最近の株価上昇で日経平均株価も29年ぶりに2万6000円台を回復しています。とはいえ最高値を付けた1989年12月29日の38,915円には程遠く、日本株の“失われた30年”はまだ続いているように見えます。ところが興味深いとことに、日経平均株価の配当込み指数である日経平均トータルリターンインデックスを見ると、2020年11月25日に43,404円となり、約31年ぶりに史上最高値を更新していました。
一般的に知られる日経平均株価は配当を含まない指数なのでうっかりしがちなのですが、実際の株式投資では配当によるリターンは小さなものではありません。とくに配当金収入が再投資される無分配型の投資信託などでは、長期になればなるほど再投資による複利効果もあって極めて大きなものになります。
その結果が、日経平均トータルリターンインデックスによるバブル越えという事実です。配当金再投資を考慮すると、日本株の“失われた30年”は名実ともに終わっていたわけです。しかも、こうした状況には日本株だけではありません。全世界株、先進国株、米国株、そして新興国株いずれも「配当込み」が月末ベースでは2020年11月が史上最高値となっています。新興国株は「配当除く」指数で依然として最高値を下回っているので気づきにくいのですが、やはり“新興国オワコン論”も実際は終わっているのかもしれません。
そしてもう一つ、モーニングスターの記事を読んで気づかされたことがあります。記事に載っている日経平均と日経平均トータルリターンインデックスの比較チャートを見てください。1990年代まで両者はそれほど大きな差にはなっていません。ところが2000年代に入ってから急激に差が広がっています。じつはこの頃から日本企業の配当政策が劇的に変わっているのです。昔に比べて圧倒的に配当を出すことを重視するようになりました。つまり、少しずつですが配当政策が国際水準に近づいていったわけです。
こうした流れは今後も一段と強まるでしょう。そうなると、「配当除く」と「配当込み」指数の差はさらに広がっていくはずです。今後ますます“配当の威力”が大きくなるわけです。それは言い換えると、長期投資の優位性が一段と高まるということです。そもそも日本で“株式投資=売買で利ざやを稼ぐ”というイメージができたのは、配当が低水準だったために長期にわたって配当をもらうよりも短期売買で利ざやを稼ぐ方が合理的だったからです。しかし、そうした認識も今後徐々に変わっていくのでは。“株式投資=長期保有で配当をたくさんもらう”という認識が一般化していくのかもしれません。それは日本の投資文化が、もう一段高いレベルに進むことのように思えます。