2020年6月25日

独立系直販投信の次の課題は脱・属人化―セゾン投信の中野社長が会長に



独立系直販投信として個人投資家の間で根強い人気があるセゾン投信が、6月23日付で中野晴啓社長CEO(最高経営責任者)が会長CEOに、園部鷹博取締役が社長COO(最高執行責任者)に就く人事を発表しました。

新経営体制(社長交代)のお知らせ(セゾン投信)

長年、セゾン投信のみならず日本での長期・分散・積立投資の普及に多大な貢献をしてきた中野さんが会長となり、園部氏が社長に昇格することは、ある種の世代交代の動きと言えるでしょう。こうした動きは、セゾン投信のような独立系直販投信の次の課題を明確に示しています。それは脱・属人化です。

今回のセゾン投信の人事に関して、カン・チュンドさんがブログで的確な指摘をしていました。

セゾン投信の社長が中野さんから園部さんに交代!(ここから『理念』作りが始まるのです)(インデックス投資のゴマはこう開け!)

カンさんも指摘するように、中野さんはこれまで文字通りセゾン投信の“顔”として日本における長期・分散・積立投資の普及に活躍してきました。思い返すと、私もインデックスファンドの積立投資をを始めたばかりの頃に、中野さんが「ひふみ投信」の藤野英人さん、「コモンズ投信」の渋澤健さんと一緒に「草食投資隊」として全国を回って開催していたセミナーに参加していろいろと勉強したことを思い出します。懇親会などで直接意見交換する機会もたびたびありました。

その頃から今まで中野さんの姿勢は一切ぶれることがありません。そんな中野さんの姿勢が「セゾン投信」への信頼感につながっている面が多々あると思います。そしてこれはセゾン投信に限らず、受益者から信頼を集めている独立系直販投信に共通した特徴です。良くも悪くも“顔が見える運用”こそが信頼感の源です。これはサラリーマン社長やサラリーマン・ファンドマネージャーが率いる大手運用会社には真似のできない強みでした。

一方、こうした強みはある時点で弱みにもなります。それはカンさんも指摘するようにファンドの運用は40年、50年と続くけれども、人間の寿命には限りがあるということです。つまり、あまりに特定の人物のキャラクターに依存した運用会社というのは、そのカリスマがいなくなった後の運用をどうするのかという問題に直面します。例えば藤野英人さんがいなくなった「ひふみ投信」、あるいは澤上篤人さんがいなくなった「さわかみファンド」に対して受益者が引き続く信頼を寄せ続けるのだろうかという問題です。“顔も見える運用”は強みだけれども、あまりに属人化した企業体質は持続性への懸念材料にもなるわけです。

そう考えると今回のセゾン投信の人事は、こうした独立系直販投信の課題に対する一つの挑戦です。後継者を育成することで脱・属人化を図る。そのときに大事になるのは、やはりカンさんが指摘すように“理念”を会社の隅々にまで行き渡らせ、それを世代を超えて受け継がれるものに磨き上げることしかありません。独立系直販投信も、ついにそういった段階に入ったということです。そして、この脱・属人化という課題はセゾン投信だけでなく、他の独立系直販投信にも当てはまるでしょう。そのモデルケースとして、新体制によってセゾン投信がどのように変化していくのか大いに注目したいと思います。

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