2019年1月4日

武者先生の日経平均10万円説



昨年末のことですが、経済アナリストの武者陵司さんが面白い論説を発表していました。日本企業は平成の30年間で収益モデルを大きく変化させることに成功しており、次の時代には大きな成長を遂げる可能性があると言うのです。

オピニオン:平成時代に変貌した日本企業、「株10万円」への布石=武者陵司氏(ロイター)

これにより日経平均株価も2033年から34年にかけて10万円が視野に入ってくるとか。さすが武者先生、あいかわらずアクセル全開です。ただ、こうした見解を一種の“珍説”として無視してはいけないと思う。

武者先生の論理構成は明快で、ようするに今後の5G時代・IoT時代において、そのインフラを支えるハイテク機器に必要不可欠な素材・部品・デバイスあるいは製造装置を日本企業が供給することで大きな収益を上げることができるという指摘です。この発想はわりと一般的で、いま日本企業の株を買っている人の多くが抱いているストーリーの本流です。

その意味では武者先生の「日経平均10万円説」というのは珍説でもなんでもない。きちんと首尾一貫した論理構成によって導き出された結論です。これはよく勘違いされるのですが、アナリストは“予想屋”ではありません。多くの情報の中から論理を構築し、あり得る可能性を示すのがアナリストの仕事です。だから、予想が当たるかどうかではなく、その結論に至る論理の一貫性、広がりと深みで評価されるべきなのです。その意味で今回の武者先生の「日経平均10万円説」というのは、さすが武者先生だと思わせる見事なものです。

そして「日経平均10万円説」には、もうひとつ重要な示唆が含まれています。それは“株式の上値は理論上、無限”ということです。株価というのは下値は0円までに限られているの対して、上値は企業が収益を上げ続け、成長し続ければ、どこまでも上昇することが理論上あり得る。「日経平均10万円」と聞いて、すぐにそれを馬鹿にする人は、そういった基本原理を軽視しているのかもしれません。ちなみに株式というものが「下値は有限、上値は無限」というところに、長期投資においては「売り」ではなく「買い」を基本にする必要があるという理由もあります。

本当に日経平均が10万円になるのかはわかりませんが、少なくとも2033年が楽しみ。おそらく現在では想像もつかない世界が実現しているはずです。そこで日本企業がどのような役割を担っているのか。こうした“想像力”や“構想力”を働かせるところにもまた、株式投資の楽しみがある。年明け早々、読んで気分の良くなる武者先生の御高説でした。

最後にちょっと蛇足。意図的かどうかわからないけど、武者先生が記事で言及していない点をひとつ。5G時代・IoT時代を支えるのは日本企業の素材・部品・デバイス・製造装置だけではないでしょう。ITインフラを支えるソフトウェアとプラットフォームの視点が必要です。その点ではMicrosoftやGoogleといった一部の米国企業の存在感は一段と高まるはず。あるいはIntelやAMD、NVIDIAといったCPU・GPUベンダーも安泰かもしれません。日本の地味な素材・部材メーカーと米国の派手なハイテク企業という組み合わせが、5G時代・IoT時代に向けた投資戦略のメインストリートかもしれません。

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