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2016年5月23日
iTrust世界株式の月報は内容がまったく不十分だー参考指数のデータを記載しなさい
私は現在、サテライトポートフォリオとしてピクテ投信投資顧問の低コストアクティブファンド、iTrust世界株式を購入しています。信託報酬が年0.89%(税抜)と海外株式に投資するアクティブファンドとしては低く抑えられていることに加え、受益者限定で「iInfo」として機関投資家向け情報を個人投資家にも提供してくれるなど、良心的な姿勢を評価したからです。実際にiInfoの配信が始まると、その充実ぶりに驚き、ピクテ投信の本気度を感じました。ところが最近、実際に運用がスタートすると不満な点も出てきます。最大の不満は、月報の内容が不十分だということ。もっというと、お粗末なのです。なにがお粗末かというと、ファンドの運用成績の騰落率が記載されているだけで、参考指数のデータが皆無なのです。これではアクティブファンドの月報としては不合格です。受益者として「参考指数のデータを記載しなさい」と強く要求したい。
iTrust世界株式は正式なベンチマークこそ設けていませんが、特設サイトで「豊富な資金力・優れた開発力・価格競争力・ブランド力・マーケティング力を持ち合わせたグローバル優良企業を厳選し長期投資することにより、インデックス(参考指数)を上回る収益の獲得を目指します」と明記し、マザーファンドの参考指数としてMSCI世界株価指数(ネット配当込)が記載されているのですが、まずこれが不親切。MSCI世界株価指数というのが、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(MSCI ACWI)なのか、MSCIワールド・インデックスなのかがわかりません。
それで月報が出れば、はっきりするのではと思って待っていたのですが、実際に発行された月報を読んでビックリ。ファンドの騰落率が書かれているだけで、参考指数のデータがどこにもないのです。これでは本当に「インデックス(参考指数)を上回る収益の獲得」ができているのか分からない。さすがにこれはおかしいと思ったのは私だけでないようで、安房さんもブログで疑義を呈しています。
そういえばもう一つあった低コストアクティブ世界株式ファンド。(海舟の中で資産設計を ver2.0)
その後、Twitterでもフォロワーさんたちとちょっとした議論になり、これはケシカランという意見が大勢です。私もケシカランと思うし、はっきりいって受益者をなめていると思う。特設サイトのようなプロモーション・ツールに記載した内容を、月報のような受益者への正式交付文書に記載しない姿勢は、あまりに不誠実ではないですか。このファンドは長期保有を推奨しているわけですから、受益者としても毎月の運用成績が参考指数をアウトパフォームしようがアンダーパフォームしようが、それでファンドに対する評価を変えるわけではありません。投資に百戦百勝はありえないことぐらい、誰だって知っています。ただ、長期で指数を上回るための過程として月次の結果を知りたいだけです。
いろいろと残念なのです。これが平凡な高コストファンドなら「ボッタクリの欠陥ファンドだ」と言って切り捨てるところです。でも、iTrust世界株式の場合、切って捨てるのはもったいないという思いが強い。なぜなら、ピクテ投信のようなコンサバティブな運用会社が、はじめて本気で個人投資家に正対しようと努力しているファンドだからです。私は、投資信託業界におけるその意味を深く考えています。ここでiTrustが成功すれば、今後の日本の投資信託の方向性が変わるほどのインパクトを業界にもたらすような気がするからです。
だから今回、ファンドの問題点に関して、たんにそれを批判するだけでなく、受益者として改善を求めて声を上げることにしました。ここで役に立つのが「iInfo」です。受益者にはiTrust専用の問い合わせメールアドレスが用意されています。さっそく、疑問点を記したメールを送りました。ピクテ投信には、ぜひとも受益者に対する誠意ある回答をお願いします。
私はインデックスファンドが好きなのですが、それと同じくらい良質のアクティブファンドが好きです。なぜなら、インデックス運用というのはアクティブ運用があってこそ成り立つものだから。だから、インデックス投資家こそアクティブ運用を大切にしなければなりません。そして、少しでも良質なアクティブファンドを増やすためにも、見込みのあるファンドをより良くしていくために行動したい。外部から批判することは大切ですが、同じくらい内部からの改革を促すことも必要でしょう。ファンドや運用会社の内部からの改革を促す最大の力は、やはり受益者の声だと思います。そして、受益者の声に真摯に応えるファンドや運用会社だけが、今後も生き残ることができるのではないでしょうか。
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