2019年1月20日

運用の安定感が高まる―「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」第5期運用報告書を読む



ニッセイアセットマネジメントの「<購入・換金手数料なし>シリーズ」のうち主要ファンドの運用報告書が交付されました。さっそく自分が保有している「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」の第5期(2017年11月21日~2018年11月20日 )運用報告書を読んでみました。現在、先進国株式インデックスファンドの中で最大の純資産残高となっており、このためマザーファンドも成長したことで運用の安定感が格段に高まっているというのが第一印象です。

「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」は、「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2018」でも第2位に入る人気ファンドです。低コストであるだけでなく、純資産残高の増加に合わせて断続的に信託報酬を引き下げることでファンド成長の利益を受益者に還元することや、最近では監査費用など信託報酬以外のコストも引き下げる努力を惜しまない姿勢が高い支持を集めており、純資産残高は1000億円を超えるなどETFを除く先進国株式インデックスファンドでは最大の規模を誇ります。第5期運用報告書によると、費用明細上の実質コストは以下のようになりました。

信託報酬    0.182%
売買委託手数料 0.005%
有価証券取引税 0.019%
その他費用   0.064%
合計      0.269%

当該期途中から信託報酬が引き下げられたことに加えて、そのほかのコストもすべて前期実績を下回ります。このため第5期の実質コストは0.269%となり、第4期の0.315%から0.046ポイント低下しました。なお、分配金はなしです。運用精度の面ではベンチマーク(MSCIコクサイ・インデックス(配当込み))騰落率が+1.7%に対してファンドの基準価額騰落率は+1.8%となりました。おおむねベンチマークに連動した運用ができたことになります。

第4期と比較すると第5期は実質コストが低下していますが、その要因はやはりファンドが成長したことです。「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」の純資産残高は第5期末段階で1018億円となり、前期末の684億円から大幅増加しています。さらにマザーファンドの純資産残高は当該年度末が1497億円となり、やはり前年度末の1056億円から大幅に増加しました。ファンドの成長にともない実質コストが低下し、運用精度も格段に向上しているという印象を受けます。

実際に費用明細を見ても、競合ファンドに比べてやや割高になっていた「その他費用」(保管費用など)が順調に低下しています。マザーファンドの規模が1500億円程度まで拡大したことで、運用の安定感も格段に高まっています。ほぼ巡行速度に達した考えてよさそうですから、今後も安定した運用が期待できるでしょう。受益者としても引き続き安心して保有と追加購入できます。今後もさらなるコストダウンと安定した運用を期待したいと思います。

さて、今回は昨年新たに設定された「<購入・換金手数料なし>ニッセイ新興国株式インデックスファンド」も第1期の決算を迎えました。信託報酬が資産カテゴリー最安値となる期待のファンドです。2017年10月13日~2018年11月20日までの変則決算のため、あくまで参考値ですが、こちらも確認しておきたいと思います。第1期運用報告書によると費用明細上の実質コストは以下のようになりました。

信託報酬    0.35%
売買委託手数料 0.174%
有価証券取引税 0.046%
その他費用   1.326%
合計      1.896%

非常に実質コストが高くなっています。このためベンチマーク(MSCIエマージング・マーケット・インデ ックス(配当込み、円換算ベース))騰落率-9.3%に対してファンドの騰落率は-11.2%と大きく下方乖離しました。これは「<購入・換金手数料なし>ニッセイ新興国株式インデックスファンド」が設定初年度であり、さらにマザーファンド自体も新規設定だったためと考えられます。もともと新興国への投資は現地の税制や資本規制の関係でコストが嵩みやすいのですが、それに加えてマザーファンドからの新規設定となるとファンド立ち上げの特殊事情や余計な初期費用がどうしても発生してしまいます(実際に費用明細上も「その他費用」が非常に大きくなっています)。

こうしたことを考えると、「<購入・換金手数料なし>ニッセイ新興国株式インデックスファンド」の第1期決算の内容に対して今の段階で評価するのは早計でしょう。これはすべてのファンドに当てはまることですが、設定初年度の決算内容というのは、あくまで参考値として見るべきです。まして「<購入・換金手数料なし>ニッセイ新興国株式インデックスファンド」の場合は決算期間も変則となっているのでなおさらです。

一方で「<購入・換金手数料なし>ニッセイ新興国株式インデックスファンド」の最大の課題は、やはりファンドをどのようにして大きくしていくのかということです。現在、ニッセイ新興国株式インデックスマザーファンドにぶら下がっているベビーファンドは「<購入・換金手数料なし>ニッセイ新興国株式インデックスファンド」のほかはいくつかのバランスファンドしかありませんから、やはり個人投資家向けの販売だけでは厳しいと思う。ここはニッセイAMが機関投資家に対する営業を頑張って、大口の適格機関投資家限定のベビーファンドなどを拡大する必要があるかもしれません。こうしたことも含めて、引き続き注目していきたいと思います。

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