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2019年7月10日

受益者還元型信託報酬はインデックスファンドの低コスト競争で必須の条件になる



三菱UFJ国際投信の超低コストインデックスファンド「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」の純資産残高がこのほど500億円を突破しました。「eMAXIS Slim」シリーズは純資産残高が500億円と1000億円を超えた部分に対して信託報酬がそれぞれ引き下げられる「受益者還元型信託報酬」を採用しています。この仕組みが遂に適用されました。

eMAXIS Slim 先進国株式インデックス~純資産残高500億円突破~現行の業界最低水準をさらに下回る信託報酬率を適用(三菱UFJ国際投信)

インデックスファンドの低コスト競争をリードしている「eMAXIS Slim」シリーズですが、受益者還元型信託報酬が実際に適用されたことで、その競争力がさらに強固なものになります。私は早くから受益者還元型信託報酬の重要性をこのブログでも指摘してきましたが、それが現実のもとのとなったわけです。今後、インデックスファンドの低コスト競争において受益者還元型信託報酬の導入は必須条件になるのではないでしょうか。

受益者還元型信託報酬は、純資産残高が一定規模を超えると、その超過分に対する信託報酬が低下する仕組みです。このため純資産残高が増加するほどの信託報酬が提言していきます。「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」の場合は、次のようなコスト体系となっています。



これまで「業界最低水準のコストを追求する」ことをコンセプトにインデックスファンドの低コスト化を牽引してきた「eMAXIS Slim」シリーズですが、今回の受益者還元型信託報酬適用によるコスト引き下げは、これまでの信託報酬引き下げとまったく意味が異なります。従来の信託報酬引き下げは競合ファンドへの対抗という営業戦略的側面が強かったのに対して、受益者還元型信託報酬適用によるコスト低下は、まさにファンドの成長によってもたらされた自律的な動きだからです。

私はこれまでも受益者還元型信託報酬の重要性を指摘してきました。そのことは「eMAXIS」シリーズが最初に受益者還元型信託報酬を導入した2016年、そして「eMAXIS Slim」シリーズが設定された2017年にもこのブログでも書きました。

三菱UFJ国際投信「eMAXIS」が受益者還元型信託報酬を導入―これはコスト構造の大改革だ
輝き始めた「受益者還元型信託報酬」―低コスト競争の次の焦点になるのでは

そこで私は、受益者還元型信託報酬によって「ファンドを受益者とともに育てる意識につながることです。ファンドの純資産が増加することは委託会社、受託会社、販売会社ともに利益の拡大につながるのですが、信託報酬が自動的に引き下げられる仕組みを導入することで、受益者にとっても利益となります。つまり、委託会社、受託会社、販売会社、受益者が純資産残高拡大に向けてウィン・ウィンの関係になる」と指摘しましたが、それが具体的な形で見えたわけです。それは受益者の利益を専らに考えるフィデューシャリー・デューティー(受託者責任)にかなうものであり、ファンドの本来あるべき姿を追求するためにも必要不可欠な仕組みです。

受益者還元型信託報酬の適用でインデックスファンドの低コスト競争において「eMAXIS Slim」シリーズの魅力は一段と増すことになります。こうなると、競合ファンドも無視できないでしょう。今後、インデックスファンドの低コスト競争において受益者還元型信託報酬の導入は必須の条件になるのではないでしょうか。現在、「eMAXIS Slim」シリーズのほかは、三井住友DSアセットマネジメントの「三井住友・DC」シリーズが受益者還元型信託報酬を採用していますが、ニッセイアセットマネジメントの「<購入・換金手数料なし>シリーズ」、アセットマネジメントOneの「たわらノーロード」、大和証券投資信託委託の「iFree」などは未採用です。これらシリーズが今後も低コスト競争の戦線に踏みとどまるためには、受益者還元型信託報酬の導入が絶対に必要だと指摘しておきたいと思います。

いまやインデックスファンドの競争において新規設定による低コスト化という戦略は有効性を失いました。いかに既存ファンドのコストを断続的に引き下げていくかが問われる時代に突入しているのです。その中においてファンドのサスティナビリティー(≒採算性)もいずれ問題になるでしょう。だからこそ、委託会社、受託会社、販売会社、そして受益者が利益を分け合いながら協働してコストを引き下げる「受益者還元型信託報酬」は、必要不可欠な仕組みなのです。

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