2016年4月28日

個人型確定拠出年金は格差是正のための制度でもある



先日、個人型確定拠出年金(個人型DC)の節税メリットは退職所得控除と合わせて初めて具現化できるので、高額の退職金を受け取れる人には節税メリットが少ないということを話題にしました。その問題で、日経新聞の田村正之編集委員がとても重要な指摘をしています。

個人型DC、中小企業こそ際立つメリット(NIKKEI STYLE)

そうなんです。個人型DCというのは基本的に退職金がない自営業者や退職金が少ない中小零細企業のサラリーマンのために用意された制度なんです。日本の場合、退職金格差は老後格差に直結するケースが多いですから、その意味では個人型DCというのは格差是正のための制度でもあるわけです。

田村さんが記事で指摘しているように、日本のサラリーマンの退職金格差は大きいです。
老後を左右する退職金・年金。そこには大企業と中小企業との大きな格差がある。厚生労働省の就労条件総合調査(2013年)によると、退職金の額は1000人以上の企業が1764万円なのに対し、30~99人の企業は919万円と約半分(一時金のみ支給の会社で比較)。
しかも状況は悪化している。一時金も年金もない比率が、30~99人の企業では5年前に比べ大きく増えているのだ。
私なんか、まさに後者です。私が現在の会社に就職したのは29歳の時でしたから、60歳定年で勤続31年となる予定です。ところが当社の退職金規定では平社員の場合、勤続31年だと支給額は1000万円弱です。大企業のサラリーマンが2000万円近くもらえるのと大違い。しかも現役時代の標準報酬月額も低いですから、年金支給額も低めになってしまう。企業年金なんかもちろんありません。

でも、まだ退職金が出るだけでも私は恵まれている。世の中には退職金制度すらない零細企業は多い。また、中小零細企業は非常に高い倒産リスクにさらされていますから、かりに倒産してしまうと退職金制度も絵に描いた餅になってしまう(そのため普通は中小企業退職金共済に加入して外部引き当てしておくことが望ましいのですが、やはり中退共にすら加入していない中小企業は存在します)。

こういうことを考えると、まさに個人型DCというのは中小企業のサラリーマンにこそ必要ということ。個人型DCなら所属企業が倒産してもDC資産はびくともしません。それは、老後の格差を是正するための制度でもあるのです。

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