セゾン・バンガード・グローバルバランスファンドなどを組成・運用している直販投信のセゾン投信が26日、「フィデューシャリー宣言」を発表しました。
フィデューシャリー宣言を公表しました!(セゾン投信)
おそらくHCアセットマネジメントに続いて2社目だと思うのですが、個人投資家を主な受益者とする投資運用会社としては、たぶん宣言第1号では。これは本当に素晴らしいことだと思う。日本の投資信託の歴史においても特筆大書すべき出来事かもしれません。さすがセゾン投信だと感心しました。
セゾン投信によるフィデューシャリー宣言も、金融庁が昨年定めた「金融モニタリング基本方針(監督・検査基本方針)」の中で金融機関に対してフィデューシャリー・デューティーの実践を強く求めていることに対して自主的に呼応したものです。やはり行政による規制や指導によるのではなく、投資運用会社として自主的に宣言しているという姿勢が素晴らしい。そして、宣言の中身を見ても、いかにもセゾン投信らいし誠実さが表現されています。
フィデューシャリー宣言(セゾン投信)
とくに第1項に「長期資産形成」を高らかに掲げているところは、いかにもセゾン投信らしいですね。しかも「販売手数料はお客様の投資効率を悪化させるとの考えから、徴収いたしません」とあくまでノーロードにこだわる姿勢を宣言に込めるあたりに、業界の中で直販によるノーロード販売を牽引してきたという自負が感じられ、じつに好もしいものです。「お客様が長期資産形成を円滑に行えるように、投資教育に力を注ぎます」と強調していることもセゾン投信の哲学がよく表れています。
また、第2項の「利益相反行為の回避」と第3項の「報酬等の合理性」の論理構成も完璧です。日本のように投資信託が個人投資家から高額の手数料を巻き上げるツールに堕しているケースが多い状況では、この利益相反と報酬の合理性の関係を明確にすることが、フィデューシャリー・デューティーを確保するために、もっとも重要になる部分です。いったい運用会社とは、誰に対して忠実義務を負うのか。それはあくまで受益者でなければなりません。だとすると、運用会社が受益者よりも販売会社の都合を重視して、高額の手数料や信託報酬を設定することは、フィデューシャリー・デューティーに反する。まして、運用会社と販売会社・受託会社が同一の金融グループに属しているような場合は、報酬等の合理性は利益相反の観点から厳しく吟味されなければならないということです。
個人投資家を主な受益者とする直販投信の雄ともいえるセゾン投信が、率先してフィデューシャリー宣言を公表したことは今後、投資信託業界に大きな影響を及ぼすと思う。おそらく他の直販投信などから、これに続く動きが出てくるに違いありません。そうした流れが大きくなれば、いよいよ大手金融機関の系列に属する大手運用会社も、フィデューシャリー・デューティーに対する姿勢を受益者から問われることになるでしょう。その点でも今回のセゾン投信による宣言は、大きな意味を持つはずです。ぜひ、こうした流れが加速することを期待したいと思います。