Jack Bogle's ideas on index funds revolutionized an industry. View a tribute to our founder's life & career: https://t.co/VMejWcBKXB pic.twitter.com/AdYLnV4lwO— Vanguard (@Vanguard_Group) 2019年1月17日
バンガードの創業者でインデックスファンドの生みの親ともいえるジョン・C.ボーグル氏が16日に死去した。89歳でした。まさに“巨星、墜つ”という感じです。いまや運用業界における一大潮流になったインデックス運用も、この一人のイノベーターによって生み出されたのですから。しかし、ボーグル氏が本当に偉大だったのは、革新的なアイデアの根底に常にある種の“常識”を置いていたことだと思います。その常識革命が時代を変えてしまったのです。
運用業界に“インデックス運用革命”とでも呼べるものを巻き起こしたボーグル氏ですが、彼の著書などを読むといつも印象に残るのが“常識(common sense)”という言葉です。彼の主著である『インデックス・ファンドの時代―アメリカにおける資産運用の新潮流』の原題は“Common Sense on Mutual Funds”だったし、そのエッセンスをまとめた『インデックス投資は勝者のゲーム──株式市場から確実な利益を得る常識的方法』の原題もまた“The Little Book of Common Sense Investing: The Only Way to Guarantee Your Fair Share of Stock Market Returns”でした。
投資の世界というのは情報の非対称性の大きな領域です。このため個人投資家の多くがプロの手助けを必要とします。そこに運用ビジネスの利益の源泉があるのですが、見方を変えると個人投資家は常にコストという形で負担を強いられてきた現実があります。そうした現実に対して、「そのコストに合理性があるのか」という“常識”の声を上げたのがボーグル氏だったのです。
また、運用会社と受益者は運命共同体であると同時に、常に利益相反の関係が内包されていることを注視していました。だから受益者が運用会社を所有するという相互会社のような仕組みのバンガードが誕生します。そこにあるのも「運用会社は受益者の利益を専らに考えなければならない」という常識に対して本気で向き合ったからにほかなりません。
いわばボーグル氏が追い求めてきたものは、個人投資家の常識を運用業界においてどのようにして取り戻すかということにだったのでしょう。そして、それを実現するために生み出された方法論とシステムがインデックスファンドによるパッシブ運用だったわけです。これにより個人投資家は初めて自分の常識の力だけで資産運用に取り組むことができるようになった。まさにボーグル氏が個人投資家にとって“ヒーロー”だった理由です。
いまや運用の世界でインデックスファンドによるパッシブ運用は一大潮流となりました。ボーグル氏の常識革命が運用の世界を変えてしまったのです。それはボーグル氏が『インデックス・ファンドの時代』の序文の中で紹介したトマス・ペインの『common sense』の役割を運用の世界で実現したことを意味します。
ボーグル氏が私たちに示した“常識(common sense)”の力は、運用業界において今後もますます大きなものになるに違いありません。偉大な先人への思いをはせながら、改めてボーグル氏の“常識(common sense)”の書を読み直してみようと思います。
合掌
『インデックス・ファンドの時代―アメリカにおける資産運用の新潮流』
『インデックス投資は勝者のゲーム──株式市場から確実な利益を得る常識的方法』
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