2023年4月9日

インフレ時代の買い物は、欲しいと思った時が“買い時”―欧米製革靴の値上げがエゲツない

 

先日、ちょっと思うところがあってトリッカーズの短靴「バートン」を購入したという記事をアップしました(トリッカーズの「バートン」をちょっと思うところがあって購入)。今回は、その“思うところ”について書いておこうと思います。現在、世界的なインフレによってあらゆるものの値段が上がっているのですが、革靴も例外ではありません。とくに欧米製革靴の値上げがエゲツない。プライズレンジのカテゴリーが変わるぐらいのものが増えてきました。そこで改めて思ったのは、「インフレ時代の買い物は、欲しいと思った時が“買い時”」ということです。

私は2020年にトリッカーズのカントリーブーツ「ストウ」を購入したのですが、当時の価格は正規輸入品で8万円台でした。短靴の「バートン」は6万~7万円台だったと記憶しています。ところがその後、数度にわたる値上げが行われ、現在は「ストウ」が13万円台、「バートン」が12万円台です。

さすがに10万円を超えてくると、プライズレンジのカテゴリー自体が変わってしまいます。おまけに正規輸入品を扱っている店によると、今年中にもう一段の値上げがあるかもしれないとのこと。今度は15万円を超えてくるのではないかと言っていました。

驚くべき価格上昇ですが、これはトリッカーズに限りません。欧米製革靴全体が激しく値上がりしています。YouTubeで以下のような動画を見つけました。


これは私の実感とも一致します。先日、百貨店の革靴売り場を見ていたのですが、トリッカーズだけでなく、クロケット&ジョーンズやJMウェストンなどいずれも凄い値上げ。チャーチにいたってはルイヴィトンの傘下に入ったこともあり、ラグジュアリー戦略による意図的な価格引き上げもあるのでしょう。

なぜこれほど価格が上昇するのか。まず大前提として、本格革靴はここ20年でじわじわと値上がりしていたという事実があります。要因として、まず原材料である高級レザーの価格が上昇していることがあります。レザーには「なめし工程」が不可欠なのですが、環境負荷が高い工程のため、近年は加工能力を増やすことが難しい。つまり高級レザーの供給は構造的にタイト化しており、それが価格上昇につながります。また、人件費が上昇していることも大きな要因です。

これに今回の世界的なインフレで拍車がかかったということです。とくに欧米はインフレ率の高さを反映して人件費も激しく上昇しており、職人の手作業による工程が多い高級革靴・本格革靴ほどコストアップが大きく、大幅な値上げによる転嫁が避けられなくなっているわけです。

また、欧米メーカーほどではありませんは、日本の革靴メーカーもやはり同様の動きがあります。例えば日本製の本格革靴として高いコストパフォーマンスが評価されているリーガルの「DRCD」シリーズは、私が購入したころはプロパー価格が3万円台でした(DRCDシリーズは「リーガル」ブランドの最高傑作)。ところが、やはり昨年値上げされ4万円台になっています。

こうした状況を見ると、改めて感じるのが「インフレ時代の買い物は、欲しいと思った時が“買い時”」ということです。デフレ時代は「値下がりした時に買う」という購買戦略が有効でしたが、インフレ時代に突入すると、後で買えば買うほどお金がかかります。とくに本格革靴はしっかりとメンテナンスすれば長く愛用することができますから、早く手に入れれば入れるほど使用期間を含めたトータルランニングコストは安くなります。

だから、インフレ時代には、欲しいものはちょっと無理をしてでも購入すべきということになります。しかし、購買力には限りがあることも現実です。だからこそ“本当に欲しいモノ”そして“本当に良いモノ”を見極める力が求められるともいえるでしょう。今回、トリッカーズの「バートン」を購入したのも、そういった考えからでした。

トリッカーズを買うなら並行輸入品が狙い目


さて、以下はトリッカーズが気になった人へのちょっとしたアドバイスです。紹介したYouTubeの動画でも指摘しているように、トリッカーズは正規輸入品以外にネットショップなどで並行輸入品がかなり売られており、これが安い。カントリーブーツの「ストウ」なら5万円台、短靴の「バートン」なら4万円台で購入できます。

なぜ並行輸入品がこれほど安いのかというと、そもそも日本の正規輸入品の価格がおかしいのです。英国のトリッカーズ公式サイトを見ると、2023年4月時点で「ストウ」の本国でのプロパー価格は500ポンド台、「バートン」は400ポンド台です。1ポンド160円としてもストウが8万円台、バートンが7万円台です。しかも靴というのは在庫リスクが大きく、トリッカーズといえども定期的にセールをしており、英国の公式アウトレットでは「ストウ」が300ポンド台、「バートン」が200ポンド台で販売されています。

だから、値上げ前に仕入れた日本の並行輸入業者が5万~4万円で販売しても不自然ではありません。実際に私が購入しているのも並行輸入品です。値上げ前は「ストウ」でもセールなら3万円で購入できました。今回購入した「バートン」は4万円台です。正規輸入品と比べて、品質になんら問題もありません。また、革靴は比較的偽物を作りにくいアイテムです。

そして、これは大事なことですが、今後は並行輸入品も値上がりしていく可能性が高いということ。やはり、「欲しいと思った時が“買い時”なのです。ですから、ちょっとトリッカーズが気になった人は、まずは並行輸入品を試してみていかがでしょう(サイズ感が分からない人は、ちょっと申し訳ないですが、百貨店などで試し履きしてサイズを確認した上で、ネットで購入すればいいのです)。検索してみたところ、Amazonでもたくさん売られていますので、いくつかリンクを張っておきます。


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