コツコツ投資家の間で根強い人気があるセゾン投資。今年で運用開始10周年らしいですね。10年で口座数12万口座、2ファンドによる運用資産総額が1700億円に達するというのは独立系投信会社としては凄いことです。
セゾン投信の顧客口座数が12万口座を突破しました!(セゾン投信)
文字通り「長期投資」を受益者とともに歩んできたわけですが、なぜこれほどまでにセゾン投信が支持されているのでしょうか。私は受益者ではないので、あまり偉そうなことは言えないのですが、ようやくセゾン投信の“強さ”の秘密について気付いたことがありました。
セゾン投信が運用する「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」はバンガードのミーチュアルファンドにファンド・オブ・ファンズ(FoF)形式で投資することで、1本で世界の株式と債券に分散投資できるパッシブ運用のバランスファンドです。また「セゾン資産形成の達人ファンド」は、やはりFoF形式で有望なアクティブファンドに分散投資するファンドです。いずれも登場したときは比較的低コストで長期・国際分散投資を簡単にできる画期的な商品でした。
それから10年を経て、いまも純資産の成長が続いているというのは、やはりすごいことです。インデックスファンドによる最近の低コスト化の中にあっては、コスト面での競争力こそやや劣りますが、それでも根強い人気が続いています。なぜこれほど根強い人気があるのでしょうか。この点に関して非常に興味深いレポートをブロガー仲間のくは72さんが書いてくれました。
セゾン投信 第10期運用報告会@大阪に参加してきました(4+4=6でもない。8はパーなのだ。)
特に注目したのは、次の部分です。
報告会終了後に、250名分の机と椅子の片づけをセゾン投信側でする必要がありました.別に誰に手伝ってほしいと言われてもいないのに、馴染みの受益者たちで協力してあっという間に片付け完了!運用会社の人間と受益者が、誰から頼まれたわけでもないのに自然と会場の後片付けを一緒になってやる! これこそがセゾン投信の“強さ”の秘密だと確信しました。つまり、セゾン投信にとって運用会社と受益者の関係は、たんなる契約に基づく関係性を超えているのです。
こういう受益者と会社との距離感が直販らしいなと感じました.
こういった関係性が出来上がるまでには、恐らくセゾン投資からの膨大な情報公開と受益者との対話があったはずです。それを10年間続けてきたことで、いまやセゾン投信と受益者は、単なる利害関係を超えた信頼関係で結ばれている。ここまで強固なリレーションシップを受益者との間で構築しているセゾン投信というのは、ある意味で運用会社の理想形ではないでしょうか。
こういったことを考えると少しばかりコスト面で競争力が低下したところでセゾン投信の人気に陰りが出るはずがない。それに、そもそもセゾン投信の信託報酬は決してボッタクリではありません。例えば「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」の実質的な信託報酬は0.69%±0.03%(税込)ですが、これはFoFという仕組みから投資対象ファンドのコストが含まれるからです。バンガードの取り分を除くと信託報酬は年0.5076%。あれだけの情報提供と対話があるのですから、極めて良心的な水準でしょう。少なくとも受益者の多くはコストに合理性があると判断しているはずです。
それにFoFでもコストを引き下げる方法は存在します。例えば投資対象を現在のバンガードのミーチュアルファンドから同じくバンガードのETFに切り替えることで0.1%程度は信託報酬を引き下げることができるでしょう。恐らくそういったことはセゾン投信でも十分に研究していることだと思いますから、実は将来的にコスト引き下げの可能性に対する楽しみもあるのです。
いずれにしても、これだけ運用会社と受益者が信頼し合っている姿というのは、なんとも羨ましいかぎりです。私ですら、いまさらながら少しセゾン投信のファンドを買おうかなと思ってしまうくらい。
運用開始から10年ということは、セゾン投信が目指す「長期投資」の第1段階をクリアしたということです。はたしてセゾン投信が次の20年、30年に向けてどのように成長していくのか。受益者ではない私から見ても楽しみです。なぜなら、セゾン投信のような運用会社が支持されるということそれ自体が、日本の運用業界にとって必ずプラスの波及効果を生むはずだからです。
【追記】
3月11日からセゾン投信の2ファンドの信託報酬が引き下げられました。
セゾン投信が2ファンドの信託報酬を引き下げ―これは運用会社と受益者の共同作業の成果だ
【ご参考】
セゾン投信のファンドを直販で買う場合、ネットから無料で口座を開設することができます。また、セゾン投信の2ファンドは、ゆうちょ銀行で買うこともできるほか、楽天証券の個人型確定拠出年金(iDeCo)プランにもラインアップされています。
⇒セゾン投信、楽天証券確定拠出年金プラン
セゾン投信が2ファンドをゆうちょ銀行でも販売へ―販売会社での販売を開放する狙いは何だろうか
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