サイト内検索
2018年11月7日
琉球銀行がiDeCoから事実上の撤退―サービスの持続性も金融機関選択のポイントに
竹川美奈子さんのツイートで知ったのですが、琉球銀行が10月1日付で自行の個人型確定拠出年金(iDeCo)プランを売り止めし、新たに野村證券のiDeCoプランを扱うと発表しています。
個人型確定拠出年金の新プラン「野村のiDeCo」取り扱い開始ついて(琉球銀行)
もともと琉球銀行のiDeCoプランは野村證券がOEM供給していたものですが、今回の売り止めと野村證券のプラン取り扱い開始・移換促進によって琉球銀行は自前でのiDeCoサービスから撤退することになります。私はかつて琉球銀行のプランに加入していたこともあり、今回のニュースにはちょっとした感慨があります。同時に、長期での運用が前提となるiDeCoでは、金融機関の選択に際してサービスの持続性というポイントが無視できない時代となったことを強く感じました。
かつて琉球銀行のiDeCoプランは、低コストなファンドがそろう良質なプランとして人気を集めていました。2012年ごろまでは、情報通な個人投資家の間では、低コストなインデックスファンドのラインアップで選ぶなら琉球銀行、運営管理手数料を無料にするならSBI証券かスルガ銀行のプランを選ぶというのが定番だったのです。私自身も最初に加入したiDeCo(当時は、そんな愛称もなく、個人型DCと呼ばれていました)は琉球銀行のプランでした。
その後、加入対象者の拡大などによってiDeCoの加入者は100万人を超えるところまで拡大する一方で、新規参入も含めて金融機関の競争が激化します。いまや運営管理手数料の無料化はネット証券などのプランでは当たり前になり、取り扱う投資信託の信託報酬も劇的に低下しました。もともとDCは企業型も個人型も極めて薄利なビジネスモデルですが、その傾向が一段と鮮明になったことで経営基盤の脆弱な中小金融機関ではサービスを維持できなくなったのでしょう。今回の琉球銀行のiDeCo撤退は、それを象徴しているように思えます。ちなみに、スルガ銀行も既に運営管理手数料を有料化し、事実上、iDeCoの運営管理事業を縮小させています。
こうした事例は、iDeCoに加入する際の金融機関選択に関して重要な問題を提起しています。iDeCoは原則として60歳まで脱退できませんから、長期での運用が基本となります。その場合、金融機関のサービス撤退というのは(他のプランに移換が可能とはいえ)加入者にとって非常な打撃。そして今後、iDeCoの競争がさらに激化することで琉球銀行以外でもサービスから撤退する中小金融機関が出てくる可能性は大いにある。つまり、金融機関を選ぶ際に、サービスの持続性という観点も無視できなってきたといういうことです。
いわば“寄らば大樹の陰”ということで、なんとも味気ない話ですが、やはり仕方がない面があります。これはインデックスファンドの運用事業も同じですが、iDeCoの運営管理業務というのは一種の装置産業的側面が強く、規模の経済が成り立ってしまうからです。最終的に大手数社に淘汰・集約が進んでもおかしくありません。そういったことを考慮すれば、やはりサービスを提供する金融機関の経営基盤と、iDeCoという事業が各社の事業戦略の中でどのように位置付けられているかなどを考え、金融機関を選ぶ必要があるということです。
ちなみに私は現在、iDeCoの有力な選択肢としてSBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券、イオン銀行の5金融機関を紹介しています。いずれも運営管理手数料が無条件で無料となり、商品ラインアップも低コストなインデックスファンドがそろっているからです。その中で私自身はSBI証券のiDeCoプランに加入しているわけですが、じつはこれもサービスの持続性という観点から選んでいる面があります。あまり注視されませんが、SBI証券はiDeCo事業では最古参の1社であり、加入者数から見ても業界最大手の一角です。しかもレコードキーピング(記録管理業務)もグループ会社であるSBIベネフィット・システムズで内製化しています。このためSBIグループにとってiDeCo事業から撤退するという選択肢はあり得ないでしょう。もしそんなことになれば、グループ会社1社を潰してしまうことになるからです。
これからiDeCoへの加入を検討している人も、こうしたサービスの持続性という観点も頭の隅にでも入れた上で金融機関を選ぶことがますます必要になってくるのでしょう。
【関連記事】
SBI証券のiDeCo新プラン「セレクトプラン」は最強ラインアップ―では既存プラン加入者はどうする?
【ご参考】
iDeCoは金融機関によって手数料や商品ラインアップが異なります。現在、iDeCoプランの選択肢としてお薦めなのは運営管理手数料が無条件無料で低コストインデックスファンドをそろえるSBI証券、楽天証券、マネックス証券、イオン銀行、松井証券です(SBI証券は11月1日から新プランの受付も開始)。iDeCoへの加入を検討している人は、これら金融機関のプランを研究することをお勧めします。いずれもネットから無料で資料請求できます。⇒SBI証券確定拠出年金プラン、楽天証券確定拠出年金プラン、イオン銀行確定拠出年金プラン、マネックス証券確定拠出年金プラン、松井証券確定拠出年金プラン