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2016年2月9日

ピクテ投信が低コストなアクティブファンド「iTrust」を設定―これは投信業界のちょっとしたメルクマールになるかも



ピクテ投信投資顧問が2月19日に低コストなネット専用アクティブファンドシリーズ、iTrustを設定するそうです。まずはiTrust世界株式、iTrustバイオ、iTrustロボの3ファンドをローンチするとのことですが、目玉となるiTrust世界株式の信託報酬(税抜)はなんと年0.89%。もちろんノーロード(購入手数料なし)。海外株式に投資するアクティブファンドとしては極めて低コストです。2015年はインデックスファンドの低コスト化が一気に進んだ年でしたが、2016年に入って、今度はアクティブファンドでも低コスト競争が始まるのでしょうか。もしそうなら、今回のピクテ投信によるiTrustシリーズは、投信業界のちょっとしたメルクマールとなる商品かもしれません。

ピクテ投信が設定するiTrustシリーズは以下の3ファンド。販売会社はSBI証券、カブドットコム証券、マネックス証券、楽天証券、東洋証券、静岡銀行からとなります。

iTrust世界株式 信託報酬(税抜)0.89%
iTrustバイオ  信託報酬(税抜)1.33%
iTrustロボ   信託報酬(税抜)1.33%

3ファンドの目論見書を見てみると、バイオとロボに関しては通常のテーマ型アクティブファンドと比較してやや割安な程度ですが、世界株式については大いに注目でしょう。なんといっても海外株式に投資するアクティブファンドでありながら、信託報酬が1%未満です。

私は従来から十分に低コストなら運用成績や投資戦略、理念によってはアクティブファンドも大いに活用する価値があるという考え方をとってきました。具体的には、アクティブファンドでも信託報酬が税抜1%未満になって初めて購入するかどうか検討する価値があると個人的には考えています。その点で、iTrust世界株式は非常に興味をそそられます。そう思って調べてみると、モーニングスターにピクテ投信投資顧問の萩野琢英社長のインタビューか掲載されていました。

ネット専用アクティブファンド「iTrust」、ピクテ投信の萩野琢英社長に設定意図を聞く(上)(モーニングスター)
ネット専用アクティブファンド「iTrust」、ピクテ投信の萩野琢英社長に設定意図を聞く(下)(同上)

ピクテ投信の本気度がよくわかるインタビューです。インデックスファンドの低コスト化が、アクティブファンドとしても低コストを追求する必要性を認識させたという点は面白い。そして(下)で萩野社長は興味深い認識を語っています。
萩野氏は、最近精力的に個人投資家とじかに接するなかで感じたこととして、「インターネットの普及によって、一般の個人投資家の方々の金融知識は格段と充実しました。ネット検索によって、従来は専門家の間でとどまっていた知識が公開され、あいまいな説明やごまかしは簡単に見破られます。今回の『iInfo』では、機関投資家向けに提供してきた専門的なレポートの一部を公開し、さらに、ピクテの今後5年間の投資指針についても紹介するなど、一歩踏み込んだ情報提供を考えています。ネットで投信を購入されるような方々と、従来にないコミュニケーションをしていきたいと願っています」と語っている。
これはとても大事な認識です。もう運用会社や金融機関が個人投資家の無知につけ込んでハメ込み販売を行えるような時代ではないのです。そういう当たり前の認識に世界有数の運用会社であるピクテの日本法人が思い至った。だからこそ個人投資家と真摯に向き合う商品としてiTrustを設定したとするなら、これは日本の投資信託業界にとってメルクマールとなる出来事になるかもしれません。こうした動きを日本の他の運用会社も無視できないはずですから。

実際にiTrustは受益者に対して直接の質問も受け付けるし、機関投資家向けのレポートも提供するとしているわけですから、機関投資家と個人投資家で差別的な待遇をもってよしとしてきた運用業界の非常識に一石を投じることを期待したい。そういう意味でも、iTrustには運用成績だけでなく、ピクテ投信の姿勢という観点からも注目していきたいと思います。

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