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2020年7月5日
恐るべき格差社会がやって来た―収入は減ったのに資産が増える世界
先日、夏のボーナスが支給されたのですが、なんと支給額は前年実績から半減してしまいました。私は従業員50人未満の中小零細企業で働いていますが、ご多聞にも漏れず“コロナ・ショック”で会社の業績は大打撃を受けています。なので今年のボーナスは期待できないと覚悟していたのですが、実際に半減となるとさすがにショックです。さらに4月以降は残業も激減しており、月々の収入も減っています。今年は年収ベースでも大幅な減少は避けられない状況となりました。ところが不思議なことに、収入は減っているのにもかかわらず資産総額は増加し、いまや“コロナ・ショック”以前に記録した過去最高額に迫る勢いです。これには戦慄を覚えました。まさに恐るべき格差社会がやって来ました。いまや私たちは、労働による収入が減ったのに資産は増える世界に住んでいるのです。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって世界的に経済活動が停滞していますが、その影響は私の勤務先にも直撃しています。3月頃から売上高が激減し、現在も回復していません。このため倒産を防ぐための“聖域なき経費削減”が断行されており、それが人件費にまで及んだ形です。もともと大した額ではなかったボーナスがさらに半減となりました。また、受注量自体が減少しているので、最近は残業の必要もほとんどなくなりました。残業しなくてもすむのはありがたいのですが、残業代がなくなったことで月々の収入も減少したことがボディーブローのように効いています。
ところが収入が大幅に減っているにもかかわらず、資産総額は増加し、いまや“コロナ・ショック”前に記録した過去最高額に迫る勢いです。そうなった理由は簡単。世界的に株価が回復したからです。私は全資産の約半分を株式などリスク資産で持っているため、ここしばらくの株価回復の恩恵を享受したわけです。また、6月は保有している個別株の配当金が支払われる時期です。この収入も無視できない金額になっています。つまり、収入が減少する一方、それを上回る勢いで株価が上昇し、配当収入を獲得したわけです。
なぜこうなるのかというと、今回の“コロナ・ショック”のような経済危機があると企業は人件費を含めて経費削減に走る一方、配当などはできるだけ減らさないような資本政策が強まっているからです。さらに各国の中央銀行が金融緩和に動き、政府も積極的な財政政策を執ることで株価を下支えしようとする傾向が強まりました。このため株式などリスク資産を持っている人はいち早く資産が回復するのに対して、労働収入しかない人は長らく収入減少に悩まされることになります。欧米などは日本以上にこの傾向が顕著で、経済危機になると収入減どころから大量の失業者が出ることも今回の“コロナ・ショック”で明らかになりました。
こうした現実に対して戦慄を覚えます。いまや私たちは、労働収入は簡単に減るのに、リスク資産はそれよりも減りにくい世界で生きているのです。言い換えると、株式などリスク資産を持っている人と、持っていない人の間で急激に格差が生じるということです。いまや世界は恐るべき格差社会にに突入したのです。それには恐怖を感じるほどです。
こうした状況を踏まえ、あえて誤解を恐れずに言うならば、もはや株式投資は「ちょっと儲けたい」といった浮ついた動機で行うものではなくなったのかもしれません。もっと深刻な目的意識、それこそ“生活防衛”のための手段として考えなければならない段階に入ったのかもしれません。そういえば米国では若者の間で投資ブームが起こっているそうですが、それもあまり浮ついたものではなく、もっと悲壮な思いからの行動に思えます。そして、その状況は日本も同じなのではないでしょうか。
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