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2016年5月9日
仕組預金は仕組みがよく分からないので買いません
ゴールデンウィーク中のことなのですが、預金口座を持っている銀行から営業電話がかかってきました。なんでもマイナス金利で普通預金や定期預金の金利が低下しているので、より有利な利回りが期待できる商品を紹介したいとのことでした。ゴールデンウィーク中にもかかわらず電話セールスとは、銀行員さんも大変なんだなぁ。でもって紹介された商品のひとつが、仕組預金です。うーん、これは…。当然ながら、やんわりとお断りしました。だって、仕組預金は仕組みがよく分からないんだもん。自分が理解できないものには資金を投じないというのが金融商品の大原則です。
あえて名前は出しませんが、今回セールスを受けた銀行には生活防衛資金の一部と投資のための待機資金の一部を置いているので、定期預金と普通預金にある程度のまとまった額を預けています。それで電話がかかってきたのかもしれません。次のようなやり取りでした。
銀行員「いつも弊行の預金口座をご愛顧いただきありがとうございます」
私「いえいえ、いつもお世話になっています」
銀行員「今回、お電話差し上げたのは、マイナス金利で預金金利が非常に低くなっていますので、より大きな利回りが期待できる商品をご紹介させていただきたいと思いまして」
私「なるほど、なるほど」
銀行員「ちなみに現在、私どもがお預かりいたしております資金は、なにか決まった使い道がございますでしょうか」
私「いまのところは、とくに使い道は決まっていません」
銀行員「左様ですか。でしたら・・・」
ってな感じです。それで提案された商品のひとつが仕組み預金です。円建てですが外貨オプション取引を組み込んだものであり、特約為替レートを設定し、満期2日前に実勢為替レートが特約為替レートよりも円安になっていれば元本と利息が円貨で償還されます。逆に実勢為替レートが特約為替レートよりも円高になると、元本と利息は外貨で償還されるとか。ちなみに金利は預入期間と通貨選択、特約為替レートによって変わりますが、最大のものは年利換算10%を超えるとか。スゴイですね。でも、実勢為替レートが特約為替レートより円高になって外貨で償還された場合は、円換算では大体が元本割れになってしまう。
ここまで聞いてやんわりとお断りしました。なぜなら仕組みがよく分からないからです。この商品は恐らく為替オプション売りが組み込まれているのでしょう。そのプレミアム収入が高金利の原資になるわけです。しかし、オプション売りの特徴は相場が想定通りに動いた場合のリターンが限定される一方で目論見通りに動かなかったときの損失は無制限に負担しなければなりません。この仕組み預金の場合、外貨で満期償還されることで為替差損を無制限に預金者が負担することになります。
ここで私が言いたいのは、いま書いたような内容を理解していたとしても、それは仕組み預金の仕組みを「理解」したことにはならないということです。本当に仕組みを理解するというのは、この商品が提示しているリスクプレミアム(年利10%超)が、実際の為替リスクに対して適正かどうかを判断できるということです。そしてリスクプレミアムの算定には金融工学の計算モデルがあります。だから、きちんとリスクプレミアムを計算して、その値が適正ならこの商品は買う価値アリ。でも、私は素人なのでそんな計算はできません。つまり、仕組み預金の仕組みを理解できないということです。仕組みが理解できないのだから、理解できないものは買わないという判断になる。これは仕組み預金だけでなく、仕組債(EB債、ノックイン債)やオプション取引を組み込んだ2階建て・3階建て投資信託にもあてはまります。
しかし、マイナス金利をネタに銀行が本当に仕組み預金などを預金者に提案するとは、予想されていたことながら実際に自分が体験してみると不思議な感覚です。「ああ、銀行員さんも大変だなぁ。こんな休日に、恐らく本当は売りたくもない商品の電話セールスとは」と、同じサラリーマンとして同情を禁じ得なかった次第です。だから変に反論や批判なんかせず次のような会話で電話を終えました。
私「じつは、株式投資とかいろいろやってまして、おたくに預けている資金は待機資金でもあるので」
銀行員「左様ですか。ちなみに投資に関してはかなり情報収集されているのですか」
私「大したことないですが、それなりに勉強していますよ」
銀行員「(あ、察し)左様でございますか。でしたらホームページなどでお得なキャンペーン情報なども随時ご紹介させていただいておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました」
こんな感じで大人の対応をしました。いずれにしても、マイナス金利で銀行も収益環境が悪化していますから、ますますこういった事例は増えそうな予感。表面的な高金利につられて、よく理解できない金融商品を買っちゃう人も出てくるのでしょう。なかなか世知辛い世の中になったものです。でも、銀行として、本当にそれでいいのか、あらためて自問自答して欲しい気持ちでいっぱいです。