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2017年11月25日
見事なハンドリングで参考指数をアウトパフォーム―ひふみ投信の第9期運用成績
私がサテライトポートフォリオで保有している数少ないアクティブファンドである「ひふみ投信」の第9期(2016年10月1日~2017年10月2日)運用報告書が交付されましたのでチェックしたいと思います。「ひふみ投信」の騰落率は+37.4%、参考指数であるTOPIX(配当込み)は+29.2%でした。分配金は当期も無しです。好調な相場環境の中で「ひふみ投信」は参考指数を大きく上回る素晴らしい成績となりました。当期は運用にとって、いろいろと難しい局面もあったのですが、見事なハンドリングで参考指数に対してアウトパフォームを叩き出したと言えそうです。
運用報告書では当期を相場のキャラクター変化から第Ⅰ期(2016年10月~12月)と第Ⅱ期(2017年1月~10月2日)に分けて分析しています。第Ⅰ期は、いわゆる「トランプ相場」で世界同時株高となり、TOPIXも急上昇します。ただ、TOPIXの上昇を牽引したのが大型バリュー株だったのに対し、「ひふみ投信」の保有銘柄は中小型グロース株のウエートが高く、相場に追随するためにポートフォリオを組み替えたものの、その規模が足りませんでした。このため第Ⅰ期はTOPIX(配当含む)の騰落率が+15.0%だったのに対して「ひふみ投信」の騰落率は+8.3%にとどまり、参考指数に劣後しました。
しかし、「トランプ相場」がひと段落すれば、再び相場全体が上昇するのではなく「良い会社が買われ、悪い会社が売られる」という選別相場となるとの読みから、好調が予想される半導体関連への投資継続、地味に成長する企業群への投資、地政学リスクの影響が少ない銘柄への投資という戦略によるポートフォリオを維持しました。これが第Ⅱ期に入って奏功します。案の定、トランプ政権の政策への評価、シリア情勢や北朝鮮問題など地政学リスクの顕在化などもあってTOPIXも上値の重い展開が続きます。そうし中で「ひふみ投信」はジワジワと参考指数をアウトパフォームしていき、9月に入ってからは衆議院選挙での自民党大勝を受けての株価上昇も追い風に一気にTOPIXを引き離した形です。このため第Ⅱ期はTOPIX(配当含む)の騰落率が+12.4%に対して、「ひふみ投信」の騰落率は+26.9%と素晴らしい成績に。これで通年成績も勝負ありとなりました。
最終的に素晴らしい運用成績となったわけですが、それ以上に期中での運用プロセスが素晴らしかったというのが私の印象です。「ひふみ投信」は16年2月にテレビ番組で取り上げられたことで注目度が一気に高まり、急激な資金流入が続きます。当期末の純資産残高は868億4400万円、「ひふみプラス」と「ひふみ年金」を加えた「ひふみマザーファンド」の純資産残高は3888億9500万円に達しました。ここまで運用金額が急増すると流動性の問題から「ひふみ投信」が得意とする中小型株への投資が難しくなる。通常、大型株を大きく組み入れざるを得なくなり、結果的にインデックスに類似したポートフォリオになってしまうというのが日本株アクティブファンドの宿命でした。これに対して「ひふみ投信」は期中で一時的に相場環境が悪化した際に無理に株の買い増しを行わず、高い現金比率を維持する局面が何度かありました。そして日本の大型株ではなく米国株(マイクロソフトとアマゾン)に投資するというユニークな戦略も採用した。結果的にこうした試みが成功しています。その意味で、資金とポートフォリオ構築でのハンドリングが実に見事だった。改めて月次レポートも読みかえすと、まさに惚れ惚れするような手腕です。久しぶりに「アクティブ運用というのは、こうやるものだ」というのを見せてもらいました。
第9期も好調な結果となった「ひふみ投信」ですが、今後の運用方針については「世界経済が緩やかな回復局面を迎えていること」「設備の老朽化や明るい経済見通しから設備投資が増加する可能性が高いこと」「IoTが本格化し、センサーや半導体の需要が高まること」を挙げています。ここに日本企業にもチャンスがあるということ。はたして今後、どういった運用を見せてくれるのか、受益者の1人として楽しみです。
最後に「ひふみ投信」の実質コストを確認しておきます。第9期の費用明細は以下のようになりました。
信託報酬:1.064%
売買委託手数料:0.293%
その他(保管・監査・その他)費用:0.001%
実質コスト合計:1.358%
第8期の実質コスト合計は1.359%でしたから、ほぼ例年並みのコストとなりました。売買高比率は1.91と前期より若干低下しています。期末段階での保有銘柄数は185銘柄となり、期首の123銘柄から増加しています。
【ご参考】
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