2020年6月19日

iDeCoは機動力がないのがメリットかも―2020年6月の個人型確定拠出年金(iDeCo)積立と運用成績



株式市場は“コロナ・ショック”からの回復がジワジワと続いていますが、その効果は個人型確定拠出年金(iDeCo)にも顕著に表れてきました。SBI証券のオリジナルプランで拠出・運用しているiDeCoの6月の買付(5月拠出分)を確認したところ、資産総額の評価額はほぼコロナ・ショック以前にまで回復しつつあります。特別に動かずにいつも通りの運用を続けたことが奏功したわけですが、そうなると機動力のなさというiDeCoの欠点は、かえってメリットにも感じられます。

SBI証券のiDeCoオリジナルプランで買付けたファンド・商品は以下の通りです(カッコ内は信託報酬)。いつも通りのポートフォリオとなっています。

【個人型確定拠出年金(SBI証券iDeCoオリジナルプラン)】
「三井住友・DCつみたてNISA・日本株式インデックスファンド」(0.16%)
「DCニッセイ外国株式インデックス」(0.189%)
「EXE-i新興国株式ファンド」(0.23%+投資対象ETF信託報酬0.131%程度)
「EXE-iグローバル中小型株式ファンド」(0.23%+投資対象ETF信託報酬0.104%程度)
「野村外国債券インデックスファンド(確定拠出年金向け)」(0.14%)
「三菱UFJ DC新興国債券インデックスファンド」(0.34%)
「三井住友・DC外国リートインデックスファンド」(0.27%以内)
「あおぞらDC定期」

先月からさらに相場は上昇し、REITインデックスファンド以外はすべて含み益状態に戻りました。このため累積損益率も6月17日段階で+10.1%となり、再び2桁%を回復しています。あまりにも回復スピードが速いので、それこそ“コロナ・ショック”ではなく“コロナ・バブル”が怖くなるほど。こうなると「もっと下落期間が続いてくれた方が、たっぷりと買い増しができたのに」とさえ思ってしまうのですから、人間とはいい加減なものです。

iDeCoの資産は機動的に売買ができませんから、“コロナ・ショック”のような相場急変局面では何もできず、それまでの運用方針を継続するしかありません。それはiDeCoの制度的欠点とも言えるのですが、逆に相場急変でも動かないことで結果的に最善の選択をしているということもあります。いまのところ、今回がそうなのでしょう。そうなると、iDeCoの機動力の無さというのはメリットかもしれません。

ところでiDeCoの機動力の無さは加入者だけでなく運用会社や運営管理金融機関にとってもメリットのようです。面白い記事が載っていました。

DC専用ファンド(2020年5月)、資金規模はコロナ前を回復、資金流入はバランスへも拡大(モーニングスター)

コロナ・ショックを含む3~5月もDC専用ファンドへの資金流入は続いています。これは当たり前の話で、DC専用ファンドはiDeCoだけでなく企業型確定拠出年金(企業DC)の受け皿ですから、やはり相場が急変したからと言って資金流入が急に減ったりしません。何しろ掛金は給料天引きがほとんどなのですから。つまり、DC専用ファンドというのは極めて安定した資金流入が期待できる商品なのです。

運用会社にとってもっともしんどいのは、相場急変時に大規模な資金流出が起こることです。これまで多くのアクティブファンドなどが、これによって死にました。その点、iDeCoや企業DCにラインアップされているファンドは、ちょっとしたショックが起こったぐらいでは資金流入に変化が生じません。これは運用会社や運営管理金融機関にとって大きなメリットのはず。たしかに信託報酬や手数料は安いですから大きな利益にはなりませんが、しかし持続的に利益を確保することができるはずです。

こうしたことを考えると、運用会社や金融機関にとってiDeCoや企業DCにラインアップされているファンドというのは大きな可能性を秘めた商品だと思えるのです。

【ご参考】
iDeCoに加入する場合、金融機関によって手数料や商品ラインアップが異なることに注意が必要です。現在、iDeCoプランの選択肢としてお薦めなのは運営管理手数料が無条件無料で低コストインデックスファンドをそろえるSBI証券セレクトプラン、楽天証券、マネックス証券、松井証券、イオン銀行です。iDeCoへの加入を検討している人は、これら金融機関のプランを研究することをお勧めします。いずれもネットから無料で資料請求できます。⇒SBI証券確定拠出年金プラン楽天証券確定拠出年金プランマネックス証券確定拠出年金プラン松井証券確定拠出年金プランイオン銀行確定拠出年金プラン

iDeCoは公的年金を補完する制度ですから、これを活用する前提として日本の公的年金制度について勉強することを強くお勧めします。この点に関しては、権丈善一先生の『ちょっと気になる社会保障』が最良にして必読の入門書です。このほど、三訂版『ちょっと気になる社会保障 V3』が刊行されました。また、iDeCoも含めて現在の公的年金制度を徹底的に利用するための戦略書として田村正之さんの『人生100年時代の年金戦略』が非常に網羅的にまとめられていてお勧めです。家計管理から貯蓄・投資、公的年金やiDeCo・つみたてNISA活用までトータルに解説している竹川美奈子さんの『50歳から始める! 老後のお金の不安がなくなる本』も老後資金について“自分ごと”として考えるための方法論を丁寧かつ詳細に論じた優れた入門書です。



iDeCoは制度がやや複雑なので加入を検討する場合は解説書を読んで研究することもお勧めします。解説書としては大江英樹さんの『はじめての確定拠出年金投資』山崎元さんの『確定拠出年金の教科書』『シンプルにわかる確定拠出年金』竹川美奈子さんの『一番やさしい! 一番くわしい! 個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門』田村正之さんの『はじめての確定拠出年金』大江加代さんの『図解 知識ゼロからはじめるiDeCo(個人型確定拠出年金)の入門書』を挙げておきます。





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