年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2021年度第1四半期(4~6月)運用状況が発表されましたので定例ウオッチです。4~6月の期間収益率は+2.68%、帳簿上の運用益は+4兆9819億円でした。市場運用開始来の収益率は年率+3.70%となり、運用資産額は191兆6189億円と四半期ベースで過去最高を更新しました。
2021年度第1四半期運用状況(速報)(GPIF)
引き続き安定した運用が続いています。2001年の市場運用開始以来、累積収益額は100兆3182億円となり、ついに100兆円を超えました。改めてGPIFが実践している長期・国際分散投資の威力を見せています。
2021年4~6月は新型コロナウイルスのワクチン接種が欧米中心に拡大し、経済活動正常化への期待が高まったことや、主要国の金融緩和政策が継続したことで外国株式市場が上昇しています。一方、国内は感染拡大への警戒感が強まり、株価も小幅に下落しました。このためGPIFのポートフォリオの資産別収益率は、外国株式が+8.62と牽引し、国内株式は-0.25%となっています。債券も外国債券の+1.87%に対して国内債券は+0.47%でした。
それにしてもGPIFが2001年度から市場運用を開始して以来、ここまで積み上げた累積収益額が100兆円超えというのは凄い数字です。現在の運用総額が191兆円強ですから、途中の資金出入があるにしても、約20年で資産を倍増したことになります。まさに長期での国際分散投資の成果だと言えるでしょう。
こうしたGPIFの運用で注目すべきは、まったく特別な運用をしていないという点です。外国株式、外国債券、国内株式、国内債券という伝統的な資産カテゴリーを一定比率で保有し、機械的にリバランスを続けることで基本資産配分を維持し、リスク量も一定に保っているだけ。しかも運用の大部分はインデックス投資です。つまり、だれでもできる極めて凡庸(に見える)手法を愚直に続けてきた。その結果が100兆円以上の収益を生み出しました。
しかし、このように一切の奇をてらわない手法こそが、本物の達人のやり方なのです。将棋でも本当に強い人は“鬼手”など狙いません。勝負所でジッと歩を突いたり、金を玉に寄せたりと、一見するとぼんやりした手を指しながら、じつはそれが本筋だったということが後で分かるものです。
そういった本筋を愚直に続けていることがGPIFの運用の凄さでしょう。たまに「今の市場環境を考えればGPIFの運用成果は凡庸だ」などと言う人が出てきますが、凡庸な結果を長期で出し続けることの難しさというのは、凡庸な人には分からないものです。その意味でもGPIFのやり方というのは、個人投資家にとっても一つのお手本になることは間違いないでしょう。