2020年10月22日

iDeCoは公的年金の補完制度―2020年10月の個人型確定拠出年金(iDeCo)積立と運用成績

 

毎年のことですが9月~10月は仕事の繁忙期のため、ブログの更新頻度もガタ落ちの今日この頃。そんな忙しい中でも、しっかりと老後資金の準備ができるのが個人型確定拠出年金(iDeCo)の素晴らしい点です。10月の買付(9月拠出分)も無事に約定していました。そんなメリットの多いiDeCoですが、一部に制度の本義を誤解した議論があります。これは非常に重要なことですが、iDeCoはあくまで公的年金(国民年金・厚生年金)を補完する制度だということです。

SBI証券のiDeCoオリジナルプランで買付けたファンド・商品は以下の通りです(カッコ内は信託報酬)。いつも通りのポートフォリオとなっています。

【個人型確定拠出年金(SBI証券iDeCoオリジナルプラン)】
「三井住友・DCつみたてNISA・日本株式インデックスファンド」(0.16%)
「DCニッセイ外国株式インデックス」(0.189%)
「EXE-i新興国株式ファンド」(0.23%+投資対象ETF信託報酬0.1095%程度)
「EXE-iグローバル中小型株式ファンド」(0.23%+投資対象ETF信託報酬0.075%程度)
「野村外国債券インデックスファンド(確定拠出年金向け)」(0.14%)
「三菱UFJ DC新興国債券インデックスファンド」(0.34%)
「三井住友・DC外国リートインデックスファンド」(0.27%以内)
「あおぞらDC定期」

累積損益率は10月20日段階で+15.6%と順調に回復しています。新規の拠出分も含めてですが、累積の評価額は過去最高を更新しました。“コロナ・ショック”も乗り越えて、順調に資産の積み上げが進んでいます。

さて、そんなiDeCoですが、いまだに一部で誤解があり、それに基づいたメディアの報道も後を絶ちません。例えば次のようなものは、ひとつの典型です。

公的年金を増やすためにあくせくするより、一刻も早く「iDeCo」を始めたほうがいい理由(DIAMOND online)

筆者は税理士のようですが、それならiDeCoによる“節税効果”をあまり言いすぎるのはいかがなものか。iDeCoによる“節税効果”というのは正確には“課税繰り延べ”です。なので、受給時に退職所得控除や公的年金等控除が使えたとしても、多額の退職金や企業年金などを受け取る人には、それほど大きな節税メリットはありません。この点はブログでも以前に何度か指摘しました。

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つまり、iDeCoは国民年金だけでは十分な老後資金を作ることが難しい自営業者や、それほど多くの退職金がもらえず企業年金もないような中小企業サラリーマンのために用意されている制度なわけです。これは当然の話で、そもそも多額の退職金や企業年金をもらえるような人は、税制上の優遇に値しないというのが制度の精神なのです。

そして、こうした制度設計から当然のように導き出されるのは、「iDeCoは公的年金(国民年金・厚生年金)の補完制度である」ということです。公的年金はiDeCoの前提であり、公的年金を否定した形でのiDeCoは制度設計上もありえません。

そう考えると、ダイヤモンド・オンラインの記事にあるような「iDeCoは、はっきり言って公的年金よりもよい仕組みだと思います」というような発想は、公的年金とiDeCoの制度設計や制度上の精神に対する理解が不十分な浅い考えだと言えるでしょう。iDeCoを推奨するにしても、公的年金を批判する形でやるのは誤解を招くので、非常に筋が悪い。

こうした指摘は、既に専門家の間でも上がっています。例えば竹川美奈子さんは、上記の記事に対して次のようにツイートしていました。
 
また、相互リンクにもある夢見る父さんもブログで「iDeCoは一般的には有利ですが、決して公的年金を代替するものではなく、年金が不安だからiDeCOというのはミスリードといえましょう」と書いています(「iDeCoは万能ではない」(夢見る父さんのコツコツ投資日記))。

近年、iDeCoも徐々に普及しているわけですが、それに合わせて金融機関の勧誘などで非常に不適切な表現が増えています。また、iDeCoを推奨する“専門家”の中にも、非常に浅い解説でミスリードを誘うケースも少なくありません。例えばiDeCoに対して過剰に“節税”をうたうのが典型。正確に“課税繰り延べ”による効果を説明すべきです。

ですから、iDeCoに興味のある人は、ぜひ専門家による詳しい解説がある本を熟読してから加入を検討して欲しいと思います。その際に重要になのは、iDeCo単体ではなく公的年金制度全体の理解が必要不可欠だということ。この点に関しては、権丈善一先生の『ちょっと気になる社会保障 V3』が最良にして必読の入門書です。また、iDeCoも含めて現在の公的年金制度を徹底的に利用するための戦略書として田村正之さんの『人生100年時代の年金戦略』が非常に網羅的にまとめられていてお勧めです。家計管理から貯蓄・投資、公的年金やiDeCo・つみたてNISA活用までトータルに解説している竹川美奈子さんの『50歳から始める! 老後のお金の不安がなくなる本』も老後資金について“自分ごと”として考えるための方法論を丁寧かつ詳細に論じた優れた入門書です。ぜひ参考にして欲しいと思います。



【ご参考】
iDeCoに加入する場合、金融機関によって手数料や商品ラインアップが異なることに注意が必要です。現在、iDeCoプランの選択肢としてお薦めなのは運営管理手数料が無条件無料で低コストインデックスファンドをそろえるSBI証券セレクトプラン、楽天証券、マネックス証券、松井証券、イオン銀行です。iDeCoへの加入を検討している人は、これら金融機関のプランを研究することをお勧めします。いずれもネットから無料で資料請求できます。⇒SBI証券確定拠出年金プラン楽天証券確定拠出年金プランマネックス証券確定拠出年金プラン松井証券確定拠出年金プランイオン銀行確定拠出年金プラン

iDeCoは制度がやや複雑なので加入を検討する場合は解説書を読んで研究することもお勧めします。解説書としては大江英樹さんの『はじめての確定拠出年金投資』山崎元さんの『確定拠出年金の教科書』『シンプルにわかる確定拠出年金』竹川美奈子さんの『一番やさしい!  一番くわしい! 個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門』田村正之さんの『はじめての確定拠出年金』大江加代さんの『図解 知識ゼロからはじめるiDeCo(個人型確定拠出年金)の入門書』を挙げておきます。





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