2015年5月19日

国債価格下落が心配な人は必読-長期保有すればリスクも低減できる

世界的な金融緩和によって現在、各国の国債は歴史的低金利となっています。つまり、国債価格は空前の高値に。一部には国債バブルという言葉さえ囁かれています。さすがにこれだけ金利が低下(国債価格が高騰)すれば、どう考えても今後は金利上昇(国債価格下落)リスクが高まっていると考えがち。そこでインデックス投資家の中にも国債など債券への投資を躊躇する傾向が一部にあります。しかし、債券投資というのは株式投資とはまったく別のメカニズムがありますから、じつは長期保有していればある程度は金利上昇(債券価格下落)リスクを低減できるものです。そのあたりの仕組みをアムンディ・ジャパンの有江慎一郎債券運用部長が見事に説明してくれるコラムが日経マネーDIGITALに掲載されました。

金利上昇懸念とかまびすしいですが……

今後の金利上昇(債券価格下落)が心配な人は、必読のコラムです。

有江氏も指摘していますが、債券と株式の最大の違いは、債券は発行体が破綻しない限り定められた日に利息が支払われ、満期償還で額面価格で元本が返ってくることです。つまり、満期償還まで保有すれば、購入時に約束した利回りを確保できる。かりに債券価格が下落しても、満期日が近づくにつれて債券の市場価格は額面価格に近づいていきますから、最終的には債券価格は額面価格に収斂します。ですから、満期まで保有するなら、額面以上の価格(マイナス金利)で購入しない限り期中の価格変動はあまり気にする必要はないわけです。これは実際に生債券を購入し、満期まで保有したことのある人なら、経験的に分かるでしょう。

では、満期まで債券を保有しない(途中売却がある)債券ファンドの場合はどうなるか。有江氏の説明は、このあたりが極めて面白い。細かい説明は実際に有江氏のコラムを読んでもらうとして、ポイントは国債インデックスファンドに投資した場合でも、長期で投資すれば(発行体が破綻しない限り)リターンがプラスに収斂する可能性が飛躍的に高まるということ。なぜかというと、債券価格が下落しているときは金利が上昇していますから、その時点で売却や償還によって得た資金を再投資したリターンが大きくなる。長期で保有すると、下落していた債券価格も満期日が近づくにつれて上昇しますから、両者を合わせたリターンが全体に効いてくるわけです。このあたりのメカニズムが分かると債券投資がなぜ有効なのかということが理解できるでしょう。

だから有江氏は次のような重要なポイントを指摘します。
この事実こそが投資資産のポートフォリオにおいて債券が求められている役割なのです。株式市場が100%の確率で上昇すると予測している方は、債券に投資する必要はありません。迷わず株式100%のポートフォリオを構築すべきです。しかし、数パーセントの確率であっても株式市場が下落する可能性があり、資産保全のためにいくらかでも債券を保有するのであれば、購入時の債券利回りを確保することで当初の目的を十分に果たすことができます。そして、そのためには、期中の価格の変化に目を奪われることなく債券ファンドを数年間持ち続けていれば良いのです。

もちろん、債券投資が絶対に安全ということではありません(そもそも投資に“絶対”はない)。また、現在は非伝統的金融政策が各国で実施されており、マイナス金利に代表されるような特異な現象も起こっていますから、なかなか物事は教科書通りにはいかなでしょう。しかし、少なくとも債券投資の大原則を押さえておけば、過度に債券価格下落を恐れる必要はない。あくまで“購入時の債券利回りを確保することで当初の目的を十分に果たす”ことが債券投資の役割だと割り切ればいいのです。そして、やはりここでも長期投資がリスク低減の大きなカギを握っていることは重要です。

また、あらゆる債券投資でこういった考え方ができるわけではりません。コラムの最後で有江氏は、またもや重大なポイントを指摘してくれています。
ただし、それは国債を中心とした信用力の高い債券に投資しているファンドである場合に限ります。ハイイールド債券や新興市場債券を多く組み入れて、積極的に信用リスクを取り入れている債券ファンドは、持ち続けていれば大丈夫とは言えないことが起こり得るからです。

分散投資における債券の役割というものをよく理解していれば、ハイイールド債(投資不適格債)や、単独の新興国債券などに集中投資することの危険性がよく理解できるでしょう。その面でも今回の有江氏のコラムは個人投資家にとって極めて有益なコラムだったと断言できます。

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