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2020年8月2日

まるで反省がない銀行の姿勢にあきれる―外貨建て保険販売への苦情件数が7年連続過去最高を更新



生命保険協会によると、2019年度に銀行が販売した外貨建て保険に対する苦情件数が前年比1割増の2822件と過去最高となったそうです。

外貨建て保険・年金に係る苦情受付件数について(生命保険協会)
外貨建て保険、苦情が過去最多 預金感覚からトラブルに(朝日新聞)

しかも、苦情件数の統計を取り始めた12年度から7年連続で過去最高を更新し続けているというのですから驚きです。金融商品の購入はあくまで自己責任が原則ですが、これだけトラブルが起こるというのは異常な状況でしょう。もうひとつの重要な原則である「適合性原則」がおざなりにされていると言われても仕方がない。問題に対して、まるで反省がない銀行の姿勢にあきれます。

外貨建て保険・年金は「保険・年金」という名称とは裏腹に事実上は外国株式・外国債券への投資ですから、為替リスクも大きく、決して低リスクな金融商品ではありません。手数料の実態も不明瞭です。ところがこうした金融商品を銀行が販売し、さらに顧客の約3割が70歳以上の高齢者であるというところにトラブルの原因があるわけです。朝日新聞は次のように指摘しています。
銀行を通じて入る人が多いため、預金と同じ感覚で加入してトラブルになるケースが目立つ。お金を受け取る際に契約時より円高が進んでいれば、外貨から円に換える際に目減りする。受け取るお金が払った保険料を下回ることもある。為替変動がなくても、解約時に一定額が引かれ、戻るお金が支払額より低くなることが多い。外貨に換える際の為替手数料負担が十分に説明されないこともある。
もちろん、金融商品の購入は自己責任ですから、一義的には「預金と同じ感覚で加入」した購入者の落ち度です。いまどき銀行も販売の際にはリスクをしっかりと説明しているはずですから、それを理解せずに金融商品を購入するのは、やはり購入者の落ち度ということになります。

しかし、金融商品は購入側に「自己責任原則」がある一方で、販売側には「適合性原則」があります。適合性原則とは金融商品を販売する際に販売する側が、顧客の知識・経験・財産の状況や契約締結の目的と照らして不適当な勧誘を行なったり、投資者保護に欠けることのないようにしなければいけないというルール(「金融商品取引法」第四十条)ですが、では70歳以上に高齢者の外貨建て保険・年金を販売することが適合性原則に反していないかを銀行はよくよく考えるべきでしょう。常識で考えれば誰でも答えは出るはずです。

結局、日本で金融商品の販売でトラブルが減らない理由の大部分は、購入者が「自己責任原則」を軽く考えていることに加えて、販売する金融機関も「適合性原則」を甘く見ているからにほかなりません。ただ、自己責任原則を軽んじる購入者と適合性原則を軽視する金融機関のどちらの罪が重いかと言えば、やはり後者でしょう。なぜなら、購入者は素人であり、金融機関はプロだからです。そこには埋めがたい情報の非対称性があり、だからこそ金融商品の販売では金融機関の側に信認関係に基づく忠実義務が課せられるわけです。

そして最大の問題は、7年連続で苦情件数が過去最高を更新し続けるという事実が示すように、問題に対して金融機関にまったく反省の姿勢がみられないことでしょう。するとどうなるのか。おそらく「業界に自浄能力なし」と判断されて、規制強化など行政による介入を招くのです。それは、日本の金融機関の自由度を引き下げ、活力を奪うことになる。それは金融機関にとっても不幸なことです。そうならないためにも金融機関はもう一度、「適合性原則」とは何かについて真摯に反省することが必要なのでしょう。

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