2017年5月6日

株主優待投資家さんたちとのオフ会に参加しました―株主優待狙いの投資は意外と難易度が高い



先日、ゴーヤーちゃんぷるさんからお誘いいただいて、インデックス投資家と株主優待投資家による合同オフ会に参加しました。肝心のゴーヤーちゃんぷるさんが体調不良で当日欠席するなどアクシデントもあったのですが、なかなか普段は交流することの少ない株主優待投資家さんたちとの交流は興味深いものがありました。私は基本的に過剰な株主優待制度に対して批判的なのですが、貧乏な“庶民”でもあるので「株主優待券が使える店でお得に飲みましょう」と言われると、ホイホイ出ていくのです。

今回のオフ会メンバーは以下の5人でした。

ωさん
ruinwalkersさん(奈良の田舎で株主優待生活 -- 株主優待を日常生活に取り込んで生活してます
ヒロさん
葵堂さん


ωさん(「お尻」じゃないよ、「オメガ」さんだよ)とは普段からTwitterでいろいろと絡ませていただいています。今回、直接お会いできてよかった。ruinwalkersさんは株主優待投資家としてはちょっと有名な方。私とωさんがインデックス投資家なのに対してruinwalkersさん、ヒロさん、葵堂さんは株主優待制度に優れる銘柄を中心に個別株でポートフォリオを作っている株主優待投資家さんたち。今回のオフ会は一種の異種格闘技戦ともいえるのですが、実態は、株主優待投資家「優待券の使える店で安く飲みましょう」、インデックス投資家「ごちになります」といった感じでした。

私は自分とは異なる投資手法を実践している人と話をするのが好きなので、これまであまり交流のなかった株主優待投資家さんたちといろいろと意見交換できたのが良かったです。とくに株主優待投資家に対して一度聞いてみたかったことがありました。それは株主優待は配当と異なり企業の恣意的な判断でいつでも改悪や廃止ができること。このリスクをどのように理解しているのかということです。

これに対してruinwalkersさんの説明はなるほどと思うものでした。それは、配当と株主優待はそもそも目的と財源が異なるということです。配当は株主に対する利益の分配です。だから決算上の利益や利益剰余金がないと配当できません。これに対して株主優待は試供品や割引券提供による自社製品の宣伝やマーケティングが本来の目的のため、原資は販管費から捻出される。だから極端な話、赤字や債務超過で配当できない企業でも株主優待は出せるのです。

こうした配当と株主優待の違いを理解した上で銘柄を選ぶことが重要だとruinwalkerさんは指摘しています。つまり、単に株主数を増やしたい、あるいは株価を引き上げたいといった目的で安直にクオカードなどを配る企業は買わない。そうではなく自社製品・サービスの宣伝・マーケティングという本来の目的のために株主優待を実施している銘柄を選ぶべきだそうです。そういう企業は優待制度が改悪・廃止されにくいのだとか。たしかに優待券は自社製品・サービスの割引券などが多いですから、もらった人はそれを使うことで結局のところ割引金額以上の商品・サービスを購入するケースが多い。一種の販促ツールになってるわけです。

一方、こうした株主優待の性格は、別の意味で銘柄選択の難しさにもつながります。株主優待は原資が販管費として計上される以上、財務がガタガタの企業でも実施できることになりますから、優待人気によって株価のバリュエーションを歪める。これを無視して調子に乗っていると優待制度は十分なのに、ある日突然企業が倒産したりする。実際にJALやスカイマークは株主優待制度が維持されたまま倒産しました。だから株主優待狙いの投資は、銘柄選択の際に財務諸表を綿密に読み込んで経営の健全性を確認しなければなならない。実際にruinwalkersさんは企業経営や財務の実態に詳しい人なので、やはり財務諸表の分析の重要性を力説していました。

こういうことを考えると、株主優待投資というのは意外と難易度が高い。実はかなり上級者向けの投資手法ではないかと思った次第です。また、株主優待を実施する企業は優待の性格上、B2Cビジネスの企業が多く、とくに食品や外食産業などセクターも偏りがちです。このためいくら保有銘柄を増やしても、セクター分散が効きにくい。私のように投資では分散が最も大切だと考えている者からすると、やはりちょっと手を出しにくいかなというのが正直な印象です。でも、いろいろなセクターに分散投資する中で、そのひとつとして株主優待がある企業を選び、ちょっとしたおまけとして優待を享受するというのは庶民の株式投資のささやかな楽しみとしてありだとも思います。

それと、これは最後に株主優待投資家さんたちに言ったのですが、企業は株主優待制度はあまり派手にやりすぎない方がいいということ。というのも、株主優待の原資が販管費として計上されるというのは、会社法の現物配当規制や配当財源規制の隙間を突いた方法だからです。違法ではないけど、限りなく脱法的な方法の可能性がある。だから少額の優待提供ならばお上も目こぼししていますが、あまりに加熱するとたぶん法的な規制が入ると思います(海外で株主優待制度がほとんど無いのは、おそらくこういった法務リスクをクリアできないからでしょう)。

また、もともと株主優待は株主平等原則に反します(株式保有量に比例した配分がなされない)。だから機関投資家の間では非常に評判が悪い。換金性の低い優待ならなおさらです。するとあまりに優待制度が過熱すると企業や当局に対して機関投資家からクレームが入るはずです。日本最大の機関投資家は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)ですが、GPIFあたりが声を上げた場合、どうなるでしょうか。ことが年金原資の問題ですから、たぶん当局も動くでしょう。法的正当性だけでなくポピュリズムの要素から当局が動く危険性があります。

そのほかにも株主優待による実質収入が贈与税の対象になるのではという問題、あるいは投資家に対する事実上の利益供与である株主優待に対して金融所得課税されていないという問題があります。これも株主優待制度があまりに加熱すると、やっぱり税務当局が動く可能性がある。そういう税務リスクも株主優待制度には付きまとうように感じるのです。

だから株主優待制度というのは、あまり世間の目につかずにこっそりとやっている程度がふさわしい。ちょっとした試供品やサービス券を配布することで、自社製品・サービスの宣伝・マーケティングという本来の目的のために実施されるくらいでいいのです。ちなみにわが家では母親が味の素の株を保有しているので、株主優待として試供品をありがたくいただいています。金額としては些細なものですが、庶民にとっては嬉しいおまけであり、母親はきっちりと味の素製品のファンになっています。そして味の素の株価は株主優待とは無関係に上昇しました。これが株主優待の本来あるべき姿です。

そして株主優待には庶民に株式投資を普及させるというメリットもあります。売買ではなく長期保有によって利益を得るという株式投資の王道的な手法の入口になっているのは事実だということは否定できませんし、評価するべきなのです。だから、何事も程度の問題。ささやかな株主優待制度はいいけれども、あまりにそれが過熱し、本来の目的を逸脱してはいけないというのが私の考え方なのです。

そういう意見交換を株主優待投資家さんたちとできたオフ会は非常に有益でした。そしてruinwalkersさん、株主優待券でご馳走いただいてどうもありがとうございました。ほかの皆さんも含めてまた、いろいろと意見交換しましょう。
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