ときどきツイッターで交流させていただいているフクリさんのブログ「フクリの海外ETF長期投資ブログ」を読んでいたら、とても納得する内容に出会いました。
バンガードの投資のヒントでも節約を推奨しています。 (フクリの海外ETF長期投資ブログ)
バンガードの2017年のための投資のヒントを紹介しているのですが、ここで紹介されている4つの提案は、すべてが投資の常識論に基づいていて、まったく奇をてらったところがないのがさすがなのです。そんな中でフクリさんは節約を推奨しているところに注目しているわけですが、私も二つ目の提案「より多く貯めて投資する。」の部分を読んでとても納得した次第。とくに、どの程度の資金を投資に回すべきかという問題に対して、極めて常識的な提案をしているところが、さすがバンガードだと思ったのです。
バンガードの提案の二つ目「より多く貯めて投資する。」には、次のように記述があります。
私たちは定年後のために所得(確定拠出年金などによる拠出を含めて)の12%から15%を投資することを推奨します。
定年後のための資産形成にバンガードが推奨しているのは所得の12%から15%。これがきわめて常識的だと感心しました。例えば毎月の手取りが20万円の人なら、投資に回す資金は2万4000円から3万円ということ。そうなんですよ! 普通の庶民が投資に回す資金としては月2万円から3万円で十分なんです。逆に、それ以上の資金を回そうとすると、かえって生活がしんどくなるのでは。節約も大事だけれども、過剰な節約はQOLが低下する。その方がよほど問題だと思う。
投資ブログなんかを読んでいると、とにかくできるだけたくさんの資金を投資に回さなければならないかのような錯覚に陥ることがあるのですが、やっぱり無理しすぎはよくない。それに、日本では投資どころか貯蓄もない家庭が少なくないわけですから、月2万円から3万円を投資に回せるだけでも、老後準備という意味ではトップ集団を走っていることになるはずです。
月2万~3万円程度でどうなるものかという見方もありますが、塵も積もればで、たっぷりと時間をかければその資産は育つはず。例えば3万円でも年利3%で複利運用できれば、「72の法則」で24年後には6万円になっています。つまり、いま3万円を投資に回すというのは、24年後に6万円の購買力を確保することが目的だと考えればいい。
これはどういうことか。例えば月の手取りが20万円の人が毎月3万円を投資に回すとする。その人は現役時代、17万円の購買力で生活することになります。それから24年後、定年退職して月20万円の収入はなくなったけれども、公的年金の所得代替率が50%とすれば、だいたい月10万円ぐらいの年金がもらえる。そこで24年前に投資に回した3万円が6万円になっているので、これを取り崩せば16万円です。あとは融通の利く範囲でバイトなんかして1万円を稼げば、リタイア後の購買力も17万円。現役時代の購買力を維持できたことになります(単純にモデル化するために収入の増加やインフレといった要素は捨象しました)。
こう考えると、バンガードが提唱する「所得(確定拠出年金などによる拠出を含めて)の12%から15%を投資する」ということが、じつに合理的な見通しのもとになされているということがわかります。だから普通の庶民が投資するなら、月2万~3万円からで十分だということもわかります。それよりも大事なのは、毎月所得の12%~15%を余剰資金として捻出できるだけの筋肉質な家計を作ることなのでしょう。
ちなみに、庶民が投資に回せる金額が2万~3万円だとすると、個人型確定拠出年金(iDeCo)の月額掛金2万3000円とか、2018年から始まる予定の積立NISAの限度額40万円(月額だと約3万3000円)というのは、じつに絶妙な金額だと思う。やっぱり国は、まず庶民の老後資産のための優遇税制を用意しているわけです。言い換えると、毎月何十万円も投資に回すことのできるようなお金持ちに対して、国は何ら税制上の優遇措置を取る必要を認めていないとも言えます。それはあたり前の話で、そもそも優遇税制というのは所得再分配のための制度だからです。