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2019年1月24日

「eMAXIS Slim」シリーズ2ファンドが信託報酬を引き下げ―ファンド新規設定戦略は完全に破綻した



予想されたことですが、三菱UFJ国際投信が超低コストインデックスファンドシリーズ「eMAXIS Slim」のうち、国内株式インデックスファンド2本の信託報酬が2月15日から引き下げると発表しました。

業界最低水準の運用コストをめざす『eMAXIS Slim(イーマクシス スリム)』信託報酬率の引き下げを実施(三菱UFJ国際投信)

インデックスファンドの低コスト競争において徹底してカテゴリー最安値に追随する戦略は、やはり強力です。改めてはっきりしたのは、「eMAXIS Slim」の存在によって、ファンドの新規設定によって低コスト競争を戦うという競合他社の戦略が完全に破綻したことです。

今回、信託報酬が引き下げられるのは以下の2ファンドです(カッコ内は税抜き信託報酬)。

「eMAXIS Slim国内株式(TOPIX)」(0.155%以内)
「eMAXIS Slim国内株式(日経平均)」(0.155%以内)

これにより「eMAXIS Slim国内株式(TOPIX)」は、りそなアセットマネジメントの「Smart‐i TOPIXインデックス」と最安値で並び、「eMAXIS Slim国内株式(日経平均)」は日経225連動のインデックスファンドとしては単独で最安値を更新することになります。明らかに「Smart‐i」に対抗した動きであり、さらに日経平均インデックスファンドも併せて信託報酬を引き下げることで国内株式クラスとしてもコスト最安値の地位を死守するという姿勢が鮮明になりました。これだけ徹底した戦略を実行するところ、見事としか言いようがありません。

今回の「eMAXIS Slim」の信託報酬引き下げによって、「Smart‐i」へ新規の資金流入が起こる可能性はほぼ皆無になりました。なぜなら、これからインデックスファンドを購入しようとする人が「Smart‐i」を選択することも、既に積立投資していた人が、あえて「Smart‐i」に乗り換えることも、ともにインセンティブがまったくなくなってしまったからです。

これが何を意味するのかというと、これまで日本のインデックスファンド業界で主流だった「ファンドの新規設定で低コスト競争を戦う」という戦略が完全に破綻したということです。実に皮肉なことですが、低コスト競争を戦うために新規設定された「eMAXIS Slim」によって、その戦略自体が息の根を止められてしまったのです。この点に関して私は「eMAXIS Slim」が登場した直後から予想していたのですが、まさにその通りの展開となりました。

「eMAXIS Slim」登場の歴史的意味―インデックスファンドの低コスト競争は新たな局面に入った

今後、競合各社は低コスト競争における戦略の転換が必要になるでしょう。「eMAXIS Slim」が採算度外視ともいえる追随戦略をとる以上、ファンドを新規設定して低コストを実現したところで、すぐに追随されてしまい、後発のファンドは競争力を発揮できないからです。

では競合各社に対抗策はあるのかということですが、それはあると思う。ヒントは「eMAXIS Slim」と唯一対抗できているニッセイアセットマネジメントの「<購入・換金手数料なし>」シリーズや、信託報酬が最安値ではないにもかかわらず受益者の支持を失わないセゾン投信を研究することで見えてくるでしょう。これらファンドは、意図的かどうかは別として、確実に「eMAXIS Slim」シリーズの“アキレス腱”を突いていると思えるからです(この点に関しては、いずれ別稿で論じたいと思います)。

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