2019年12月24日

超低コストの全世界株式ETFとS&P500ETFが新規設定・上場―国内上場ETFの決定版か



既に一部報道がありましたが、三菱UFJ国際投信が国内上場ETF「MAXIS」シリーズから新たにMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(MSCI ACWI)に連動する全世界株式ETFとS&P500に連動する米国株式ETFを新規設定・上場すると発表しました。設定日はそれぞれ2020年1月8日、上場日は翌9日となります。

『MAXIS全世界株式(オール・カントリー)上場投信』設定・上場について(三菱UFJ国際投信)
『MAXIS米国株式(S&P500)上場投信』設定・上場について(同)

信託報酬は税抜0.078%以内(ただし、信託報酬以外に上場経費や指数商標使用料、その他費用などが若干発生します)という驚きの低コスト。国内上場ETFの決定版ともいえる商品が登場したと言えそうです。

報道では全世界株式ETFの新規設定が明らかになっていましたが、ふたを開けるとS&P500ETFまで登場したのには驚きました。近年、国際分散投資のバージョンとして米国株式への投資が急速に存在感を高めていますから、三菱UFJ国際投信としてもその流れに掉さしたということでしょう。

なにより最大の特徴は信託報酬の安さです。とくに「MAXIS全世界株式(オール・カントリー)上場投信」(銘柄コード:2559)は海外ETFと比較しても遜色のない低コスト。「MAXIS米国株式(S&P500)上場投信」(銘柄コード:2558)もS&P500に連動する国内上場ETFとしてはコスト最安値となります。こうしたことを考えると、国内上場ETFを使った国際分散投資を実践する場合、商品選択として「MAXIS」シリーズのETFは決定版となるかもしれません。

これは前回もブログで書きましたが、国際分散投資のツールとして通常のインデックス型投資信託が良いのか、ETFが良いのかは一概には言えません。あくまで好みの問題です。少額から定額積立しながら分配金も再投資するなら通常のインデックス型投資信託が理にかなっていますし、ある程度のまとまった金額を一括投資して定期的に分配金を受け取りたいならETFを使った方が便利です。

ただ、これまでETF投資のデメリットの一つとされていた売買手数料がかかる問題は、ここにきてネット証券を中心に売買手数料無料化の動きが加速しているためほぼ解決しています。また、海外ETFと比べて国内上場ETFは外貨調達の手間とコスト負担、さらに二重課税を避けるために確定申告で外国税控除の処理をする必要がないことも無視できません。こうしたことを考えると、今回の新ETF登場で、国内上場ETFへの再評価が始まるかもしれません。

ただし、ETFは公開市場で売買れているため流動性の関係で基準価額と実際の市場価格が乖離するケースがあるという問題があります。これを防ぐために東証がマーケットメイク制度を導入しており、一定の効果を上げています。このため「MAXSI」がどれだけ投資家の支持を集められるかは、マーケットメイク制度の対象となるかがカギを握ってるように思えます。

今回の三菱UFJ国際投信による超低コストETFの設定と上場は、日本における国際分散投資の環境を一段と好転させるトリガーになるでしょう。そうなると気になるのは他の運用会社の動き。ぜひ「MAXIS」に対抗する超低コストETFを打ち出して欲しいところです。なぜなら、米国でETFの低コスト化が急速に進んだ背景には、バンガード、ブラックロック、ステート・ストリートという大手3社による熾烈な競争があったからです。やはり健全な競争がなければ、商品のブラッシュアップは進まないのです。

【ご参考】
ETFについて解説した簡便な入門書としては東京証券取引所監修のムック本『ETF(上場投資信託)まるわかり! 超活用術2019』があります。ここ数年は毎年改訂版が発行されており、2019年版では私も少しだけコメントを寄せました(『ETF(上場投資信託)まるわかり! 超活用術2019 』に私のETF投資術が掲載されました)。ETFに関心がある人は参照してみてください。

ETF(上場投資信託)まるわかり! 超活用術2019 (日経ムック)

関連コンテンツ