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2018年2月6日

GPIFの2017年10~12月の運用成績は+3.92%―適切にリバランスが行われている



定例の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)ウオッチです。最近は運用が好調なためか一般メディアで取り上げられることもほとんどなくなりました。まったくいい加減なものです。なので、このブログでは意地でもこの企画は続けます。さて、2017年度第3四半期(10~12月)の期間収益率は+3.92%、帳簿上の運用益は+6兆549億円、市場運用開始来の収益率は年率+3.39%となりました。これにより運用資産額は162兆6723億円となります。

平成29年度第3四半期運用状況(GPIF)

国内外の好調な相場環境を受け、これで四半期ベースで6期連続でのプラスリターンとなりました。今回、とくに感じたのはポートフォリオの管理が見事に実行されているということです。

2017年10~12月の運用状況ですが、第2四半期から続けて世界的に好調な市場環境が続いたことで、国内債券、外国債券、国内株式、外国株式すべての資産カテゴリーでリターンはプラスでした。とくに国内株式が+8.68%、外国株式が+5.65%と大きなプラスリターンを叩き出し、収益を牽引しています。髙橋則広理事長は次のようにコメントしています。
2017(平成29)年度第3四半期(10月~12月)は、内外の良好な経済環境や好調な企業業績を受けた世界的な株高基調が継続するとともに、為替市場は安定的に推移しました。このような良好な投資環境が続いたことから、内外債券、内外株式の4資産すべての収益がプラスとなり、運用資産全体の運用実績はプラス3.92%となりました。
資産構成割合を見ると12月末段階で国内債券が27.67%となり、第2四半期から更に低下しました。GPIFの基本ポートフォリオでは国内債券の割合は35±10%ですから、いよいよ下限に近づいています。しかし、いまだ国内債券を買い増してリバランスする気配がありません。やはりGPIFはマイナス利回りの国債を購入することを躊躇していると見るべきでしょう。債券投資というのは基本的に金利への投資ですから、マイナス利回りの債券を購入しないというのは、それはそれでひとつの見識でもあります。

それよりも注目は国内株式の保有動向です。絶対額や構成割合は増加していますが、詳細に見ると、一部売却したようです。この点に関してはロイターの記事が丁寧にまとめてくれています。

GPIF、日本株売却500億円超=17年10―12月期運用実績(ロイター)

ロイターによると、国内株式は520億円の売り越し。さらに国内債券も8700億円の売り越しでした。逆に外国債券は2350億円、外国株式は950億円の買い越しでした。ここからもGPIFは現段階ではできるだけ国内債券のウエートを抑えようとしていることが分かります。マイナス金利というのは債券価格が極めて高騰した状態ですから、今後の債券価格下落(=金利上昇)のリスクをできるだけ抑えようという戦略でしょう。

そして国内株式は10~12月に8%を超える上昇となったわけですから、明らかにオーバーウエートとなったのでしょう。そこで500億円以上を売却し、結果的に好調だった国内株式を一部利益確定したことになります。そして国内債券売却による資金と合わせて外国債券と外国株式を買い増した。つまり、しっかりとリバランスができており、それによってポートフォリオ全体の資産構成割合は9月末と比較して大きな変化はないようになっている。このあたりの調整は、さすがグローバルポートフォリオによる国際分散投資のお手本のような見事なオペレーションです。

さて、2017年12月までは好調な運用となったGPIFですが、ここにきて相場は風雲急を告げてきました。米国の長期金利が上昇し、それが世界的な株安に波及しそうな気配です。恐らく17年度第4四半期(18年1~3月)は厳しい投資環境になりそうな気配。ただ、GPIFのポートフォリオ構成を見ると、短期資金(現金など)が7%ほどあります。つまり、まだ弾はあるということ。ここはじっくりと腰を据えて、いずれ値下がりした資産を買い増していく好機かもしれません。とにかくしっかりと基本ポートフォリオの資産配分を維持することに努めればいいのです。

GPIFの運用というのはインデックス投資や国際分散投資のお手本のようなオペレーションが行われています。なので今年から「つみたてNISA」などでインデックス投資や国際分散投資を始めたばかり人は、GPIFの資産配分やオペレーションをじっくりと研究してみてください。「なるほど」と感じることが多々あって、きっと参考になることでしょう。

【ご参考】
GPIFのYouTube公式チャンネルに運用状況の説明と記者会見の動画がアップされています。これも参考になるでしょう。





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