2020年5月12日

“ウィズ・コロナ”時代の航空機シート―イタリア人のユニークな発想は健在



新型コロナウイルスのパンデミックによってもっとも打撃を受けた産業セクターの一つが航空業界でしょう。あのウォーレン・バフェットですら保有してたエアライン銘柄を売却したぐらいですから、ちょっと立ち直るのには時間がかかりそうです。とくに“ウィズ・コロナ”時代において問題になるのがもののひとつが座席レイアウト。現在のエコノミークラスの座席レイアウトではフライト中に乗客の濃厚接触が避けられません。そこでイタリアのある企業が乗客のソーシャルディスタンスを確保できるユニークな発想のシート配置を提案しています。これがなかなかよくできていて、ちょっと感心しました。意外と実用化される可能性があるのではないかと感じました。

フライト中の乗客のソーシャルディスタンを確保するためにユニークな座席レイアウトを提案しているのはイタリアのアビオインテリアズという企業です。

航空機の座席数を減らさずに社会距離を確保するには…後ろ向きシートや仕切板を提案(BUSINESS INSIDER JAPAN)

仕切り版というのは非常に単純な発想ですが、なかなかうまく考えられています。さらに面白いのが「ヤヌス・シート」。たしかにこれなら乗客同士の距離を保ちながら、シート数もあまり減らさなくて済みますから航空会社としては助かるはず。おまけに乗客同士のプライバシーも現在のシート配置より保てる可能性が大きいのですから、実用化すると意外と好評となりそうな予感がします。

じつはこのアイデアを提案しているアビオインテリアズという企業については、以前に名前を聞いたことがありました。やはり記事で紹介されている立ち乗りシート「スカイライダー」で搭乗可能人数を極限まで増やすというアイデアをどこかで見たことがあります。その時は「とんでもないことを考える企業だな。こんなシートが実用化されたら、もう飛行機には乗りたくなくなるぞ」と思ったものです。

ところが今回は逆の目的のためにアイデアをひねっているわけです。「ヤヌス・シート」などは、明らかに現在のエコノミークラスのシート配置よりも快適そうです。それにしてもイタリア人のユニークな発想は健在。どうもイタリア人というのは、ちょっと普通では思いつかないような奇妙な、それでいて実際に見てみるとじつにうまく考えられている機構を発明するのが得意なように感じます(これはイタリア製の機械や自動車、時計などの愛好家なら納得できるのでは)。

そして、こうしたアイデアが次々と登場するところに、“ウィズ・コロナ”あるいは“アフター・コロナ”時代の希望も感じます。これまでは、とにかく経済性を優先する発想が重視されてきました。その典型が立ち乗りシート「スカイライダー」です。ところが皮肉なことに新型コロナウイルスのパンデミックによって、そういった経済性と効率だけを優先する発想が立ち行かなくなりました。それは企業にとって逆風ですが、新たなサービスや付加価値を生み出す源泉にもなるということです。

現在は未曽有の危機に瀕している航空業界ですが、こうした斬新な発想を取り入れることで復活の目もあるのではないでしょうか。そしてそれは航空業界に限らず、あらゆる産業セクターにも当てはまると思います。きっとそこから“ウィズ・コロナ”あるいは“アフター・コロナ”時代における経済の再生が始まるような気がします。

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