クレジットカードの決済ブランドといえば、VISA、Mastercard、AMEX、DinersClub、そしてJCBが5大ブランドとされています。このうち、JCB以外はすべてアメリカのブランドであり、非欧米圏の決済ブランドで国際化に成功したのは、JCBだけです。よくよく考えると、これってすごいことです。
JCBも初めから国際化していたわけではありません。当初は国内の加盟店だけで通用するカードだったわけですが、VISAやMastercardが本格的に日本に進出してくる中で、独自に国際化を進めた歴史があります。その過程はサムライカード、世界へ (文春新書)で詳しく紹介されています。
おりしも日本が高度経済成長を迎え、多くの日本人が海外に行くようになります。日本人がよく行くところで、とにかく加盟店を開拓するというシンプルだけれども徹底した戦略がJCBの国際化を可能にしたといえるでしょう。また、単なる決済機能だけではなく、各種特典やJCBラウンジの設置などかなりプレミアム感のあるサービスを提供したことも他の決済ブランドとは大きく異なります。
よく海外ではJCBが使えないといわれますが、日本人がたくさん来るようになると、急に使えるようになるわけで、JCBの加盟店戦略は相変わらず徹底しています。例えばインドネシアでは以前はJCBがほとんど使えませんでした。ところが数年前から急に使えるようになりました。地元の大手銀行と提携して現地での加盟店を急速に拡大しています。日本人がよく行くジャカルタの居酒屋やレストランではテーブルに「JCBカードなら10%OFF」とか書いたカードが置かれており、会計の際に店員から「JCBカード?」と聞かれ驚きました。近年、ビジネスの世界では“チャイナ・プラスワン”として生産拠点をインドネシアなどASEAN諸国に移す動きが加速し、インドネシアを訪れるビジネスマンの数は急速に増えています。それに合わせてJCBも大攻勢をかけている。逆にJCBがこれだけ攻勢をかけるということに、いかにインドネシアを訪れる日本人が増えているのかということを実感させられたりもします。
私もJCBカードは1枚保有していますが、日本人としてなんとなく愛着がわきます。よく日本の商品が“ガラパゴス化”しているといわれますが、そうやって悲観的になる暇があれば、ドン・キホーテのように世界に撃って出るべきなのです。JCBだって海外加盟店の開拓を開始したときは、他の日本のカード会社は無謀なことだと笑いました。でも、今では立派な国際決済ブランドです。最近では中国や東南アジア、中南米でもカードを発行しています。広く金融業界全体を見渡しても、国際的に流通する日本発の金融サービス(クレジットカードも広い意味で金融サービスです)はJCBカードぐらいでしょう。その意味でも、JCBって、じつはすごいんです。今後もぜひ頑張ってほしいものです。