フィデリティ・インスティチュートが実施している投資行動・意識調査「ビジネスパーソン1万人アンケート」の結果がアップされていました。
フィデリティ・ビジネスパーソン1万人アンケート(フィデリティ・インスティチュート)
あいかわらず面白い結果が出ています。とくに驚いたのは、投資をしている人の割合が54%となったことです。いまやビジネスパーソンの半分以上が、何らかの投資をしている時代になっているのです。また、公的年金に関する質問の回答からも興味深い傾向が示唆されています。
今回の結果によると、投資をしている人の割合は54%となり、2020年の前回調査から13.5ポイントも上昇しています。要因として考えられるのが、やはり新型コロナウイルス禍。投資を始めた人の理由でいちばん多いのは「時間ができたので投資の知識が増えた」(43%)ですが、「収入減等で投資の重要性に気づいた」(31%)が2番目に挙がっています。新型コロナ禍で労働収入による一本足打法のリスクに気づいた人が多かったということでしょう。いずれにしてもビジネスパーソンの半分以上が投資するようになっているというのは、ひとつの時代の変化を示しているのかもしれません。
また、お金に関する情報の入手経路は、「SNS、ブログ、YouTubeなど」が29%となり、「TVの情報番組、コマーシャル」(25%)を抜いて初めてトップとなりました。とくに若年層はこの傾向が顕著です。一方、年収の高い人は雑誌、新聞、金融機関、FPなどを引き続き情報源にしています。たしかに「SNS、ブログ、YouTubeなど」ネット経由の情報は玉石混淆なので、そればかりに依存するのは危険です。その点、さすが年収の高い人はバランスの取れた情報収集ができているという身も蓋もない現実が示されていると思います。
何に投資しているのかをみると、やはり日本の個別株が53%とトップですが、これは長期減少傾向が続いています。一方、外国株に投資する投資信託は38%となり、人気上昇中。これも大きなトレンド変化を示しているでしょう。さらに運用商品選定の基準として「手数料の安さ」が47%でトップ。やはり、投資家の意識が確実に変わりつつあることを示しています。
投資をする目的は、「老後の資金形成」(40%)が安定して1位ですが、「預貯金だけではインフレに勝てない」(9%)も今年になってから上昇しているのが興味深い。そもそも資産形成としての投資というのはインフレ対策が大きな目的ですが、実際に最近の世界的なインフレ傾向を目の当たりにして、当たり前にことにようやく気づく人が増えているわけです。
アンケートでは公的年金と老後資金の準備についての質問も用意されているのですが、この回答結果が面白い。「老後資金の財源として考えているもの(最大5つまで)」という質問に対して「公的年金」という答えが男性76%、女性77%とトップ。では、公的年金を老後資金の財源と考えていない人に公的年金についての理解度を質問すると、男性の約60%、女性の約70%が「あまり理解していない」もしくは「まったく理解していない」と回答しています。つまり「公的年金の理解が進んでいない人ほど、老後資金の財源として考えていない傾向」があるわけです。つまり、公的年金について理解している人は、それなりに公的年金を信用していて、理解していないひとほど公的年金を信用していない。これは、日本の公的年金に関する世論のあり方の問題をよく示しています。
今回のアンケートではウェルビーイング(幸福、充実していると感じられる状態)に関する質問も用意されています。ウェルビーイングの構成要素を「健康」「生活」「仕事」「お金」という4つの切り口で分析しているのですが、その中で「経済的に安定していないと幸せではない」と「私の幸せは経済状況には左右されない」で二者択一で質問したところ、80%が「経済的に安定していないと幸せではない」を選んでいます。ちなみに2020年のデータですが海外の結果が載っており、これによると「経済的に安定していないと幸せではない」を選ぶ割合は英国45%、ドイツ45%、カナダ44%、香港77%、中国38%。日本人の幸福度にお金が与える影響が色濃いという、これまた身も蓋もない結果が示されました。
そのほかにも面白いデータがたくさんあります。例えば「年収と家計を把握していない人との相関」。家計の状態が分からない人ほど年収が低いという結果が出ていて、これまた身も蓋もない分析です。もちろん、調査はあくまでアンケートですから統計学的な裏付けは十分ではありません。しかし、ひとつの傾向を探るには有効です。じっくりと眺めているだけで、いろいろなことに気づきます。関心のある方は、一見の価値があるでしょう。