2015年9月21日

ETFの最大の弱点は課税コストだ

私は、インデックスファンドのほかにETFと個別株を保有しているのですが、このほど保有するETFであるNEXT FUNDS タイ株式SET50指数連動上場投資信託(1559)と、NEXT FUNDS FTSE ブルサ・マレーシアKLCI連動上場投資信託(1560)の収益分配金が振り込まれました。明細を見て改めて感じたのは、やはりETFの最大の弱点は“課税コスト”だということです(これは個別株も同様)。とくに現在のような下落相場で含み損を抱えるケースが多いと、問答無用で分配金に課税されることのダメージが非常に大きい。こうしたことを考慮すれば、十分に低コストな投資信託があるなら、とくにETFに投資する必要はないのではないかと感じてしまうほどです。

投資信託とETFの最大の違いは、分配金の扱いです。投資信託の場合、分配金を出すかどうかはファンドの判断にゆだねられているわけですが、ETFの場合は投資対象から得た配当金・金利収入など収益は経費控除後に原則としてすべて分配しなければなならないことになっています。当然、分配金には20%課税されます。

問題は、基準価格が下落して含み損となっている場合です。投資信託の場合、かりに分配金が出ても基準価格が受益者の個別元本を下回っている場合は特別分配金となり、税金がかかりません。一方、ETFは基準価格が下落して含み損の状態でも分配金に対して課税されます。これを取り返すためには、含み損となっているETFをいったん売却して損失確定したうえで、税務処理で損益通算する必要があります。これは、長期投資において極めて大きなデメリットです(個別株でも同様)。

現在が、まさにそういった状況です。最近、東南アジアをはじめとした新興国の株価下落がひどく、さらに通貨も暴落しているため基準価格は劇的に下がり、この2つのETFで私もそれなりの含み損を抱えています。含み損になっていることは、とくに気にしていないないのですが、さすがに税金を問答無用で取られるとイラッとします。

そう考えると、投資信託というのは、それなりに優れた商品だといえるでしょう。とくに課税コストを抑え、税金繰り延べ効果を最大化するという意味では、ETFや個別株と比べても圧倒的に有利です。そして、そうした投資信託の優位性を生かすためには、長期保有が大前提となるわけです(長期で保有すれば、含み損になっている期間が長くなる蓋然性も高いですから)。そう考えると、十分に低コストな投資信託があるなら、あえてETFに投資する必要はないような気がしてきました。長期保有が前提となる資産形成世代は、とくにそうです。

私がタイとマレーシアに投資するETFを買ったころは、また東南アジアに投資する低コストなインデックスファンドがありませんでした。個人的にアセットアロケーションのなかで東南アジア株のウエートを高めたかったので、仕方なく2つのETFを買っていたわけです。しかし、ETFといいながら、とくに信託報酬が安いわけではありません。ともに年0.55%(税抜)です。一方、その後に登場した東南アジア株に投資するインデックスファンドであるi-mizuho東南アジア株式インデックスは、信託報酬が年0.63%(税抜)。たしかにETFの方が安いですが、売買手数料や課税コストを考えると、はたしてETFに優位性があるか微妙なところです。対象国もi-mizuhoの方が分散が効いています。

そんなわけで、現在では東南アジアに投資するETFへの追加投資は止め、もっぱらi-mizuhoを活用するようになりました。こうした流れは今後、ほかのアセットカテゴリーでも起こるかもしれません。ここにきて極めて低コストなインデックスファンドの登場が相次いでいるからです。従来、低コストを追求するならETFを選択するというのが合理的でしたが、ETFと遜色のない低コストなインデックスファンドが普及すれば、とくに投資金額の小さい資産形成世代は、あえてETFを使う必要性は薄らいでくるかもしれません。

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