今年4月30日で今上天皇が譲位し、5月1日には新しい天皇が即位することで「平成」の時代が終わります。平成年間を振り返ると、こと経済に関しては「失われた30年」という言葉が象徴するように、ややもすると停滞の時代だという印象が強いかもしれません。そう思って元日の新聞を読んでいると、日経新聞の広告特集「人生100年時代のマネー」に大江英樹さんが「平成の30年の資産運用」という興味深い記事を書いていました。失われた30年と言われる平成年間でも積立投資にとっては大成功の時代だったということです。
大江さんは「平成が始まった時から今まで適切な方法で投資を続けていれば、それなりの成果は出ている」として、1989年1月から2018年9月までほぼ30年にわたって毎月1万円を外国株式、国内株式、外国債券、国内債券の4資産均等配分ポートフォリオで分散投資していたらどうなったかをシミュレートしています。
結果は、積み立て元本357万円に対して現在の評価額は約840万円。約2.3倍以上になります。ちなみに、日経平均株価に連動する投資信託だけを積み立てたとしても30年間で積み立て元本の約1.6倍の評価額になるとか。大江さんは次のようにまとめています。
この間、バブル経済の崩壊やアジア通貨危機、IT(情報通信)バブルの崩壊、リーマン・ショックといった多くの経済的な波乱要因はあったものの、長期に国際分散投資を行うことで、それらを乗り越えて十分な資産形成ができたことがわかる。「失われた30年」と言われる平成年間も、積み立てによる国際分散投資にとっては大成功の時代だったわけです。これこそまさに積立投資、そして国際分散投資という方法の面白さでしょう。
もちろん、大江さんによるシミュレーションは、しょせんシミュレーションに過ぎません。実際に平成の30年間をかけて積み立てによる国際分散投資を実践した個人投資家は皆無のはず。なぜなら、30年前には日本の個人投資家が簡単にアクセスできるような積立投資・国際分散投資のツールがほとんどなかったからです。
しかし、それから30年を経た現在、日本の個人投資家を取り巻く環境は大きく変化しています。いまや日本人のだれもが簡単に低コストなインデックスファンドを通じて積立投資・国際分散投資を実践できます。「つみたてNISA」や「iDeCo」のように、それを後押しする制度も整備されました。だからこそ大江さんも最後に次のように指摘しているのでしょう。
長い人生を通じた資産形成という観点から考えると、短期的な株価変動はあまり影響がないと言っても差し支えない。短期的な株価変動に惑わされることなく、分散投資を長期にわたって積み立てで実行していくことの重要さは今後も変わらないだろう。今年5月から新しい時代が始まります。次の30年に向けて積立投資・国際分散投資に挑戦することに対して自信がわいてきます。経済的には停滞していたように見える平成時代ですら、積立投資にとっては大成功の時代だったのですから。それが「人生100年時代」における資産形成・運用のとても大切な認識だと思うのです。