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2024年10月13日

PayPayブランドは信用を失った―PayPayアセットマネジメントが事業停止へ

 

既に多くのブロガーさんの間で話題になっていますが、PayPayアセットマネジメント(PPAM)が2025年9月末を目途に事業を停止すると発表しました。


これにより、PPAMが運営している投資信託は、運営会社が変更されるか繰上償還となります。2021年にPayPayブランドを掲げる投信会社として再出発し、低コストなインデックスファンドを立て続けに設定してたのですが、それからわずか4年で事業を停止するとは無責任の批判を避けられないでしょう。これでPayPayブランドの金融事業はまったく信用を失ったと思います。

PPAMの発表によると、事業停止の理由は「主に個人投資家向けの投資信託及び機関投資家向けの運用商品を提供してきましたが、運用資産の拡大が計画通りには進まず、業績低迷が続いていました」とのこと。これによりPPAMが運用している投資信託は、親会社であるZフィナンシャルの合弁パートナーであるアセットマネジメントOneに変更されるか、繰上償還となります。

今回、非常に問題だと思うのは、PPAMの投資信託はいくつもNISA対象になっていることです。これが繰上償還されるとNISA口座で保有している受益者にとって非常に打撃が大きい。不本意なタイミングで損益確定を強いられる上に非課税枠は翌年1月まで復活しないからです。しかも復活するのは購入時の簿価ですから、実質的に非課税投資枠を無駄になることになります。これでは批判されて当然です。

PPMAは元々、アストマックス投信投資顧問(Yjam)だったものが2021年にPayPayのブランドを冠した社名に変更し、低コストなインデックスファンド「PayPay投信」シリーズを設定してきました。インデックスファンドは商品の性格上、長期運用が前提となります。しかもNISA対象ファンドになるということは、長期運用を求める個人投資家を対象とした商品であることを宣言しているのと同じはず。そういう方針を掲げながら、わずか4年ほどで事業を停止し、ファンドも繰上償還するというのは、あまりに無責任です。

もちろん運用会社といえども営利企業ですから、収益が低迷すれば事業から撤退するのは当然という理屈はあります。しかし、他人の資金を預かる金融業というのは、同時に受託者責任を負っているわけで、それゆえに簡単に撤退してはいけないのです。だからこそ当局の許認可事業として自由な新規参入が制限されており、いわば規制によって保護されているのですから。

今回のPPAM事業停止によって、「PayPay」ブランドの金融事業は信用を失いました。投信事業だけではありません。現在、PayPayブランドによる金融事業はPPAMのほか、PayPay証券、PayPay銀行、PayPay保険、PayPayカードがありますが、受託者責任に対して無責任な企業に大切なお金をゆだねる消費者・個人投資家がいるでしょうか。

また、金融当局からの信用も失ったことでしょう。とくにNISA関連での不始末は金融庁の面目を大いに潰したわけですから。今後、Zフィナンシャルが新規の金融サービスに参入しようと思っても、金融当局は容易に許認可しない可能性があります。そうなるとPayPayブランドの金融サービスの拡充は難しく、劣化していく可能性すらあります。

こうしたことを考えると、今回のPPAM事業撤退は日本の投信業界にひとつの大きな反省を促しています。それは「受託者責任を軽く見るな」ということです。近年、とくにインデックスファンドは新規参入が相次ぎ、それが歴史的な低コスト化を促すという好循環が生まれました。一方、新規参入が増加したことで競争が激化し、運用会社の収益を圧迫しているのも事実です。そんな中でNISA対象ファンドになるということは、受託者責任の面から安易な撤退は許されないはずです。だとするならば、本来は相当な覚悟を持った運用会社しかNISA対象となるようなインデックスファンドに参入してはいけないのです。運用会社には、そういう当たり前のことを改めて確認する機会として欲しいものです。

同時に、個人投資家にとってもひとつの心構えを再確認させられます。これだけインデックスファンドの競争が激化した以上、今後も受益者責任を全うできない運用会社が出てきてもおかしくないということです。今後、インデックスファンドはいよいよ淘汰の時代に入るのでは。だからこそ個人投資家は商品選択に際して、運用会社の姿勢というものを確認すると同時に、企業としての規模や体力をも考慮に入れた上で商品選択する必要が出てくるでしょう。

その結果として、実績のある大手運用会社のファンドが選ばれることになり、資産カテゴリーごとに2~3社の数本のファンドだけが生き残るという現象が起こるでしょうが、それは“規模の経済”が作用するインデックスファンドの性格上、仕方がないことなのです(実際、米国では既にそうなっています)。

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