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2015年6月22日
“自分だけ生き残ろう”では長期投資も成功しない!―なぜ資産形成への啓蒙活動が必要なのか
先日、草食投資隊セミナーでの懇親会でレオス・キャピタルワークスの藤野英人CIOといろいろとお話をさせてもらったのですが、とくに印象に残っているのが、将来に備えた資産形成は“自分だけ生き残ろう”という発想では成功しない可能性があるという点で意見が一致したことです。だから、日本人みんなが生き残るために自助努力をする必要があるし、そのためには資産形成に対する啓蒙活動がとても大切になるのです。
以前にもブログで書きましたが、ここにきて政府が確定拠出年金制度の拡大やNISAの創設など国民の資産形成を後押しする制度改革を進めている背景には、将来的に公的年金などを縮小させる意向が示唆されている可能性があります(【関連記事】なぜ投資と資産形成が必要なのか‐国からの隠れたメッセージを読み解く)。どの国でも社会保障は、公助・共助・自助の組み合わせで成り立っていますが、公助を縮小せざるを得ない以上は、政府としては自助を後押しするしかないわけです。この点に関しては、藤野さんも同様の見方をしていました。
そこで敏感な人はすでに自助努力としていまのうちから貯蓄や投資など資産形成の励んでいるわけですが、このときに注意しなければならないのは、“自分だけ生き残ろう”という考えでは長期投資も成功しないということです。なぜなら国家は構成員たる国民を見捨てられないし、そもそも見捨てるべきではないから。仮に社会保障制度が縮小し、結果として困窮する国民が大多数という状態になればどうなるか。民主国家は国民の多数決によって政策が決定されますから、困窮者が多数になれば彼らのために再分配政策が強化されるはずです。つまり、若いうちからコツコツと貯蓄・投資してきた人から資産を徴収し、困窮した人の生活を支えるようになる。
アリとキリギリスの話を思いだすべきです。イソップ童話のオリジナル版ではキリギリスは餓死してしまいますが、日本で流通しているバージョンは最後にアリがキリギリスを助ける。これは象徴的であり、日本に限らず現代社会ではキリギリスを餓死させるような政治判断はありえません。なにより、アリよりもキリギリスの数が多ければ民主的にアリがキリギリスを助けるように決定されるでしょう。だから、アリはキリギリスをバカにしていてはいけない。キリギリスもきちんと食料を備蓄できるようにアドバイスしてあげないといけないのです。
草食投資隊に限らず、良心的に長期投資を推奨している人たちはこうした原理をよくわかっているのでしょう。だからボランティア的に啓蒙活動を続けている。単に自分のファンドを売りたいだけではないのです。というよりも、長期投資が国民の多数に普及しないと、自分たちが運用・販売しているファンドも含めて長期投資自体が最終的に成功しない可能性があるのです。
投資を人に薦めるのは非常に難しいことです。なぜなら、投資とはあくまで自己責任の原則が貫徹される世界だから。だからこそ、すでに長期投資を実践している人は自分たちの行動をいろいろな人に見せて、関心をもってもらうしかないともいえます。その意味では、投資ブロガーの果たした役割も大きい。そして、身近なところでも自分が実践している長期投資について話すことが必要なのかもしれません。“自分だけ生き残ろう”とするのではなく、“みんなで生き残ろう”という発想で仲間作りをすることが大切なのです(「日本を捨てるから関係ない」という人もいますが、そういう人はすでに“仲間”ではないので、ご自由に好きなところに移住すればいいでしょう。そういう発想の人間を受け入れる国があるのかはわかりませんが)。