2024年3月24日

個人金融資産が過去最高を更新する裏側で進む深刻な二極化

 

日銀の資金循環統計によると、2023年12月末段階での日本の個人金融資産残高は2141兆円(前年比5.1%増)となり、過去最高を更新しました。近年の株価上昇が個人の金融資産を大きく押し上げています。その一方で、深刻な二極化が進んでいることもうかがえます。なんとも恐ろしい時代になったと思います。

年間ベースで見ると、資金流入が11兆円あったほか、株価上昇による時価変動の影響で93兆円増(うち国内株式等が65兆円増、投資信託が15兆円増)となり、残高を大きく押し上げています。これに対してニッセイ基礎研究所が簡潔なまとめを発表していますが、そこには深刻な問題も指摘されていました。


個人金融資産残高が過去最高を更新する裏側で、物価上昇による実質賃金の低下で2023年10~12月は家計部門が2.3兆円の資金不足となり、貯蓄率が低下しています。つまり、家計部門は資金不足に陥っているのです。言い換えると、株式や投資信託を保有している人と、そうでない人の間の経済格差が急速に拡大していることを意味します。きちんと資産形成・運用をしている人はどんどん資産が増える一方、そうでない人はどんどん生活が苦しくなっているわけです。

これは個人的な実感とも一致します。我が家の家計を見ても、最近のインフレで支出は大幅に増えているのですが、給与所得はそれほど増えていません。普通ならかなり生活が苦しくなるはずなのですが、実際はまったくそんな感じがない。なぜなら、保有している個別株や投信の値上がりによって資産自体は過去最高を更新し続けているからです。また、個別株からは配当収入があり、これも増加しているのでキャッシュフローの面でも実質賃金の低下を補ってくれています。

もし我が家が株式や投信による資産形成・運用をしていなかったらと考えると、それこそゾッとします。きっとかなりの困窮感を抱いたことでしょう。娘のために使うお金も節約しなければならくななっていたかもしれません。そもそも資産形成・運用というのはインフレによる実質的な購買力の低下への備えとして行うものというのが基本なのですが、本当にインフレになって、その意味を日本人はまざまざと見せつけられることになったわけです。

日本もデフレが終わり、インフレ経済に突入したことで資産形成・運用をきちんとしている人と、そうでない人との格差が広がるという二極化が急速に進むことになります。それはある意味で恐ろしい時代になったということです。なにも考えず、なにも行動しない人は、どんどんと貧しくなる時代になったということだからです。その意味で、まさに自分と家族を守るために本気でお金の問題に真摯に向き合わなければならない時代になったのだと改めて感じたのでした。

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