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2019年8月2日
日本の投資信託、粗製乱造の結果が悲惨
日本には公募投資信託が6000本以上も存在します(6月末段階、投資信託協会調べ)。これは国内上場企業の数よりも多いわけですから、日本の投資市場の規模を考えてもいかに異常な数字であるかがよくわかります。なぜそのような異常な状態になったのかといえば、はっきり言って大手運用会社を中心に投資信託の粗製乱造と使い捨てが続けられたからにほかなりません。それでは肝心の運用成果はどうだったのかというと、これが悲惨のひとこと。それを証明するデータを紹介する記事がありました。
投信会社「運用力」の通信簿 独立系上位に、大手苦戦(NIKKEI STYLE)
運用の効率性を示すシャープレシオで公募投資信託を運用している運用会社を比べた結果、じつに露骨な結果が出ているわけです。
シャープレシオはリスク調整済みリターンを計測する手法です。細かい計算方法は省略しますが、基本的には「超過収益(過去の運用実績-無リスク資産の利回り)/ポートフォリオのリスク(標準偏差)」で求めます。シャープレシオの数値が大きいほど効率的な運用ができていると判断できます。今回の記事では公募投信を運用している会社に関して、すべての追加型株式投信の5年シャープレシオ(6月末時点)を算出し、各社別に平均したてランキング化しています。その結果を引用します。
じつに分かりやすい結果です。いずれのカテゴリーも上位は独立系運用会社がほぼ独占しました。また、上位の運用会社はいずれも運用しているファンド数が非常に少ないこともポイントです。記事も「上位には特定分野で強みを持っていたり、運用商品を絞って経営資源を集中していたりする会社が並んだ」と指摘していますが、よくよく考えればそれが運用会社の本来あるべき姿のはずです。
一方、数多くのファンドを運用している大手運用会社の苦戦が鮮明。とくに投資信託の大部分を占めるアクティブファンドのシャープレシオは酷い状態だとわかります。なぜかというと、参考として挙げられているインデックス型ファドの平均に対して全社平均が大きく下回っているからです。
例えば国内株式ファンドの場合、インデックス型平均のシャープレシオ0.54に対して全社平均は0.44、先進国株式ファンドはインデックス型平均が0.55に対して全社平均は0.29しかありません。先進国債券ファンドにいたってはインデックス型平均が0.24に対して全社平均は0.07とまったくひどい結果に。ようするに大手運用会社が大量に組成しているファンドの大部分がインデックス型ファンドを下回る運用効率しか確保できていないということになります。
なぜこんなことになるのかと言えば、そもそも大手運用会社によるファンド組成が粗製乱造にすぎなかったという寂しい現実があるからです。日本ではつねに流行のテーマに沿ったファンドが次々と組成され、さらに毎月分配型に代表されるような特殊な運用手法によるファンドも次々と登場しました。そして販売会社は個人投資家に対して新規設定のファンドと次々と乗り換えさせる回転売買を続けてきました。
乗り換えられたファンドは純資産残高も増えませんから、まともな運用などできなくなります。文字通り大量のゴミファンドが打ち捨てられているというのが、日本には約5000本もの投資信託が存在するという異常な現象の背後にある悲しい現実なのです。今回のデータが示すのは、まさに日本で投資信託が粗製乱造されてきた結果が悲惨なことになっていることを如実に示しています。
さらに悲惨なのは、大手運用会社による投資信託の粗製乱造によって、いまだに“投信は儲からない”“投信はボタックリ商品”といった印象が日本人の中で定着してしまったことでしょう。まさに日本の投資信託市場は運用会社と販売会社による焼き畑農業によってペンペン草も生えない状態になったわけです。
おそらく日本の大手運用会社が本当に生まれ変わるためには、現在のような粗製乱造を前提としたビジネスモデルを抜本的に変える必要があります。また、既に金融庁の指導によって従来のような回転売買に対して厳しい視線が注がれるようにもなりました。やはり従来のビジネスモデルが成り立つ前提条件すらなくなっているのです。
そこで参考になるのは、やはり今回の調査でも好成績を上げた独立系運用会社のやり方でしょう。彼らは少数のファンドを丁寧に育てながら運用を続けています。そのためには受益者とのコミュニケーションも重要になるだろうし、運用成績以外の付加価値を提供することも必要かもしれません。それは非常に手間暇がかかり、効率の悪いビジネスモデルかもしれません。しかし、一種の装置産業であるインデックスファンドは別として、投資信託とくにアクティブファンドが生きる道はそこにしかないように感じるのです。