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2019年6月11日
公的医療保険の高額療養費制度の威力は絶大だった
このほど胆石性胆嚢炎の治療で入院・手術したわけですが、どれくらい費用がかかったのかも気になるところでしょう。さすがに入院・手術となるとそれなりに医療費が大きくなってくるからです。そして、ここで効果を発揮するのが公的医療保険(健康保険や国民健康保険)の高額療養費制度。実際に自分が適用を受けてみて、その威力が絶大なのを実感します。
日本は国民皆保険となっているので、職域に応じて何らかの公的医療保険に入っています(私の場合は全国健康保険協会管掌健康保険、いわゆる「協会けんぽ」に加入)。このため基本的に70歳未満の人は実際にかかった医療費の3割を自己負担するだけで医療にアクセスできる素晴らしい制度となっています。
ところが入院・手術といった大掛かりな治療になると医療費の絶対額が大きくなりますから、3割の自己負担でも大きな金額になってしまう。するとお金のない人は治療が受けられなくなる。しかし、公的医療保険にはこの問題を解決するために凄い制度が用意されているのです。それが高額療養費制度です。所得に応じて1カ月の支払い額に上限が設けられ、それを超えた分は保険側が負担する仕組みとなっているのです。
高額療養費制度を利用される皆さまへ(厚生労働省)
しかも、いったんは3割負担分を支払って、あとから上限を超えた分の支給を保険に請求するだけでなく、事前に「健康保険限度額適用認定証」を交付してもらい、入院手続きの際などに医療機関に提出すれば、あとは医療機関と保険の間で勝手に手続きを進めてくれるので支払い段階では限度額までを支払うだけですみます。つまり、一時的に上限超過分を立て替える必要すらありません。私も入院・手術が決まってからすぐに会社の総務課に申請したところ、サクッと認定証をとってきてくれました(自分で健康保険事務所に申請しに行っても大丈夫です)。
実際に自分が適用となって実感したのですが、やはり高額療養費制度の威力は絶大でした。例えば私の場合、今回は4泊5日の入院で腹腔鏡による胆嚢摘出手術を受けました。かかった医療費は55万260円です。3割負担なら自己負担額は16万5070円(10円未満は切り捨て)。ところが高額療養制度が適用されると、私の場合は標準報酬月額が28万円~50万円の区分なので自己負担限度額は8万100円+(総医療費-26万7000円)×1%となり、今回の場合は8万2930円となります。これに食事代3680円と保険適用外の324円(尿道カテーテルを入れたときに着用したT字帯いわゆる“越中ふんどし”の代金です)を加えて、支払い総額は8万6934円ですみました(冒頭の領収書の写真参照)。
こうした公的医療保険の高額療養費制度を活用すれば、民間の医療保険に過度に頼る必要性は薄いということにも気づきます。貯金がなくて高額療養費制度の自己負担上限額すら用意できないような家計なら、民間の医療保険に加入することでいざという時のリスクに備えるというのは十分にありだと思いますが、逆にきちんと貯蓄ができている家計なら、民間の医療保険に過剰に入るのは不経済でしょう(ただし、個室に入院したりする際の差額ベッド代や先進医療の費用、入院中の交通費といった雑費などは公的医療保険の対象外ですから、こうした負担に備えるために民間の医療保険に加入するのは十分に検討の価値があります)。
それにしても本当に日本の公的医療保険制度というのは、世界に冠たる素晴らしい制度だと思います。保険料が高いと文句を言う人もいますが、これだけ充実した保障内容を実現しているのですから、現実的には安いものです。だからこそ国民は公的医療保険制度を守っていくために努力しなければならないとも感じました。実際に公的医療保険制度の財政は非常に厳しい。このままでは制度の維持が難しくなるとさえ指摘されています。だからこそ日本人は、制度を守るために全員が努力し、負担を分かち合うことが大切だと思います。
例えば現在、自己負担割合は70歳~75歳未満が2割、75歳以上は1割となっています。保険は相互扶助による共助の仕組みですから、やはり公平性の観点から等しく3割負担としても良いのではないか。あるいは、湿布薬や風邪薬といった緊急性や効果効能に疑問のある薬などは保険適用外としてもいいのではないでしょうか。目先の負担を忌避したばっかりに、本当のリスクに備える保険の機能が失われては本末転倒なのです。ここは大局的視点から、日本社会の“宝”である公的医療保険を維持するために、日本人全員が知恵を出し合うことが必要だと改めて感じます。
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