2015年7月17日

久しぶりに個別株を買いました-坂本龍馬の夢を受け継ぐ


ギリシャ問題や中国株暴落の影響で日本の株も少し下げていましたが、見方を変えれば久しぶりの買い場だったとも言えます。そんなわけで、久しぶりに個別株を買いました。今回、買ったのは日本郵船(9101)です。最近は割安の株がずいぶんと少なくなったのですが、海運株が出遅れていて非常に安い。そんな海運株から、歴史と伝統を誇る日本郵船を選んだわけです。こういう歴史のある大企業の株というのは、非常に所有する楽しみが大きいと感じます。

私は個別株投資に関してはバリュー株至上主義者なので、バリュエーションが安くならない限り個別株を買うことはありません。日本郵船のバリュエーションですが、以下のようになっています。
日本郵船(9101)
株価(7月16日終値) 339円
PER(会社予想)   10.45倍
PBR(実績)     0.71倍
1株配当(会社予想) 8円
配当利回り(会社予想)2.36%
自己資本比率は2015年3月期段階で31.5%とやや低めですが、まあ許容範囲内でしょう。総合的に見て、非常に割安だと判断しました。海運市況の指標とされるバルチック指数はすでに底を打って上昇に転じているにもかかわらず、海運株が割安に放置されているというのは、やはり中国バブルの崩壊に対する懸念があるからでしょう。しかし、そうやってみんなが手控えている時こそ、安く買うことができるのが株というものです。

そもそも海運業というのは長期的に見れば成長産業です。これは当たり前の話で、経済がグローバル化し、国際分業が高度化すればするほど、誰かが原料、部品、完成品を運ばなければなりません。地球表面の7割は海ですから、船で運ぶしかないのです。そして日本郵船は、日本最大の海運会社であり、世界でもデンマークのマースクに次ぐ売り上げ規模です。じつに面白いではないですか。海運株は景気敏感株の代表的な銘柄であり、リスクも高いとされますが、無くなることは考えられない事業ですから超長期で保有して、それこそ遠洋航海のようにときには嵐にも遭いながらゆっくりと成長してくれることを期待しています。

それと、私が日本郵船という会社が魅力的だと思ったもうひとつの理由が、その歴史です。日本郵船の前身は、三菱財閥の源流会社である郵便汽船三菱会社と、その覇権を阻止しようとした反三菱連合によって設立された共同運輸会社です。両社の激烈な競争と政府仲裁での合併による日本郵船の誕生は、近代日本産業史の名場面です。そして設立以来、欧米企業によって独占されていた世界中の航路に割って入り、日本の海運業の隆盛を築きました。戦時中は多くの船舶が政府に徴用され、国民とともに太平洋戦争を戦うことになります。つまり日本郵船の歴史は、そのまま日本の歴史です。設立から今日まで、つねに“日本代表”として世界と戦ってきた。こういう会社は徹底的に応援したい。

さら日本郵船の歴史をさかのぼると、郵便汽船三菱会社の前身として坂本龍馬の海援隊が登場します。世界の海を繋ぐという龍馬の夢が、日本郵船という会社には受け継がれているような気がします。そういえば、日本郵船のファンネルマーク(船舶の煙突に描かれる運航会社を示す標識)は、白地に赤の2本線の「二引」です。これは郵便汽船三菱会社と共同運輸会社が対等合併であることを象徴すると公式には発表されていますが、海援隊の隊旗「二曳」と意匠がまったく同じ。偶然とは思えません。きっとマークを決めるときに、誰かがこっそりと龍馬の夢の象徴を受け継がせることを考えたのだと勝手に想像しています。

よく「株式投資は銘柄に惚れてはいけない」と言われますが、私はそういった発想は、売買を前提とした浅い考えだと思っています。個別株を所有するということは、その企業を直接的に所有することです。自分の所有物なら愛着を持つべきでしょう。愛着を持つから“永久保有”ができるともいえます。そして、個別企業の株を持つことによって、その企業の歴史にも参加することができる。今回の場合なら、坂本龍馬の夢に参加できる。こういったこともまた、個別株投資の楽しみなのです。

(注意:この記事は特定の銘柄を推奨するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。)

関連コンテンツ