2021年6月24日

確定拠出年金20周年、継続こそ力―現役世代の5人に1人が加入する時代に

 

日本で確定拠出年金制度(DC)が施行されたのは2001年10月ですから、今年はちょうど20周年の節目の年となります。企業型に加えて最近では個人型(iDeCo)も対象者が拡大されたことで確実に加入者を増やしています。制度創設当時は批判も大きかったDCですが、20年を経て一つの結果が出たのでは。それは、やはり年金運用は「継続こそ力」ということです。

iDeCoなどDCでの運用において継続することがいかに大切かということに関して、モーニングスターが面白いシミュレーションを紹介しています。


ここでは個人型DCであるiDeCoの加入対象が拡大された2017年1月から2021年5月末まで毎月1万円を日本株(日経225)と先進国株(MSCIコクサイ)それぞれのインデックスファンドに積立投資したらどうなったかを掲載しています。それによると、米中貿易摩擦などへの懸念で株価が大幅に下落した2018年5月や、“コロナ・ショック”が直撃した2020年3月などにはいずれも元本割れの状態となりました。

ところ、いずれのケースもその後の株価は順調に上昇し、最終的に2021年5月末段階では元本53万円に対して、「日経平均」が71.65万円(元本に対し+35.20%)、「外国株式」は76.76万円(+44.82%)になりました。大きな下落を複数回経験しながらも資産を増やしているのですから、まさに「継続こそ力」というわけです。

さらにDC制度がスタートした2001年10月から積立を続けているとどうなるか。2021年5月末までに元本236万円に対して「日経平均」は596.47万円(元本の2.52倍)、「外国株式」は670.09万円(同2.84倍)と、さらに大きな成果となっています。しかもこの間にはリーマン・ショックという歴史的な株価下落もありました。それでも運用を止めずに、積立を続けたことが成果につながっているのです。やはり「継続こそ力」ということになります。

制度創設から20年を経て、ようやく長期・分散・積立投資の有効性が具体的な形で見えるようになっていると言えるでしょう。これは非常に大きな意味があります。なぜなら、じつはDC制度は創設当初、従来の確定給付年金制度(DB)と比べて「個人に運用リスクを負わせるものだ」として非常に厳しい批判にさらされたからです。しかし、この点でも20年で一つの結果が出ています。

かつて主流だったDBの企業年金の多くは、その後の運用難によって予定利回りを達成できず、解散に追い込まれました。また、JALのように本来なら資産の不足を補填すべき企業が倒産してしまい、加入者に対する給付を大幅に減額したケースもあります。確かにDCは個人に運用リスクを負わせるものです。しかし、DBは企業リスクを個人が全面的に負ってしまいます。考えようによっては、DCの方が個人にとって「公平」だと言えるのではないでしょうか。

そうした状況の変化を経て、DC制度は確実に普及していきました。FPの山崎俊輔さんが楽天証券のサイトで面白い連載を始めました。


当初は様々な批判がありながらも、20年を経ていまや企業型と個人型を合わせて1000万人がDCに加入する時代になっているわけです。現役世代の5人に1人がDCで運用しているわけですから、それこそ「資産運用」というものに対する社会の認識が劇的に変化する一歩手前まで来ていると言っていいでしょう。そう考えると、まだまだ制度上の改善点は多々あるにしても、この20年で社会は大きく変わったと言えます。そして、次の20年では、それこそ劇的に変化することは間違いないと思えます。

【ご参考】
iDeCoに加入する場合、金融機関によって手数料や商品ラインアップが異なることに注意が必要です。現在、iDeCoプランの選択肢としてお薦めなのは運営管理手数料が無条件無料で低コストインデックスファンドをそろえるSBI証券セレクトプラン、楽天証券、マネックス証券、松井証券、イオン銀行です。iDeCoへの加入を検討している人は、これら金融機関のプランを研究することをお勧めします。いずれもネットから無料で資料請求できます。⇒SBI証券確定拠出年金プラン楽天証券確定拠出年金プランマネックス証券確定拠出年金プラン松井証券確定拠出年金プランイオン銀行確定拠出年金プラン

iDeCoは公的年金を補完する制度ですから、これを活用する前提として日本の公的年金制度について勉強することを強くお勧めします。この点に関しては、権丈善一先生の『ちょっと気になる社会保障』が最良にして必読の入門書です。このほど、三訂版『ちょっと気になる社会保障 V3』が刊行されました。また、iDeCoも含めて現在の公的年金制度を徹底的に利用するための戦略書として田村正之さんの『人生100年時代の年金戦略』が非常に網羅的にまとめられていてお勧めです。家計管理から貯蓄・投資、公的年金やiDeCo・つみたてNISA活用までトータルに解説している竹川美奈子さんの『50歳から始める! 老後のお金の不安がなくなる本』も老後資金について“自分ごと”として考えるための方法論を丁寧かつ詳細に論じた優れた入門書です。



iDeCoは制度がやや複雑なので加入を検討する場合は解説書を読んで研究することもお勧めします。解説書としては大江英樹さんの『はじめての確定拠出年金投資』山崎元さんの『確定拠出年金の教科書』『シンプルにわかる確定拠出年金』竹川美奈子さんの『一番やさしい!  一番くわしい! 個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門』田村正之さんの『はじめての確定拠出年金』大江加代さんの『図解 知識ゼロからはじめるiDeCo(個人型確定拠出年金)の入門書』を挙げておきます。





関連コンテンツ