やiDeCo・つみたてNISA活用までトータルに解説している竹川美奈子さんの『50歳から始める! 老後のお金の不安がなくなる本』も老後資金について“自分ごと”として考えるための方法論を丁寧かつ詳細に論じた優れた入門書です。
iDeCoは制度がやや複雑なので加入を検討する場合は解説書を読んで研究することもお勧めします。解説書としては大江英樹さんの『はじめての確定拠出年金投資』山崎元さんの『確定拠出年金の教科書』『シンプルにわかる確定拠出年金』竹川美奈子さんの『一番やさしい! 一番くわしい! 個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門』田村正之さんの『はじめての確定拠出年金』大江加代さんの『図解 知識ゼロからはじめるiDeCo(個人型確定拠出年金)の入門書』を挙げておきます。