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2017年8月16日
もはやギャグの域に達しようとするテーマ型投資信託
日本の投資信託業界のお家芸にテーマ型投資信託があります。手を変え品を変えて流行のテーマに基づくアクティブファンドが次々と登場してきました。最近では「バイオ」「ロボ」「AI」あたりが流行でしょうか。ただ、さすがにネタ枯れになってきたのか、思わず笑ってしまうようなテーマ型投信も登場しています。テーマ型投資信託は、もはやギャグの域に達しようとしているのかもしれません。【一部内容を追記しました】
テーマ型投信は日本だけでなく海外の運用会社も手掛けています。例えばピクテなんかは得意で、昔からよくバイオ関連銘柄のファンドなんかを運用しています。ただ、次から次へと新しいテーマが登場し、そのたびにファンドの新規設定が行われるという面では日本の投資信託業界が群を抜いています。これがまた販売会社の回転売買のツールに使われているものだから批判もされるわけです。
そういうユニークな日本の投資信託業界ですから、ときたまギャグみたいなことが起こります。最近では三井住友アセットマネジメントの「TPP戦略株式ファンド」が味わい深かった。「TPP(環太平洋経済連携協定)を含む経済連携協定等から恩恵を受けると判断した国(地域)および銘柄に投資を行います」として設定されましたが、トランプ大統領の登場で米国がTPPを離脱してしまう。それでファンドはどうなったか。
「TPP戦略株式ファンド」トランプ新大統領のTPP離脱表明について~TPPの発効は難しい状況に~(三井住友アセットマネジメント)
TPP戦略株式ファンドの繰上償還の決定について(同)
結局、繰上償還です。テーマが始まる前にファンドの運用の方が終わってしまうという珍しいケースとなりました。
しかし日本の投信業界はへこたれません。ついには、なかなか普通の人では思いつかないようなテーマを見つけてきます。例えば三菱UFJ国際投信の「ワールド・ビューティー・オープン」というファンドが7月31日に設定されました。目論見書によると「日本を含む世界各国のビューティー・ビジネス関連企業の株式を主要投資対象とします」とのこと。これは凄いと思いました。
何が凄いのかと言うと、例えばバイオやロボ、AIといったテーマは、現実は別として、それなりに将来の成長ストーリーをだれでも想像することがきます(そういう通俗性がテーマ型投信のキモですから)。しかし、ビューティー・ビジネスが成長するというストーリーは、なかなか普通の発想では思いつきません。このファンドを企画した人は、とてつもない天才か、とんでもないバカかと思ってしまった(いや、失礼)。それとも私が無知なだけですか? 最近、ビューティー・ビジネスって流行ってるの? 誰か教えてください。
ここまでくると、ほとんどギャクの領域です。ほんと、驚いたね。ちなみにこのファンド、販売手数料が3.24%以内、信託報酬は税抜1.64%です。コストだけは一人前ですから、この辺りは平凡なのです。
それにしても、ファンドを企画するにあたって運用会社の偉い人たちが「次はビューティー・ビジネスですよ!」と真面目に議論している姿を想像すると、それもまたギャグですね。ほんと、日本の投信業界の(闇の)奥はまだまだ深いと感じた次第です。
【追記】
この記事をアップした後に、実際にビューティービジネス業界で働いているという読者さんから丁寧なメッセージをいただきました。実際にビューティー・ビジネスの分野は成長が期待できるとの見方もあるそうです。とくに化粧品は中国人観光客の増加で世界的に売り上げ拡大が続いており、さらにアフリカなど未踏の大地も残されているとか。なるほど、たしかにそうですね。その意味では、「ワールド・ビューティー・オープン」の設定というのは、なかなか眼のつけどころが良いのかもしれません。
少しふざけた文章で揶揄が過ぎたと反省しました。私も別にテーマ型投資信託を全否定していません。それどころか、アクティブファンドのひとつの醍醐味でもあると思っています。ただ、日本の投信業界は次々と目新しいテーマ型投信を設定しては、回転売買の道具として使い捨てにしてきた歴史があります。それではせっかくのテーマ型投信も生きません。なので、三菱UFJ国際投信さんには、せっかく面白いテーマのファンドを設定したのだから、大事に育てていって欲しいと思うのです。