2017年5月5日

ジワジワと、そして確実に普及する確定拠出年金―日本人の投資文化を変える“静かな革命”かも



ゴールデンウィークということもあり、妹夫婦が甥っ子を連れて帰省してきました。その妹から「楽天証券からiDeCo(個人型確定拠出年金)の資料を取り寄せたよ」との報告がありました。やっぱり運営管理手数料の安さが魅力だとか。妹よ、その判断は100%正しい。ちょうど同じころ、今度は弟から「確定拠出年金は、どんな商品を積み立てたらいいの?」という質問も。弟の場合、勤務先の厚生年金基金が解散し、9月から企業型確定拠出年金に移行することがほぼ決まったそうです。私は3人兄弟(兄妹)なのですが、既にiDeCoに加入している私を含めて、3人全員が確定拠出年金に加入することになります。なるほど、確かに確定拠出年金は個人型と企業型を合わせてジワジワと、そして確実に普及していくのだということを改めて実感しました。これは今はまだ小さな変化ですが、将来的に日本の投資文化を根本的に変えてしまう“静かな革命”の萌芽ではないかという印象を強く持っています。

前にも少し書きましたが、妹は勤務医をしています。おまけに旦那さんは一部上場大企業のサラリーマンなので、2人の収入を合わせた世帯収入もかなり大きい。このため累進課税で税率が高いことが悩みでした。おまけに医師という職業は現役時代の収入こそ多いものの、正規雇用されるのが遅くなりがちなため厚生年金の加入期間が短い場合が多い。さらに職場を変えることも多いので退職金も少ないそうです。

そんなとき、テレビで掛金が全額所得控除されるiDeCoの存在を知り、関心を持ったそうです。確かに妹のような立場の人にとって、iDeCoは最適な制度でしょう。拠出時の掛金全額所得控除と給付時の退職所得控除のメリットをともに最大限生かせるからです。それで「iDeCoなら楽天証券、SBI証券、みずほ銀行の手数料が安く、商品も低コストなものがそろっているよ」とアドバイスしていたのですが、どうやら楽天証券を選びそうです。ちなみに妹の旦那さんは既に勤務先の企業型確定拠出年金に加入しています。妹が楽天証券のiDeCoに加入することで夫婦とも確定拠出年金に加入することになります。

一方、弟の方もありがちなパターンで企業型確定拠出年金に加入することになりました。勤務先が加入していた厚生年金基金がご多聞に漏れず長らく代行割れに苦しんでいたのですが、2013年からのアベノミクス相場で奇跡的に代行割れが解消。“今がチャンス”とばかりに基金解散を決めたそうです。その後、移行先を巡って加入企業の労組と協議が続いていたのですが、弟の勤務先の場合は企業型確定拠出年金に移行することが決まり、9月からの拠出に向けて投資教育もスタートしたそうです。

改めて感じたのは、個人型か企業型かは別にして確定拠出年金自体はジワジワと、そして確実に普及しつつあるということ。なにしろわが家でも私、弟、妹、義弟の全員が加入することになるわけですから。こういったケースは今後、確実に増えてくるのでは。やはり今年からiDeCoの加入対象者が拡大された効果は無視できないくらい大きなものがあったと思います。

そして、こうした状況は日本人の投資に対する認識を大きく変えていくと思う。従来、日本で“投資”と言えば個別株の売買などで「勝った」「負けた」と言っているようなイメージでしたが、確定拠出年金が普及することで投資信託の積み立てによる国際分散投資の認知度が一気に高まる可能性があるからです。その動きは今はまだ小さなものでも、いずれ大きなうねりとなる「静かな革命」かもしれません。実際に米国では確定拠出年金(401K)と退職勘定口座(IRA)の普及によって投資が一般化した歴史があります(それまでは米国でも大多数の国民が投資していたわけではありません)。

これは来年から始まる予定の積立NISAも同じなのですが、確かにiDeCoの制度拡充はまだ不十分な改革に過ぎなともいえます。だから「この程度では日本人の投資に対する認識を変えることはできない」という批判もあるわけです。しかし、まったく影響がないのかと言えば、そうではない。想像以上に大きな影響を及ぼすと思う。あらゆる事象も歴史的に分析すれば、やはり些細な変化がきっかけとなっています。物事の過渡期と言うのは変化が同時代的には見えにくいからこそ過渡期なわけです。今回、妹や弟も確定拠出年金に加入することになったという話を聞いて、いままさに日本の投資文化に変化が起こっている最中なのではないかという実感を強く持った次第です。

【ご参考】
iDeCoプランの選択肢としてお薦めなのは運営管理手数料が無条件無料で低コストインデックスファンドをそろえるSBI証券、楽天証券、マネックス証券、イオン銀行、松井証券です。iDeCoへの加入を検討している人は、これら金融機関のプランも研究することをお勧めします。いずれもネットから無料で資料請求できます。⇒SBI証券確定拠出年金プラン楽天証券確定拠出年金プランイオン銀行確定拠出年金プランマネックス証券確定拠出年金プラン松井証券確定拠出年金プラン

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また、研究のために解説書を読むことも大事です。最新の情報を盛り込んだ解説書としては大江英樹さんの『はじめての確定拠出年金投資』山崎元さんの『確定拠出年金の教科書』竹川美奈子さんの『一番やさしい! 一番くわしい! 個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門』田村正之さんの『はじめての確定拠出年金』を挙げておきます。



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